ちょっと不良なかぐや姫
注意:決して真面目な小説などではありません。内容については一切責任を負いかねます。突っ込みたいときはコメント欄に突っ込んでください。見つけ次第改定します。それでは、この小説をお楽しみください。
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これは、月に戻って1300年ほど経った「かぐや姫」(1324)と、それを取材する地球人記者ワタナベ(30)との取材記録である。
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一
「・・・えー、それではかぐや姫さん」
「かぐやでいいわ。姫辞めましたし」
「それではかぐやさん。我々○○新聞は、遥か昔に月に戻られたかぐやさんに取材をするべく、日本国家が総力を挙げて血税と2年もの歳月をかけて開発したH3ロケットに搭乗して遥か遠くにある月までやってきた訳ですが・・・」
「御託はいいのよ」
「ちなみにこれは生放送ですので、1.3秒ほど遅れて地球に伝送されますのでご了承ください」
「いいから取材しなさいよ!」
「失礼しましたかぐやさん。・・・お綺麗ですね。当時と変わらないほど」
「まぁ嬉しいわ。まぁ、ここでの1000年2000年なんて私たち月の民にとっては短いものですけどね」
「そういえばかぐやさん、地球の日本語が大変お上手ですね」
「まあ、地球の民の言語なんぞ一ヶ月でマスターしましたけどね。・・・日本語が一番辛かったかしら」
「・・・」
「でも最近はそれもまた変化しているようで。まあ、昔から常に変化し続けているんですけどね」
「・・・そうなんですか。えー、では、そろそろ本題に移りましょう。まず、一体どうして、地球にやってきたのですか?」
「そうですね・・・話すと長くなりますし、ちょっと口調が当時に戻るかもしれませんが・・・宜しいですか」
「・・・はい」
「それでは・・・えー、
二
まあ、あたしは昔、結構悪いことしてたのよ。万引きしたり、他人の男寝取ったりしてね。
それでまあ、警察に捕まって裁判を受けたのよ。・・・え?勿論月の世界じゃ「警察」なんてダサい名称じゃ無いわよ。分かりやすく言い換えてるだけ。
で、結果は勿論有罪、地球に追放されたの。・・・これはマジよ。刑を言い渡された時は「えー、ウッソー!」って感じて絶望したわ。だって地球よ地球?ありえなくない?」
「・・・どうなんでしょうか・・・」
「まあ、更生させる意味もあっての刑らしいけどね。それも一回若返らせてから追放するから、当然記憶はさらっぴん。0からのスタートよ」
「なんという刑罰だ・・・」
「まあ、誰かに拾ってもらわないと更生以前に餓死するから、強力な光源もついでに入れられたのよ。ついでに私の生活用の仕送りもね」
「・・・じゃあ、『本光る』とか『金ある竹』って、全部向こうが仕送りしてきたってことですね・・・」
「そういうこと。で、あのジジババの元で成長したってわけ」
「『ジジババ』は言い過ぎなんじゃ・・・」
「いいじゃない。実際そうだし。・・・実は月の民は、初めが小さいワリに、成長がカナリ速いのよ。だから、たった3ヶ月でオトナな女性に育ったってわけ」
「無茶苦茶速いですね・・・」
「でしょー?地球の民なんて人生の1/2〜1/4ほどを成長に費やしてるのよね?もったいないわねえ〜」
「・・・それが青春なんじゃ・・・」
「まあそれからは、求婚の嵐よ。でも、みんな断ったわ。だって当然じゃない?姿は同じでも、誰が、寿命が1/30しかないのと付き合わなきゃいけないのよ。それは地球人でも同じでしょ?」
「・・・」
「でもホントのことは言えないから、『オトコなんて表面だけで中身が分からないからイヤ』ってジジババに言っといたわけ。それでもあの5人の男どもだけはしぶとくやって来るのよ」
「えー・・・5人の男とは、石作皇子・車持皇子・右大臣阿倍御主人・大納言大伴御行・中納言石上麿呂のことですよね?」
「・・・そんな名前だったかしら?」
「文献によればそうですけど・・・」
「まあいいわ。顔もなんとなく思い出したし。で、とりあえずその5人にさっきの理由で"指定した物を持ってきて"って伝えたのよ。・・・まあ、そんなもんあるはず無いからこれで安泰、と思ったわけ」
「あの難題ですね・・・」
「しかし、あいつらは伊達にかぐやラブじゃなかったのよ・・・」
「?」
「5人とも、それなりにがんばったのよ・・・」
三
「初めは石作皇子。天竺から持ってきたって言うから見てみればとんだニセモノ。何が『百千万里のかなたから持ってきた』よ。思わずキレて外に投げ捨ててやったわ」
「それはヒドイ男ですね・・・」
「次が車持皇子。こんどはちゃんとした綺麗な枝を持ってきたかと眺めていると、これが話がウマイのよ。月の民である私が聞き惚れるほどよ。思わず本物とジャッジしそうになったら、外に6人のオヤジ達が来てね。『おい車持、金払え!』とか叫んでいるのよ。で、その枝を返してとっとと帰らせたのよ。地球の民もやるもんねぇー」
「まあ・・・職人は今も昔もすごいものですから」
