表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/48

白昼夢

嫌だねぇ、本当に。疲れからくるストレスならいいけど、友人からの電話先でストレスというか腹立たしいことも最近多いなぁ。

特に下ネタばかりの上司と、同様の目でしか見れなくなってしまったような気がしますので、友人関係は疑うばかりではなくてその人のことをまず信じてあげましょう。べつに無理して付き合おうの苦痛なら距離を置いたり、傷つけているのはその人が尊重しないで心の居場所を傷つけているからですよ。

我慢しても、自信失くしますしかえって距離が遠くなると余計にそんな事象があると思います。

本当の友人って認め合ってからこそ生まれてくると信じてます。

「ここは何処だろう?」

 何故だろう? 

すごく、見慣れた光景が広がって自分の室内であるということ。

いや、さきほどまで施設の廊下であったことには間違いないのだが、どうして家にいるのだろうが涼しげな景色が広がり真っ青な空の温かみを浮かべるようにユーリが何故か笑っていた。

吊られて俺も笑う。まるで何事も無かったかのように、ただ彼女の笑いが屈託もなく何よりもその笑顔に魅入ってしまうのではないかという錯覚さえ暗示してしまうほど、これが現実であって欲しいと誰もが願う。

その場所が、自分の家であることを洞察したのは彼女がいつも決まって座る椅子に考察している姿にお互いを見合うように見つめて笑いあうからだ。

リビングからの吹き抜けや2階の小窓からはキッチンやダイニングを一望できる。

 木目調のダイニングテーブルがシックな色立ちも、天然木の無垢材の色がより団欒としていた気持ちを写し描くよう。

結局は一番落ち着ける場所が、その場所であるということだから夢であるということを損なうように、温もりと大切な何かを培わせてくれる。

柔らかい光景が広がり、俺に安堵という精神的重圧から開放されたようにすっきりと。

病院と同じ白色だが、日光に照らされることによって淡い橙色に染まっていて窓枠から入る優しい風が体を包むように、温かいと感じて俺はキッチンへと向かい水と炭酸水を取り出して彼女に差し出した。

 まるで甦ったように、何事もない日常のような会話の一部であることには違いない。

酷く夢心地にFollow meが寂しくも、繰り返される終局という心境を移し取るように静かに流れていた。

「ハルさん」

「えっ? ユーリ?」

「ハルさんは、お姉さんが欲しいですか? 妹が欲しいですか?」

「……突然だからな。わからない」

 はぐらかす俺は、どうやら自己満足にも彼女を苛める。

「酷いです。質問にはきちんと答えるべきです」

 答えてしまったら、途切れてしまう。

「じゃあ、私はハルさんのお姉さんになりたいです」

「また随分と安直に考えたな。ユーリ」

お姉さんになる、というのは実に素直だが実際お姉さんというのは何をしていいのか分からないし、そうなったら俺が弟になるのに、笑顔なユーリの素顔を見ていれば安直に感じた気持ちを口にできなかった。

「くすくす。やっぱり、おかしいかもしれません」

「お姉さんか。俺も一人っ子だからお姉さんというのはあまりよく知らないけど、きっと今のユーリでもそうなりたいと思うだけでも十分だと思う」

乾いた髪、オイルと雨と入り交じって彼女の髪が痛い程傷んでいた。片腕はない。勿論、失った片腕はまた再構成されていないため痛々しい。

「ハルさんの家族について私はハルさんの妹なのでしょうか? それとも親戚なのでしょうか? ですが、血も繋がっていませんし。機械ですし」

「機械だったら家族になれない理由なんてないよ。それと髪の洗浄は終わったから」

「えへへ、ありがとうございます。自分で何とかしますからハルさんはご自宅に帰っても構わないですよ」

 破損した片腕は修復するには時間がかかる。

「まだ一緒に居たい。だって“家族”だろう」

「そうですね。この際には私はお姉さんになります、だってその方がハルさんにお礼すらできてないですから」

家族としての寄り添うことが正しいのか、それともユーリの言葉を素直に聞いた方がいいのだろうか?

