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恋と運と迷路  作者: 落川翔太
5/10

日曜日の午後二時。皓太は渋谷駅の南口にあるモヤイ像の辺りに立っていた。そこで、桃井さんと待ち合わせをしていた。

 二時ちょうどにそこへ彼女がやって来た。

「お待たせしました」

 彼女が皓太に気づくなり、そう言った。

「いえ」

「映画でしたよね?」

「はい。では、行きましょうか」

 皓太はそう言って、すぐに歩き出した。彼女も皓太の後に続いた。

 そこから二分ほど歩いた所に、その映画館があった。

「ところで、今日は何を見る予定なんです?」

 それから、彼女がそう訊いた。

「あー、ええっと」と皓太は言った後、「ゴメンナサイ。特に決めてないです」と、正直に答えた。

「そうですか。なら、私、アレ観たいです。『記憶のかけら』」

「あー、記憶のかけらか」

 その映画は最近、CMで話題の恋愛映画だった。キャストが、最近アイドルグループを卒業したアイドルの女性と、若手のイケメン俳優で、世間では好評であるようだった。観た人たちからは、「感動した」と言う声が続々とあるらしかった。皓太もその映画を観たいと思っていた。

「どうですか?」

 彼女にそう訊かれて、「いいですよ」と皓太が答えると、「やったー」と、彼女は喜んだ。

「じゃあ、それを観ましょう」

「はい」

 それから、皓太たちは券売機でその映画のチケットを二枚買った。その映画は二時半からであった。すぐに皓太は腕時計をちらりと見ると、二時十五分であった。後、十五分でその映画が始まるようだったので、皓太たちはポップコーンとそれぞれのドリンクを買った。

 買い終わる頃には、ちょうど開場できるようだったので、皓太たちは列に並んだ。先頭になり、スタッフにチケットを千切ってもらい、二人はその映画のシアターへに向かった。


 もうすぐ五時になろうとしていた。

 映画を観た後、二人はお茶でもしようと、その映画館の近くの喫茶店へ来ていた。

「映画、面白かったですね」

 桃井さんがコーヒーを啜りながら言った。

「そうですね」

 その映画は案外良かった。「感動した」と、皆が口々に言うのがよく分かった。

「ストーリーも良かったですけど、あのカップルも良かったですよね」

「うん、良かった」

「ですよね。なんだか私もああいう恋愛がしてみたいなあって……。」

「僕もです」

 皓太がそう呟くと、彼女が口を開いた。

「そう言えば、池田さんって、今彼女いないんですか?」

「え? ああ、いないです」

皓太が正直に答えると、「そうなんですね」と、彼女は言った。

「桃井さんは?」

 それから、皓太がそう訊いた。

彼女は照れ臭そうに笑った後、「私もいないです」と言った。

「そうなんですね」

 その後、彼女は黙った。皓太も黙ってしまう。二人の間に沈黙が訪れた。

「そう言えば」

 しばらくして、彼女が口を開いた。「池田さんって趣味ありますか?」

「趣味か……。趣味は、ゲームしたり、アニメや映画を観たり、後、漫画を読んだりすることですね」

 皓太がそう答えると、「へー」と、彼女が言った。

「結構、多趣味なんですね」

彼女にそう言われて、「まあ、でも、インドアなだけですよ」と、皓太は言って笑った。

「桃井さんは?」

 それから、皓太は彼女にそう訊いた。

「私も映画を観たり、漫画読んだりしてますよ」

「ほー」

 映画や漫画と聞いて、趣味が似てるなと皓太は思った。

「後は、カフェ巡りをしたり、読書したり……。ああ、後、時々ラーメンを食べに行きます」

 それから、彼女はそう言った。

「え? ラーメン?」

「そうです」

「ラーメンお好きなんですか?」

「うん」

「僕もです!」

皓太がそう言うと、「うそ!?」と、彼女は驚いた。

「ホントです。因みに、ウチ、実家がラーメン屋なんですよ」

 皓太がそう言うと、「えー、そうなの!? それはすごい!」と、彼女がビックリして言った。

「実家って、どこなんですか?」

「実家は埼玉です」

「埼玉か!」

「はい」

「えー、いいなあ。私、ラーメン、食べ行きたいです!」

 それから、彼女がそう言った。

「あ、食べに来ます?」

 その後、皓太がそう言うと、「いいんですか? ぜひ行きたいです!」と、彼女が言った。

「いいですよ」

「やったー」

 彼女が嬉しそうに言った。

「あ、そう言えば、埼玉で思い出したけど、前に埼玉を舞台にした映画ありましたよね?」

 それから、彼女が思い出したように言った。そう言われて、皓太も思い出す。

「『つつしんで埼玉』って、映画ですよね?」

 皓太がそう言うと、「そうそう」と、彼女が言った。

「あのコメディ映画観ましたけど、面白かったなぁ」

「ですよね。僕もそれを観て、面白かったの覚えてます」

 それから、二人はその映画の話で大笑いし、その後も映画や漫画、ラーメンの話などをしていた。

 気づけば、もう五時半を過ぎた頃だった。

「そろそろ出ましょうか」

 皓太がそう言うと、「そうですね」と、彼女は言った。

「ここは奢ります」

 皓太がそう言うと、「いや、今日は私が奢ります」と、彼女が言った。

「え? いいんですか?」

皓太がビックリしてそう訊くと、「はい。前回、ご馳走して頂いたので」と、彼女が言った。

 それから、皓太はそこはご馳走してもらおうと思い、「では、お言葉に甘えて」と、彼女に言った。

 その後、彼女が席を立ち、レジへ向かった。皓太は先に店から出た。彼女は会計を済ませて、店の外へ出てきた。

「ごちそうさまです」

 皓太は彼女にお礼を言う。

「いえいえ」

「この後、どうします? 今日はもう帰ります?」

 皓太がそう訊くと、「そうしませんか」と、彼女は言った。

「分かりました」

「池田さん、駅まで一緒に帰りましょ」

 彼女がそう言った。

「うん」

 それから、二人は駅まで歩いた。すぐに駅に着いた。

 駅前まで着くと、そこはたくさんの人たちで溢れていた。さすが渋谷の街だなと皓太は思った。

「池田さん、今日は誘っていただいてありがとうございました。楽しかったです」

 彼女が立ち止まり、皓太を見て言った。

「いえいえ。こちらこそ楽しかったです」

「今度は、ラーメン食べさせてくださいね」

 それから、彼女が笑顔で言った。

「もちろん」

 皓太はそう言って、にこりと笑った。「すぐに連絡しますね」

「はい! じゃあ、私、あっちなので」

 その後、彼女はJRの駅の方を指して言った。

「あ、じゃあまた」

 皓太も手を挙げて、彼女を見送った。

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