「その次にやってきたのが右大臣阿倍御主人。どこぞから買ってきたらしいけど、試しに焼いてみたらメラメラと燃えちゃって。当然ながら顔も真っ青よ。まさかニセモノだとは思わなかったらしいから、ざまあみろって気持ちで歌を返したわ」
「悪徳業者ってヤツですね・・・」
「まあそんなとこね。そして次が大納言大伴御行。本気で取りに行ったはいいけど、失敗して大きなこぶが2つも出来た・・・流石に悲惨ね」
「本当ですね・・・」
「で、最後が中納言石上麻呂。まじめにツバメの巣まで上って取ろうとしたら転落して、掴んだのはツバメの糞・・・。しかも、その一撃が祟って早死に・・・。それは流石に可哀想に思ったわ」
「悲劇だ・・・」
四
「・・・まあ、あの5人を退いてやれやれと思ったそのとき」
「・・・帝がやってきた、と?」
「そう。流石にびっくりしたわ。なにせその国のトップ。そこから直々に来るなんて」
「まあ、それだけかぐやさんが美しかったことの証ですね!」
「・・・『かった』?」
「・・・すいません、『そのときも美しい』の間違いですね、訂正します」
「・・・よろしい。流石帝、軽薄ってわけじゃなかったわ。でも、前述の理由でどっちにしても対象外ね。消えたりして、"地球の民ではない"ことを見せ付けたら流石に残念がっていたけどね」
「はあ・・・ええ!?消えるんですか!?」
「そうよ。まあ、月の民の特殊能力ね」
「特殊能力って・・・そうなんですか・・・」
「まあ、そんなこともあったけど、そっから3年、ぼんやりと地球で過ごしたわ。帰りたいけど、3年経たないとお迎えが来ないしねえ・・・」
「・・・お迎えですか」
「いくらあたしでも、自力で戻るなんて出来ないし、第一"更生中"だもんね。まあ、待っていたのよ」
「・・・さびしかったんですか」
「友達もいないしねー。まあ、月と違って四季はあるし、その意味では楽しんだわ」
「・・・月にはやっぱり四季はないのか・・・」
五
「そして3年後。いよいよ帰れるって時に、不覚にも悲しくなってね。帰れるんだから嬉しい筈なのに」
「・・・なぜなんですか」
「楽しかったのよ。地球の生活も。四季があるってこともあるけど、なんだか飽きないのよ。美男美女以外もい〜〜〜〜〜っぱいいるしね」
「へえ・・・って、えええ!!?月には美男美女しかいないんですか!!?」
「"地球の基準で"って話よ」
「そうなんですか・・・月が羨ましい・・・」
「止めときなって。どうせ合わないから。寿命も文化も言語も、そして何より性格が違うしね・・・」
「そうですか・・・残念です」
「で、それを聞いたジジババが」
「・・・やっぱりジジババなんだ」
「絶対帰らせないって、兵士を山ほど呼んだのよ。地球の民がいくら頑張ったところで、勝てるわけ無いのに・・・」
「・・・」
「そして8月15日。終にやってきたわ。当然ながらどんなにがんばっても無力、ある意味これも強制拉致ってとこね」
「・・・なんか違うんじゃ・・・」
「とはいえ、迎えの使者もちょっとウザかったわ。『賤しきおのれ』とか『きたなき所のもの』とか地球の民に大して言いたい放題。いくら事実でも、ちょっとね・・・。別にマズくは無かったし」
「はあ・・・ところで、どこで『ウザい』なんて言葉を学んだのですか?」
「え?文献からだけど?地球に派遣された月の民が、情報を送ってくるのね、この月に」
「月の特派員ですか・・・」
「まあ、話を戻すわ。で、何も無しで立ち去るのもちょっと・・・と感じたから、使者が渡してきた不死の薬の一部を着物に包んで、手紙と一緒に置き土産にしようとしたの。使者は止めようとしたけど、別にいいじゃない?どうせ薬を飲んでも別の原因で死にかねないし」
「そりゃそうですけど・・・」
「まあそれを渡して、それから羽衣を着て、月へと帰ってきたの。おしまい」
「・・・おしまいですね・・・」
六
「ところで」
「ん?何?」
「羽衣を着たら、地球の記憶は忘れるんですよね?」
「そうよ」
「じゃあなんで、インタビューに応じてくれたんですか?覚えてなかったらそう言うでしょうに・・・」
「・・・それはね。地球から送られてきたある文献を読んだからよ」
「ある文献って・・・まさか・・・」
「そう、『竹取物語』よ。どこかの誰かさんが書いたSFね。やけに聞いたことあるなあ・・・と考えて読んでいたら、ハッって思い出したのよ。あのころ、地球にいた頃の記憶を」
「・・・なるほど」
「羽衣も、完全ではなかったのよ・・・」
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そうして、インタビューは終わった。
ワタナベは感じた。
月の民は、なんと羨ましい生活をしているのかということ。
そして、魂に刻んだ記憶は、何処の民でも忘れようがないということを。
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・・・ふぃー。書き終わった(約二日間)。半分思いつきで書いたものですので、あまり内容を本気にしないでください。それでもまあ、原文は参照しましたし、ちっとはまともかな。お読みくださりありがとうございます。