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ろぼっと

偶然にもハルがユーリの部屋に行くことによって、なにやらトラブル。

 そして、ロボットだと改めて知ったときには、彼は一体何を思うだろうか?

それはたった一瞬、私は彼に役立ちたいと思っていたのに。

ロボットが溜息をつく。

失敗ばかり始末の悪い弊害でしかない。

 恥ずかしい感情とは一体どうすればよかったのだろう?

出任せ―――初めてハルさんについた嘘。

本当は、なにもわからなかった。

 そこに、“私”としての自我が存在しているかのように感情がある。

だけど、嘘が重い。

 負荷であろう心の一部にずっしりと確かな重さを残していた。

「クロエアお姉さま、私ウソついてしいました」

 それだけで、重さに潰れてしまいそうだった。

「仕方ないじゃないの。心をもっているのですから」

 まるで、クロエアお姉さまに諭されるように膝枕される。

ぎしんでいた音がかき消される。

「―――――はい」

「それより、メンテナンスね」

 どこから持ってきた分からない工具を片手に、クロエアお姉さま。

研究所にいた時から、本当のお姉さんのように面倒を見てくれる。

それは、血の繋がりがあるはずがない。単純に起動した時間がすこし早かっただけ。

だけど、なんで私が選ばれたのだろう?

「あ、あのっ クロエアお姉さま」

「ん?痛いメンテナンスと、くすぐったいメンテナンスとどっちがいい?」

 と、工具ではない何故か爆弾。

しかも耀さまにボムって英語でもなく、平仮名だから余計にツッコミをいれていいのだろうか?

「痛いメンテナンスって、壊しちゃいけませんよ。クロエアお姉さまとは違ってパーツが複数あるからって」

 代用が効くとはいえ、壊れてしまうことには頭が痛む。

「で、できればくすぐったいので」

 でもくすぐったいって、えっと防御本能の一種だよね。

「えっと、でもでも」

「はい。ユーリはそういうところ一度に決めない。だからくすぐったくイジメル」

 チャキッと取りだしたのはドライバー。

その先端を背中でまるで皮膚神経に直接的に感覚を送る。

 つまり弄られた。

だけど、不快よりも笑ってしまう。


大してやましい気持ちではない、単純にこれはしなければいけないこと。

3つの選択肢。

 一体、ユーリは奥の部屋にいるのか。自室にいるのか、それとも俺の部屋にいるのか?

ああ、できれば自室で秘密の会議とやらを欲しいとは思うのだが。

開けたら吃驚なんてことだってあるわけで……。

「まあ、洗濯物どうすればいいのだろうか?」

 溜まった洗濯物を畳み終え、綺麗に畳んだ服を部屋に運ぶ。

 それは、傍から見れば覗きになのか?

うーん、これ……始めに指定していなかった自分の責任なわけで。

「とりあえず、ノックしてみればいいよね?」

 ユーリの部屋の前でノックして、物音一つ音がたたないため安心して扉を開けると、

「えっ、」

「あっ」

 ユーリとぱったり目が合う。

それは秘密にする理由であり、破ってしまった俺は……一体どんなことをすれば許してくれるのだろう。

床に広がった何らかの部品。

そこには、人体形成された柔軟な人工皮膚で覆われていた関節擬体と、そして外部信号により局部として外部刺激に構築した神経伝達ユニット。

特殊合金の骨格からは、複合した筋肉と複数のユニットである先からケーブルが幾多にも延びていた。

 紛れもなく、ロボットという証。

遭遇することに、俺は

「ご、ごめんっ」

 謝る俺に、一体どんな贖罪があったか。

「ハルさん……ごめんなさい。どういたしまして、では変ですよね?」

 それも和やかに笑うユーリで、済ませられた。

バラバラになった部品、そこにユーリが機能しているために必要な点検作業だとわかっているのに改めて知らされる。

謝罪も込めて部屋から出ようとする俺に、ユーリが止めた。

「差し出がましいかもしれないですがハルさんにはいつか知ってしまうと思っていたから……こんな姿ではあまり不快にしてしまうこと謝ります」

 なんでそんなことをいとわしいと思う必要があるんだよ。

「ちがっ、俺は―――ユーリの約束破ってしまったから」

 気持ちが離れる。

本当は俺が一方的に悪いだけで、どうしてユーリが謝る必要なんかないのに。

俺は、謝ればいい。

 何回でも謝ればいい。

頭を下げて、床に土下座をしてとにかく何度も口にした。

『ごめん』を。

なのに、ユーリも繰り返してごめんなさいとお互い繰り返す。

 数回も謝っていれば、何故か笑いが込み上げてきて二人で笑っていた。

結局自分は謝るばかりで。

 それに対する罰もみつからない。

それでいて、いつも彼女の自己満足のお陰。

もしかしたら、自分が彼女に迷惑をかけているのではないのだろうかという感覚が襲う。

「あのさ、ユーリもお見舞い行かないか?」

「はい。でもいいんですか? ご迷惑をお掛けしてしまうかもしれません」

「いや―――、いいさ。それに迷惑だって思ったことがないよ」

「ハルさんは優しいです。じゃあ、すこし待っていてください」

 床一面に広がっている部品の数々を後から来たクロアに手伝ってもらい、メンテナンスの間隣でどんな部位がどのパーツに構成されているか隣で見ていた。

初めてユーリの体の一部を客観的にみて、それを機械としての点検がいかに彼女たちに必要不可欠で。

 人間にしてみれば、人間ドックさながらではあるが。

それを嫌悪するわけでもない。まして、ユーリの姿に固定されていた概念が憑依する。

それは、機械として意思ではない。

 ユーリ自身が芽生える干渉に、俺はどこまで共感できるか。

考えてみれば、まだ1日しか経っていないわけだしお互いが知らない部分って沢山あると思う。


一応2話的には終了です。

 3話にはまた施設について、今度はユーリを引き取るということに関しての問題が浮上してきます。

果たして、ユーリにとって本当の自分にとっての幸せとは?

そして、施設とは?

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