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帰り道

それも冒頭から突然の出来事ばかり。

ようやくの日常生活との並行とユーリがいる事に非現実性のある日常を垣間見る主人公のお話。

 それなのに、心のどこかにはやすらいでいた。

他の従業員にこのことが発覚されないためにも、段ボールを畳み自分のロッカーへと押し込む。

すぐさまバイトを切り上げて、家へといそいそとする俺。

ユーリはぽつんとなんだか周りの物が興味からおびえた様子でじっとしていた。

「自転車置き場に行くけど素足で大丈夫?」

「はい。歩行には支障ありません」

 まあ、手短にあったサンダルなんかで代用したわけだけど。

自転車を押して帰宅するなんて、バイトを始めた頃にタイヤをパンクさせた以来だった。

肩を並べて、ぶらぶらとする二人。

7時半にでもなれば、夕日が落ちて暗闇だけが辺りを広がる。

本当はもっと大衆に晒しても平気な服があればいいのだけど、今のユーリにはそれは叶えることがない。

「ごめん、ユーリ。寒くない?」

 心配の意味で、ユーリを呼びとめた。

「はい、すこし下……すーすーします」

 そりゃ、下穿いてないですもの。

うろたえる俺は、きっと一瞬でも彼女の秘所をチラリとか瞥見してしまったからだ。

一つだけ、陳述するならばうちはリサイクルショップでも電化製品専門。

 下着なんていうものは取り扱ってもいないわけだし。まさか女性用下着を普段所持しているわけでもない。

購入できたところで、今の時刻から精々大手のスーパーくらい。

―――でも、ユーリをこの格好のまま歩かせるのは、人として色々間違えている。

 いくらロボットとはいえ、街中でこうして歩いていること自体ある意味補導されても可笑しくなかったからだ。

「えっと、ユーリ」

「はっ、はい。ハルさん」

 強張った表情と、すこしばかり体を震わせて涼感だがやはり無理があるだろう。

スーパーに寄り道して下着くらい買ってきての方がいい。

だって、これでは直視できていない自分が物凄く気恥ずかしいわけだから。

 スーパーと言っても都内大手の食品スーパーには何回も階層があり、デパートと言っても過言ではない。

自転車を人出入りが極端に少ない南口へと止めて、ユーリの手を握り締めていそいそと女性下着コーナーまで移動した。

 南口での配慮は、最後までお客が出るまで締めないというのが利点ですこしやり場のない気持ちとユーリの格好をみて顔から火が出そうだった。

――――下着、買わないと。

 それだけでも、ドキドキする。

それは顰蹙(ひんしゅく)を買ってもここは恥じ入ることしかできそうもない。

近くの階段を上がり、すぐ目の前には紳士服からレディース服まで取りそろえている階へと忍ぶようにはい上がった。

2階の品ぞろえの豊富さと、知識のない自分にとっても都合がいい。

第一女性用のコーナーに閉店間際に買い付ける男女って店員から明らかに変な目で見られそう。

と、束の間。

「いらっしゃいませ」

 一人の店員から声をかけられてしまった。

接客態度が良い店員なのか、悪い方よりはいい方がなにかと利用する際には嬉しいのだが。

その店員は江戸紫色と極めて地毛にしては珍しい色の髪の毛をしていた。

二人ともビックリしていたものの場所的にも口に出しづらい、下着コーナー手前。

やってきた店員は、まるで気にしていないおおらかにも程がある。

まるで、明るい夏場の向日葵のような笑顔で迎えていた。

 社交的な店員に対して、ユーリはどうやらすこし打ち解けたみたいで掴んでいた腕を離していた。

「すみません、この子に合いそうな服と……し、下着を探していたのですが」

 か細くする俺に、店員は動じることなく

「あ、はい。えっと彼氏さんですか?」

 ユーリのぶかぶかの上着だけで下を履いていない状態を全く気にしていない。

元気で素直すぎる店員ははきはきと、俺に対しても冷ややかな視線などまったくなくて。

「ご、ごめんなさい。えっと下着ならサイズもありますし、えっとサイズわかります?」

 するとふるふるとユーリから首を振った。

「なら寸法ならこちらで測りましょうか?」

「あ、はい。お願いします」

 店員がユーリを試着室へと案内する姿を確認してとりあえず、言われるがままではあったが下着に関しては任せても大丈夫みたい。

やっと胸を撫で下ろす。

そりゃ、一応青年でありますからドキドキしますよ。

 そういえば、この子が目覚めてからずっと自分なりのポジションの変化に気が滅入りそうだ。

その間、すこし距離を置いて一応に合いそうな服を見つけようとする。

店内の終了を知らせるアナウンス。

 お客たちは地下の食品売り場へと行きつつも、まだ数人が欲しい服などを観閲していた。

そっちからは、確かに店員とはべつに視線を感じたが、ここは気にしない。

 サイズを計測して、何分か時間が経ってから出てきた店員がメモ用紙を持ち歩いていた。

「すみません、この子に似合いそうな下着一応用意しておきました。服のサイズも測りましたからこちらでお決めになってください」

 合意もあるわけだし、ユーリ自身に見定めてもらうのが一番なんだけど。

さすがに、下着姿で出てこられても困るわけだから彼女に似合いそうな服を探してみることにした。

店員の後をついてきて、レディース服の一群から手に取る。

「これ、すみませんがお願いします」

「はい♪ 畏まりました」

 あとは、自分にできなくてすこし躊躇う。

店員の後ろ姿と試着室に待っているユーリの姿。

おれは、出てくるまでの間をただひたすら待つことにした。



 本当に良かったのだろうか?

自分の心にはどうも、ユーリの事をどうすればいいか迷う。


だって、勝手に起動させてしまったわけだし。

 店長に報告しないといけないこと。

それに、ユーリのことについてもっと考えてあげないと。

「ハルさん」

 服を着てそこには少女の姿は、俺のバイト用の服を片手に抱えて一目散に向かってきた。

ちょこんと、まるで子供のように飛びついて、にっこりと笑う。

「服……きちんと着られた」

 俺は父親にでもなった気分だ。

「よかった。さすが恋人さんです」

「本当にありがとうございました。何から何まで」

 店員に尽かさず、頭を下げる。

「いえ、私も大切な人に教えられたから。困っている人がいたら率先してその人のこと助けてあげようって」

 長い髪を縛って、店員は商品タグを腕にかけてユーリのように笑うのだ。

「名前、教えていただけませんか?」

「はい。私は()無月(なづき) 綾乃(あやの)です」

 確かに、女性店員はそういっていた。

もしかしたら、その店員にももっとべつの物語があるのかもしれない。

素敵な誰かに、自分を大切にできるそんな気がした。




またしても、こんな感じで進んでおります。

どちらかというと、アレですよ。ハルには変な趣味は持ってませんよ(たぶん

 次回にはまたしても急ぎの展開があるかもしれません。

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