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硝子細工

今回は、飼猫を探すユーリということで早速ですが、でも猫大好きな人には申し訳ない、すみません。好きなのですが野良猫を眺める程度くらいで。

 昼休みになりハルさんに声をかけようとする。だけど、私がしてしまったことが声をかけようとした自分ブレーキをかける。それは、まるで今までになかった罪悪感のような気持ちに囚われて小さく折り畳まれた。

「ハル、さん?」

 きっと怒っていると、私は怖くて彼の言葉を聞けなかった。こんな態度をとってしまったら、きっと嫌われてしまうのに。黒板に書かれていた文字が既に消されて思い出せない。まどろみのように集積した回路は思惑とはべつに謝罪という言葉を必死で考えていた。クラスメイトは、お昼だと教室を出て、食堂へと。そしてお弁当と出して仲間と囲んで食事をするが、私はまだ黒板を遠く眺めていた。

クサナギさんは、そんな私を気にかけてくれたのだろうか。傍へと近づいて持っていたサンドウィッチを机に無造作に置き袋を開けて口に放り込む。

「どうしたの?ぼおーとしているから。それに、ソックス穿いていないのにまさか下駄履きはこうとしていない?」

「ややっ、忘れていましたっ!?」

 靴下を履こうとしたけど、何故だろうか指先が停まる。足先から収縮した布を足に覆うのに躊躇う。

クサナギさんはどうやら苦笑をしていた。

「もう。なんだか知らないけど、きっと謝れば元通りになると思う」

「あ、ありがとうございます。クサナギさん」

 頭を下げて、返しした丸編みから足先を入れた。気持ちが吹っ切れたわけでもないけど、すこし軽くなったような気がして、緩衝材としての役目が立っているのだろう。

「まあ、ユーリの笑顔とか。私だって一応クラスメイトだし、それにハルにはツケくらいかえさないと」

「ツケ? ですか」

「ああ、ワタシは問題児だったからね。その時力になってくれたのがハルなの」

 そんな顔には、クサナギさんなりの隠れた表情でも窺えた。

「わたし、謝ってきます」

ハルさんに出会えばきっと、何事もなく接してくれるはず。また普段のように、何事もなくて笑ってくれると思っていた。だけど、声が喉から先まで出てこない。何故?自分がこんなに胸やけしたように、苦しくて。

「あ、あのハルさん」

「ハル、さっき先生呼んでいたぞ」

「あ、ああ」

 クラスメイトの一人である男子が呼ばれていたぞと、ハルさんの肩を叩いていた。

「ユーリ?」

「あ、あの。今日は天気いいですね?」

「昼から雨が降るみたいだし、電車の液晶パネルで予報していただろう」

「あ、あの、……その」

 一度も振り返らず、背中を向けていた彼の姿はまだ謝罪の言葉を言えていない自分の結末だ。

きっと絶望したのだ。自分がこれほどまで機械だということを自分が一番知っているから。それに、友達など在り得なかった。

「ユーリ?」

「あ、あの、今日は秋日和ですからきっと紅葉だって」

「ああ」

「それに、雨が降ってもまた風情ですよ」

 関係のない言葉ばかり、出任せで本当は謝罪しないといけないといけないのに。

「そうだな、ごめん。世間話なら後で聞くよ、とにかく教諭に呼び出しがあるから

「あ……はい」

 やっぱり言えなかった。笑っていたのに言葉が思いつかない。

あの、それでと。処理していた感情がまるで積年したように

「あの、ハルさん」

「なに? 重要じゃないならいつでも聞けるだろう?」

「いっ、いってらっしゃい」

 消沈した、それに誤魔化すように嘘の笑顔が一番心に響いた。

ハルさんはそのまま振り返ることはしなかった。

どうして、きゅんと胸が苦しいのだろう。こんなに苦しい事なんてなかったのに。

「私は、きっとダメな子ですね」

 きっと、機械だということが身にしみてわかった気がしてならない。降り出した雨、傘などもってもいなかった。


 結局、その後は逃げるように放課後になり地面をみつめる。雨粒が水溜りを形成し、アスパルトからの水紋は幾多にも作り曇り空が更に気温を下げていた。

「水蒸気から凝結した水滴ですね。気温0度になってないから水滴になるだけみたいですし」

 でも、冷たい。傘がないから直接的に肌に触れて、濡れた。

軒から落ちた雨水は雨垂れによって流れ下へと打ち当たる。町並みには変化がない。誰もが傘をさして、雨粒を防ぐ。冷たい風が身体に吹きかけ、音を立てて静かに弱い雨が続いていた。

 狐の嫁入り。でも、秋雨という方が正しい。

歩いた足には、濡れたからだを気にせず雨を楽しめた。だけど、ふと喉に痰が詰まるような気持ちが巡廻する。

「どうすればいいのでしょうか?」

 足を止めて空を見上げていた。そうすれば、少しは気が晴れるとでも思ったのだろうか。

「ハルさん」

 また、元通りになれるのかな?

もう、ロボットとか友達とかじゃなくていい。私はハルさんの傍に居られるならば、どうでもよかった。

 商店街を抜けて、公園を近付いた時に横切ったのは黒猫だった。それも見覚えがある。

まるで見透かしたような冷たい瞳がまるでこちらを留まっていた。それなのに、くりくりとした可愛い黒猫に頭を撫でると、か細い声で鳴いていた。

 体型は痩せていたが、軽やかな動きはどうやら逃げる素振りもなかった。

「ネコさんです」

 それは、雨に濡れていたにもかかわらず人懐こいのかこちらへとやってきて身体を寄せてごろごろと喉を鳴らしている。それに、動物には初めて触れるが決して悪いわけではない。

警戒していないし、そこで吸いつけた身体をまるで懐きながらも急に傍を離れて歩き始める。

「あ、」

 湿らせた毛を振るって、猫の後ろを付いていくのだが、なんというか次の行動が素早く移れるようにと毛並みも嗅覚も聞かない場所でここまで迷い猫なのに、後ろに人が歩いていても平気なのだろう。

黒猫というのだから、人間に恐怖心をもたないということは脅威なのだ。もしかしたら保健所によって処分だって有っただろう。

「ネコさん、どこにいくのですか?」

 場所だって判らない、臆病という訳でも無いけど、まるでついてきてくれと先に行った猫は私の後からついてくるのを見届けて再び歩き始める。猫にしては普段聞き慣れていないからか不可思議なモノを見ていると、茶目を見せるように水溜りに足を入れて更に濡れたからだを仕方なさそうに鳴いている。

「くすくす」

 まったく、こうして簡単に見つかるなんて思ってもいなかった。あとは、飼い主の連絡先へと電話をすればいい。

「でも、電話どうしよう」

 ハルさんの携帯を借りれば良かったが、生憎一人。帰宅途中とはいえ、猫を追いかけることで帰宅道から逸れている。まるで距離感があると、そう思えばすぐさま無邪気な眼差しでこちらへと近寄る。

「ネコさん」

 だから、捉えどころもない盲爆な魅力を後ろから感じ取りながらも抱きしめたくなる。まるで、ガラス細工に似た瞳を表情と掛け合わせてみせてくれた。


次は本降りになりそうですね。

とりあえず、雨宿りというか、次回には少しばかり急展開が待っているかも。

そんな、小さな出来事を走馬灯のように流れて行くとしたら一体どんなこといが待っているでしょうか?

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