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Lost Memory

思い出とは、他人に見れば記憶の一部にも満たない。

だけど、それを自分が記憶することによって情景やその心境を黄泉がえさせてくれるのではないだろうか。

例え、黄昏るように記憶という存在自体が薄れていても、決して総てを忘れているというわけではないのだから。

やはり、予測とは的中してしまうほど感が冴えているほど誠に申し訳にくい状況を作り終えない。

画像からユーリの思惑が彼女たちの動向についてここまで察知できていれば、今後についてわかっていたつもりだった。だけど、彼女たちに嘘をつくことになる。

いや、それよりも彼女たちには“人間”として振る舞わないといけないからユーリのように簡単というわけではなかった。

 焦点のズレた会話。

だけど、意外にも人慣れしていた彼女たちには呆気ないほど。

「えっと、どうしてここにいるの?」

 と質問してもきちんと返してくれた。

「病院」

――――会話には不十分だが、情報として信頼できる。

だが、

「なんで病院に行く必要は?」

 肝心な目的がない。

というか、目的があるのに敢えて隠蔽する必要があると判断したからだろう。

「わからない。それに教える義理はないわ。感謝は一応しますが」

「お、お姉ちゃんっ」

 まあ、態度から感謝というのには程遠い。

だけど、密かにもユーリが感じ取るように俺のTシャツの裾を引っ張った。

「お見舞い? それとも診察?」

 だけど首を振る。

その手のものではないとするならば、残っている選択肢は少ない。

「お兄ちゃんはどうして坂を登るの?」

 もう一人の少女がもじもじと隠れながらもこちらに窺う。

それは、当然ながら面会だからと答えたが、彼女たちには面会という言葉が通じないらしい。

「途中まで一緒にいってやる。えっと、俺は八重乃春陽だ」

 自己紹介にも慣れた。最近この手のパターンが多いのは特に自分の予期から逸れているケースが多数だからだ。

「私は、カトレア……この子がアニリスよ」

 棘がありながらも、それなりに応えてはくれる。

そしてもう一人はまるで脅えていた女の子は人見知りでもあるのだろうか?

「私は、Mlr-RDX 1c ユーリア。ユーリって呼んでください」

「そ。じゃあユーリさんも病院に面会とやらに行くのですか?」

「ええ。面会というよりは、お見舞いです」

 お見舞いという言葉に際し返答はしてくれたようだ。

なんというか姉妹して、驚きの顔とかかなり酷似していることは双子なのだろうか?

それにしても……。

「面影が誰かに似ているんけど、気のせいか」

 体型はともかく、瓜二つの姉妹。

青…、いや青緑というのが正しい。髪は短くストレート。

そして、短髪だからか自称して姉の方は性格と対称だった。

「なによ。感謝したのに」

「お、お姉ちゃんってば。恩人さんに失礼です」

 その瞬間、妹によって遮断し言葉が濁る。それは先ほどまで怖がっていた様子ではなく。

姉はそれを聞いた途端しゅんとする。

「わ、わかったわよ。ごめんなさい」

 外見から見ても小学生という説が正しい。

だけど、肉体はセノファイバー式人工筋肉と、マイクロフィルターの肌に包まれていたガイノイドなのだ。

 その点は、ユーリが一番よく知っているはずだ。

会話からではない。その雰囲気、いや気配そのものが人間でないこと。

 だけど、ユーリは当り前のように隠していた。

見えてきた病院を指差して、そっと振り向く。

「ハルさん、この子の探し物一緒に手伝いましょう?」

「探し物?」

「はい。ですよね?」

「――――――はい、ユーリお姉ちゃん」

 探し物か。

「な、アニスッ!!」

 姉は色々ビックリしていたみたいだけど。

「いいよ。ユーリからのお願いだもの。手伝うよ」

 ガイノイドの探し物……か。

 病院の敷地内を跨いでみる。さすがに看護士をアイコンタクトで許可が下りてしまうのは最近母の影響だろう。

室内は病院というよりも娯楽施設のような内装。ライトから植木まで気配りした結果コンクリートと木の複合することによって安心感がある。

 外観は一転ガラス張り。

鼻をつくように、薬品の匂いが誘う。

 待合室には沢山の人が待っている。

そこには診察から重度の患者を請け負う看護士と、そして総合案内所。

施設からはエレベーターを使って母親の個別部屋へと行っている。そう、何故だろうか。

「随分見慣れているな……二人とも」

「――――」

 言葉がもつれる。

意味合いが取れて、姉妹は一体何を感じたのだろう?

「おかあさん……探しているの」

「お母さん?」

 力を込めて告げた。

「ねえ、想いは伝えようとする意志さえあれば伝わるよね?」

 なにを伝えたかったのだろう。この病院を見てカトレアはささやいた。

その言葉に、返す確証は持てなかった。

第一、自分には口を挟む資格があるはずがない。

 それは、彼女たちが人ではないことを知っているから。

――――誤魔化しの効かない……免罪符のよう。

 罪滅ぼしに作られたなんて口が裂けても言えなかった。

「きゃっ!!」

 看護士の一人が資料をばら撒き床一面に広がった紙の束が散らる。

無数の紙の束。

その光景の先には、はっきりと出来ない自分を叱るようにユーリが見つめて、

「ハルさん……」

「えっ、なんだよ……ユーリ」

「ハルさんはどうして、二人の面倒をみるのですか?」

「わからない。首を突っ込んでいい話だと思わない。だけど……ついお節介したくなるんだよ」

「やさしいですよね。ハルさんは」

姉妹が即座に紙を拾い息の合ったコンビネーション。というか、数秒後からあとから俺とユーリが紙を手にしていた。

一枚の紙。それは紛れもなく、死亡記載書だった。


ちょっとタンマ、詰まったときはそう逆立ちするといいでしょう(笑

それはさておき、確証であることは死亡宣告なんてなんだかお先についてはいろいろですな。

特に、姉妹については次回が最終になるとおもいます。

その後はお約束が待っておりますのでお楽しみに。

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