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嘘と真実

野球オマケは流石にオマケ話でしたね。

量的に考えてみても4、5話というので正解だったかもしれません。

とくに、ユーリが野球を実際プレーするシーンがないですねキャッチボール止まりで申し訳ないです。

「ユーリっ!!」

右脚を前ステップして送球し左脚を目標へ。

軸足が目標に直角になっていることや、前足からまっすぐに踏まれた地面。

 身体の前へ腕を振る。

気が付けば、ユーリも見まねで投球することによってコントロールもついてきた。

「ていっ!!」

可愛らしい投球フォームだけど。

ボールが腕に収まり、右腕に持ち替えた。

「そうね、ユーリは呑み込みが早い。さっきまでひょろひょろだったのに」

「むぅ、ユズキさんは運動できる上手です」

 スパンッと乾いた音がグローブへの衝撃を浸透させて、震える。

だけど、着弾したボールには既に狂いはない。

「でもでも、呑み込みが早くてもまだまだだよっ」

ちょっぴり本気で投げてみると即座にユーリが捕れず落としてしまう。

 いずれかユーリはそれでも自分から投げることにおける自念するべきこともであるのだろうか?

結んだリボンが解けようが、身体から地面に激突しようが立ち上がる。

「ハルさんっ!!!」

 完璧にすればするほど、彼女においてみれば計算から導かれる投球ほど無意味だということを思い知らされてしまった。

キャッチボール一つに対しても……。



理系と呼ばれる男の部屋なんていうものはなまじ退屈でしかたがない。

特に講師と呼ばれる教務を嘘でも、執務することになるとかえってそれが本当に職業のことを忘れてしまうのではないかと束の間に、クロアがやってきた。

それも、ペットボトルの有名メーカーとはいえ伊右左衛門というのは武士としてもどうだろうか。

「先生、お茶どうぞ」

 教室が冷房空間快適になるまでは時間がかかる。

まして残暑ともいえる季節の中にはこんなににも暑いということは理由があるだろう。

「そうだな。クロエアくん」

「………クロア」

 クロアが強調する。

「む、」

「クロア」

 ずいずいと顔をクロアに近づけられた。

ここ数日影響というのは、好適に捉えてみるがなんといっても普段から表情を出すことのないクロアがこうして自分の名前を呼んで欲しいとせがんできた。

「たくっ―――クロア、でいいんだな」

 すると屈託もない笑顔で笑う。

まったく、分かり易くなったのはアイツと同じクラスに編入してしまったせいだろうか?

「はい、秋月先生」

「いや、この場合はクロウでいい。折角二人っきりなんだ、もう少し肩苦しいのもなしにしよう」

 しかし、変わった様子がない。

一応の予備策に応じた工作もここでは無意味だったようだ。

妨害もないことが一番の手立てだ。

 教師という名目はあまり自分には似合っていないのは承知のうえ。慣れない不得意なことはクロアだって同じだろう。

「野球することになりました」

「野球か……俺はやったことがないんだよな」

「意外。貴方だから経験あると思った」

 あまり金持ちのボンボンでもなかったが、野球という競技だけは参加していなかった。

ボールとの面識よりも剣道や柔道の方が多く、また一家はそんな体育でさえあまり上面でしか考えていなかった。

所詮、両家の歌舞伎を継がせるだけで手いっぱいだったわけだ。

 ところが、息子は出来の悪い

父親に褒められたことなど一回もない馬鹿息子だ。

「侵害ね。私は、クロウの運動神経がいいから不粋していたみたい」

「ボール持ってこい。あとでピッチングの練習してやる」

「………嘘つき。しっているくせに」

 クロアが疑い様な眼差しでこちらをみる。

だが、本当になにからなにまで管理されていた自分にはボールを手渡されて馴染むまで時間を有するようだ。

「運動系のプログラムくらいメインでインストールしていれば問題ないだろう」

「ユーリが、それだと違反するからって自分から経験だけで継承誤差を補正しようとしているわけ。べつに拡張プログラムを最新にするだけで手間掛からないと思うのに」

「そうか。お前は?」

 麦茶を冷蔵庫から引っ張り出しそのまま口に含む。

「いやよ、フェアでないわ」

 疑似体験の一種でも、彼女はアンフェアを好まないようで、ここまで熱心になるクロアの姿に心打たれる。

飲みかけていた麦茶を、許可もせず勝手に飲み干すクロアに食器棚からコップを取り出して机に置いた。

「……しかたないな」

「ええ。特訓して」

「だから、俺は野球をしていないんだって」

「うそつき」



 本当に言わなくてよかったのだろうか?

運動系のプログラムを修正し、再度データをインストールすれば野球だって簡単にできる。

打つことは簡単でもあった。だけど、未経験のまま残り1週間もない私はもしかしたら役に立たない。

選手に選ばれてことを、このときばかりはすこし成りあがり舞い上がっていた気持ちが恥ずかしい。

「練習してきたハルさんに……申し訳ない……かも」

 ボールを壁に当てて、何度も投げる練習を一人でする。

ハルさんには、研究所にいるということを伝えてきてあるので心配はない。

跳ね返るボールをグローブで掴む。

 夕日も沈みかけ、月夜がまるで妖美な幻想をかもしだしていた。

バッテリーは、なんとか大丈夫。

一人でいることは、すこし寂しいかもしれないけどどうしてもハルさんに認められたくて何度も繰り返す。

これで、すこしでも上手になればいい。

 重力加速、物理的半径から割り出した法則から投げるボールの速さと何秒かけて戻ってくるかを脳でパラメーターかする。

物体本来、円運動を指して向心力の大きさを質力とし、万有引力の法則に当てはめて平均密度を割り出し、結論した平均密度を割り出し、環境下へと並行させてトライする。

 壁を向いにして、指示通りに何度も推考。

跳ね返る。

だけど……とれない。

「計算が間違っているのかな?」

 同じことの繰り返し、それでも諦観したくない。

擦り付けたように、腕が痺れるまで何度もやった。

「一人で練習しても、あまり正確なコントロールを身につけるのは難しいよ。ユーリ」

「ハル……さん?」

 嘘だと思った、こんなところにハルさんは来るはずがない。

ハルさんは家でくつろいでいるはず、私は研究所にいるとそう伝えたのに。

「秋月から、ユーリが学校でまだ練習しているからって連絡があったから。それに正直にいってくれればいいのに」

「だって」

 だけど、彼は転がっていたボールを手に取った。

夜の明かりに照らされて、

 月夜の晩に、一球・投げたボールは、大空を羽ばたいていた。



オマケが好評だったらその後も書くかもしれません。

ただし、実質まだ未定ですので、次の話を展開するのが先になるかと。

次の話はまた一転して、初めて主人公とユーリがすれ違いの出来事でも。

まあ、ロボットと人間というものは相反するものですから。

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