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帰り道

ユーリの過去の一部。

それは、僅か。だけど、その記憶は彼女の過去である証拠。

ならば、ハルにとってユーリにとっても時間の交差が変化される。

それは、人生の転換点。

 一体ハルさんにはどんな感謝をすればよかったのだろう。

そんな謝念の気持ちと、微かに残っていたゲンゾウさんの記憶が混乱していた。

 アリガトウ……だから、お礼を言わないといけない。

本当は、ゲンゾウさんはどんな気持ちだったのだろう?

 研究員のように、コンピューターで見知らぬ人に全てを任せる。

だけど、それがイヤで……きっと自分からそんなことをさせまいと、ハルさんのところに送ったのかもしれない。

 娘のように、大切にしてくれました。

きっと、ずっと……前からも。



1年前の出来事。

「陽電子接続管路クリア。ファクター2システムの解析に移ります」

 まるで、それが世界の法則のように毎日実験が続いていた。

心という言葉には微かな隙間。

重責した相対性理論をまるでパズルのように組み立てる。

研究員の驚きの声と、それだけ。

私の心は何処に置いていってしまったのだろう?

 感情があるのに。

ユーリアという個体という認識は、彼らにはモルモットと同じレベルのようだ。

スーパーコンピューターなど並ではないと誰かは言う。

だけど、気持ちのことなんてすっかり忘れて組み上がった理論のことを示唆していた。

そこに悔しいという感情は芽生えなかった。

ロボットには、目的を遂行する使命が生まれつき備わっているわけだから。

――――だけど、そんな私を一人の老人が気付いてくれた。

『お前は不幸だ、意味もなく感情を備えられ、意味もなくただ実験の部品のような扱い。それは不幸という言葉にしても。尚残酷だ』

 初めて外に出ていいという許可は、一人の老人であったゲンゾウさんと外にあった広場に散歩することになった。

夕方にいつか日が落ちかけていたある日のこと。

いつも出られる筈もない外の世界に感動よりも、圧倒されていた。

だって、狭苦しい研究施設でずっと世界はこんなににも小さいものだと今まで思ってきたから。

「不幸……でしょうか? 私には理解できません」

 後ろを歩いて、そこに振り向けばゲンゾウさんがいた。

『そうか。まだ自由を理解していないからな』

 足を止める。

私はゲンゾウさんが止めるようにじっと見つめた。

「でも、傷心してしまいます。どうして、私を感情のないロボットにしてくれなかったのでしょう。どうして、人型にしてしまったのでしょう」

 いつの間にか、涙のしずくが零れ落ちる。

ロボットに涙腺があるが、今の自分にとって人間のような自分が辛かった。

初めて、こんな風に感じたのは。

感情なんてと思っていた自分にとって、この涙は一体なんだったのだろう?

『すまない。我々の機関では今のお前に簡単に決めた方向を修正することは難しい。それはこの機関全体の維持にも係わる。だから―――、お前がもしも自分で選ぶことが出来たなら……その時は手助けをしよう』

 それは世迷言ではなかった。確信のようにゲンゾウさんの方が正しいのだろう。

機械であるがため……人ではない。

 だけど、本当は、人間のように触れ合いが欲しかった。

それは傲慢なのでしょうか?



 すでに夜だった。

周りは街灯で照らされ、家には明かりが灯る。

そこには人の影が日中より少なくなり、家から見える光だけが楽しげだった。

 家の玄関に辿り着き、送迎した車が走り去る。

ユーリの見開くように見た目は期待に満ちていた。

ここからは二人物語、ゼロからのスタート。

「おじゃましますっ」

 ぎゅっとユーリが抱きしめてきた。

きっと脆さだってあるかもしれない。だけど、答えを探していることは自分へと責任を果たすに相応しいと思う。

 目を逸らす、ひたすら前に突きすすめるならば。

「ああ、お帰りなさい。ユーリ」

そうだ。これから始まるんだ。


三話の終了となります。

まだ、不足の面も多々あるようですがどうか温かい目でお願いします。

それにおいて、4話がパート別にスタートいたしますので。

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