「ユーリ、ごめん。俺のせいで」

「ハルさん、バイタルが低下していますし、良くないデフレスパイラルの感情です。それに機能が死んでいる訳ではないですから、ほらっ」

 そう言って彼女が失くした片腕の人工筋肉であるマッスルケーブルから筋組織の一部を動かす。

上腕二頭筋に相当する器官は、まるで人間のようにぴくり。

「痛みの感情も、抑制剤を投与されましたから。ご心配には及びません♪」

 えっへんと誇れる胸で張っていたユーリだが、隣にいたスタッフからはお咎めを食らうことになるのは当然のことだった。

「壊れたパーツを再構成するには2日かかる。それまでの面倒は管理者であるハルさんが担当して頂けるのでもーまんたいです」

「元々私には予備パーツといいますか、量産された姉妹のパーツを頂きますので。それに片腕がないなんて滅多に見られない体験ですから」

「経験って、俺はそんな経験したくない。今だって」

「ハルさん」

 俺の唇へとユーリの指先が触れそのあとの口にしてはいけないのだと次の言葉が止まり、ふと彼女が話題を転換して明るく振舞っていた。

「アイスまだ食べていませんよ。ハルさんも一緒に食べてください」

 そうですよと、口を尖らせて微笑した笑みと同様にユーリが失くした片腕を摩る。

失くした痛みと引き換えたものに対しての代償。

「俺も?」

「そうですよ、お姉さん命令です。まだプールも一緒に行っていませんから」

「ユーリはロボットで水なんか大敵じゃないのか?」

「mlrーRDX形式は防水加工処理もきちんとしていますから水については平気です」

 自慢げにユーリだがふと考えてみても、水に抵抗なかったのもその為だとは思うが、

「行ってもいいけど、ユーリ泳げるの?」

「は、ハルさんに教えてもらえばなんとなるはずです!?」

 そう、強いて言うならば浮き輪付きで泳ぎなんて知らないのだから。

「で、でもですよ、ハルさん。人間が泳ぎを開発してからまだ何万年も経っていないのですから私だって」

「わかった。教え方は下手かもしれないけど俺で良ければ教える」

「じゃあ、水着の着用方法も教えてくださいね」

「……それは、柚樹に聞いた方がいいと思う。俺も知らない」

 ええっと、思わずとりはずしたみたくユーリが面食らう。

まさか、水着の着方も教えないといけないのか。俺はなどとツッコミと同時に愕然とした持ち様でユーリを見た。

「ゆ、柚樹さん。はい、初めて同性の友達ですから、きっと教えて頂けると思います」

「そうだね、その前に水着も選ばないと」

「ハルさんの水着は?」

 至近して、その目先の瞳にはユーリが映る。

いつになく積極的で、それが面白くもユーリとしての何かに火をつけたようだ。

傍ら、傍聴していた自分がユーリに穏やかにも肩の力を抜いて柔和な温情であるかのように円熟した漫談が長々と続く。

「俺は、去年の水着があるから」

 すると、彼女は不機嫌な顔をぶつけるように俺に顔へと視線を向けた。

「お姉さん命令です。ハルさんも水着は私が選ばせてください。私の水着ハルさんが選んでください」

「ユーリ」

「今度はお互い様ですよ。いつも私ばかりがご迷惑をかけているばかりですから」

 少しばかりユーリとしての心境を写すようで寂しい。

それも、寂しいという感覚とはべつなのかもしれないが俺にとっても、

「いいだろう、家族だからさ。そういうのは当たり前だろう、俺は迷惑だって思ったこともない。光栄だよ、ユーリの選ぶ権利みたいのをもっているならさ」

 余計に、現実との接点なんていうものが薄れて感じ取ってしまう。

「嬉しいです。私」

「そうだな、夏なんて、まだ始まったばかりだろう」

 夏祭りへと楽しみである行事を一つ一つ並び挙げて、それを自分の希望ノートでもいうべきか普段愛用しているシステム手帳に書き込む。

「浴衣持っていないです」

「浴衣なら、柚樹が持っているよ」

 嬉しそうなユーリ横顔に、他愛もない会話がまるで曖昧にするかのように収集も着かないよう。

ユーリはその事に気がついているのだろうか?

