カノジョ(仮)4
宇宙で人型兵器で戦争をするようになって半世紀。
ひょんなことから大戦の英雄となってしまったナナミ君。パートナーのミナミちゃんのアイドル活動がいそがしくなってしまったため、地球勤務になってしまった。
新造の宇宙用兼空母カーマストラーのカフェテリアでひとりお茶をしていた・・・
「さがしたわよ」
声をかけてきたのは軍の広報の担当の女性だった。
CMをやっている立場上『月面焼き』を食べているナナミは、
「エリナさん、ミナミちゃんといっしょじゃなかったんですか?」
「エ リ ナじゃなくてエ レ ナ」
人型兵器のパイロット兼グラビアアイドルのミナミのマネージャーでもある、いつも白いスーツ姿の彼女は、
「歌のレッスンにつきあっていったけど聞くにたえなくて帰ってきちゃった。あんなんでCD出せるのかしら」
「配信だけにしては」
「本人の強い希望なの。予約が殺到するような初回特典、考えなくちゃ」
「前から聞きたかったんですが、つきあっているオトコがいるアイドルって売れるんですか?」
「アイドルも多様化してるから。ミナミちゃんのファンってNTR願望のある男子だから。人型兵器のエースパイロットのカノジョを奪いたいという」
「ボクの存在役立ってるのか」
「あなたは十分役に立ってる。CMで使ったスコルピオンDXのニセ物、プラモメーカーからDXフェイクの商品名で発売決定したら通常の3倍の速さで予約完売したし、あなたのきめゼリフをプリントした『よしてよね』Tシャツもまあまあ売れてるし」
「あれきめゼリフなんかじゃ」
エレナは戦時中は使用も携帯も許可されなかったリンゴの電話を取り出して、画面の時刻表示を見て、
「もうじき『歌姫』をむかえに行かなくちゃ。あたしも月面焼き食べようかな。月面焼きにはチリソースよね」
「月面焼きには、お好みソースですよ」
「トッピングはチーズかな」
「青のりと紅しょうがでしょ。変な食べ方は、よしてよね」
(おわり)