私たちに残された勝機
「……」
「「……」」
それにしても……、まさかゴブリンだったなんてね……。ついさっきまで木の陰にいたせいでゴブリンの姿は見えなかったけど、いざこうして実際に見てみると確かに恐ろしいわね……。これなら、エレナちゃんが怯えるのも無理ないわね……。
私は対面にいるゴブリンを見ていると、そのあまりにも恐ろしく感じる見える魔物ぶりに、エレナちゃんが怯えていたのも無理ないとどこか納得していたの。
「……ニィ~ッ……」
ジュルリ……。
「ヒッ……!」
今の感じ……、明らかに私たちを喰おうとしているわね……。分かってはいたけど……、これはかなりマズイ状況ね……。
そしてゴブリンが私たちを見て再びニヤつき、舌を舐め回しているのを見て、明らかに私たちを喰おうとしていると感じたの……。
さて……、どうすればいいのやら……。何もしないわけには行かないし、ここは何か1つでも行動に移さなきゃね……。
ズサッ!
「……!」
「アリアちゃん……?」
「エレナちゃんを襲おうとするなんて……、そんなの絶対に許せない……。エレナちゃんは私が守る……!」
「アリアちゃん……!」
何て格好良く出たはいいんだけど……、実際のところを言うと……、私もゴブリンを見て、かなり怯えているんだよね……。現に足もかなり震えているぐらいだし……。
そして私は何か1つでも行動に移そうと、ゴブリンにかなり怯えながらもエレナちゃんの前に立ち、エレナちゃんをゴブリンの攻撃から守ろうとしていたの。
だけど……、この危機的状況を乗り越えないと多分私たちの勝機はないと思うから、ここは何としてでも私たちに出来る限りのことをして、ゴブリンを何とかしなくちゃね……。とりあえず、まずは……。
「……」
「……?」
ビュッ!
「っ!?」
私がまず最初に取った行動は、近くにあった小石をゴブリンに目掛けて投げることだったの。
「~!?」
今だ……!
「逃げるよエレナちゃん!」
「えっ……!? うっ……、うん……」
そして私がゴブリンに目掛けて石を投げると、ゴブリンは石がぶつかった反動で一瞬目を逸らし、私はその隙を狙って、エレナちゃんを連れて一緒に逃げ始めたの。そう。これが私の考えた今の私たちに出来る最善の策だったの。
丸腰の私たちにとっては、今はこうすることしか出来ないからね……。
「ねぇ、アリアちゃん……。私たち、これからどうなっちゃうの……?」
「分からない……。ただ、今はゴブリンからなるべく距離を取って、早くソフィアさんとエマさんに会ってそのことを伝えなくちゃ!」
「アリアちゃん……。うっ、うん、そうだよね! 早くエマさんとソフィアさんに会ってそのことを伝えなくちゃね!」
現在私とエレナちゃんはゴブリンからなるべく距離を取り、早くソフィアさんとエマさんに会ってそのことを伝えようと、一目散に走っていたの。
「とりあえず、今はゴブリンからダッシュで逃げなくちゃ!」
「うっ、うん!」
タッ、タッ、タッ、タッ、ズクッ!
「あっ!?」
ドサッ……!
「エレナちゃん!?」
私とエレナちゃんはそのままダッシュして逃げ続けていると、途中エレナちゃんが足をつまずいてしまい、そのままコケてしまったの……。
「痛た……」
「エレナちゃん、大丈夫!?」
「うっ……、うん……。大丈夫……。何とか……」
「良かった……。ほら、エレナちゃん手出して。私が立たせてあげるから♪」
「アリアちゃん……。うん、ありがとう……♪」
エレナちゃんがコケてしまったことに動揺し、心配になった私は、大丈夫かどうかエレナちゃんに聞くと、エレナちゃんから何とか大丈夫だと言われ、それを聞いた私はホッと一安心し、エレナちゃんにすぐ手を差し伸べ、エレナちゃんを立たせることにしたの。
今は一刻も早く、ゴブリンから逃げ出さなくちゃね……。