いいや、初めから解っていたのかもしれないのに結局は知らぬフリをし続ける。

玩具の包装袋のように、一度紐解いてしまえば元に戻せないのでないかという不安。

「柚樹さんは、すごく可愛い人です」

「他人に素直になれない処は、ユーリと正反対かも」

 すると眼先まで近づいたユーリ。

鼻が擦れてまで縮めた距離と、彼女は憂慮するように当惑。

「ハルさんも人に素直になれない部分では柚樹さんと似ています。私から見てそうなのですから、きっと似たもの同士なのだと思います」

「似たもの同士だと思うのかな? 俺はどちらかと言えばユーリがそんなに人について感心があるのだと思わなかったよ」

「……ゴメンナサイ」

「どうして謝るの? ユーリ」

 だって所詮夢だからと彼女の口から漏れ、これが現実ではなくて俺の妄想上の夢でしかないしそれが解っていて、でもその時間が何よりも代え難くて仕方がなかった。

本音に近い声で俺はユーリに縋るしかなかったのに、結局夢なのだと本人が構築した白中夢の一部だと儚い幻の薄命に光がしこんだ。

それも彼女自体が不確な蜃気楼のように、その場所が一体うたかたであると彼女の体が希薄にも少しずつかすかに透明になってしまう。

 繊細だけど、まるで漂う夢幻として彼女は何処に行ってしまうのだろうか。

よる辺のない彼女の姿を見ていて、俺自身がしがらむように居て欲しいと願う分だけ裏切られてしまったかのよう。

「待ってくれ。行かないでくれ、お願いだから」

 だから手を伸ばそうと、必死に近づくのに近づけない。

触れることさえ、あまつさえ時間との連鎖の中彼女が眠る現実に向きあってしまえば、あの元気な姿を見せてくれないのだと思いたくなかった。

 俺にまだユーリのやりたいことだってしてやれていないのに、このまま消えてしまう幻が酷く俺自身を傷つける。

「お願い」

 ユーリが振り向いて、逃避した俺に鋭すぎる指摘と夢の中にいたユーリにさえ残酷な結果を突きつけた。

「ごめんなさい、ハルさん」

 なにより、謝罪の言葉が辛くてすり抜けるように、彼女が消えてしまうのではないだろうか?

もう二度と目覚めてくれないのではないだろうかと、一抹にもそれだけが不安と苛立ちの感情が複雑にも混じり、苛立ちの思念を何処に差し出せばよかったのだろうかと愚考した。

「ユーリ」

 そうか、俺はもしかしたら出会わなかったら彼女をこんな目にあわせなかったのだと身勝手な都合ばかりが留意。

俺自身がぐるぐると頭の中を空回りするようにその差し出した腕でさえ引っ込めようと、それが真実で見据えなきゃいけない自分が、まだ子供なのだと読み替える。

だけど、

「駄目だ。俺には必要なんだよ、お前が」

「……」

「答えてくれ、ユーリっ!!! 俺は、お前に家族として側にいて欲しい願いは本当に正しかったのか?」

「……」

 光が世界を包み込んで何もかも真っ白の世界へと変異して夢の終り、彼女は結局それさえも応えてくれないのは結果的に自分の夢にでさえ足をすくわれる。

自分には、独りでいる孤独を知っているから紛らわそうとしたのか?

 違う、家族で居たいと自分が願った。彼女の笑顔が見たいから。

ヒューマノイドロボットに興味だってあるけど、そんなのはちっぽけでどうでもいい。

とにかくユーリを守ると約束したからだと、夢ですら築いた幻想すら拒否されてしまうのにそれを俺はまだ決心できなかっただけ。

目覚めた時には壁に自分が寝転んで握ろうとした手は蜃気楼のように消えて焦るような気持ちと相違して、現実であることを理解した俺は涙腺さえ脆くて泣き出してしまいそうになるのを堪える。

疎まれるように俺が目覚めて視界をユーリに向けて、こうして1週間と1日がすぎてとしていた。


まあ、冗談を冗談で受け取らない堅物な人を身近に目にするとは思わなかったですが、ナンセンスだとつくづく思います。

第一、自分も強情になって非を認める事をしないこともそうですが、あそこまでまるで法廷しているわけでもないのに、自分は正しいのだそれを証明し、立証することで教えを説き伏せる。それでいて友人関係が保てるかなんておもってもいないですよ。

 仕事でもないのに、ぼやきとして呟きたくなるような後書きなんて書きたくもないのですが、この辺は悪しからず。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