Lの思い出
俺、アホやから並みの言葉しか知らんのやけど、アイツ、強いし優しいしキレイやったよなぁ。ただ、感性はイカれとったな、少し。
ある戦場で「世界一の夕陽」がちょうど見えとった時があってな。世界一の夕陽らしいで、勝ったから毎日見られるな。て言うたら、「自然さえも換金できるなんて、人間は全く天才ですね。」って。ちゃうやん。世界一の景色を自分たちの物にした、美しい物さえ手に入れられた、そういう感動を覚えるやろ普通。紅葉見に行こうて誘ってもな、「紅葉見ても、お腹は満たされませんよ?」て、きょとん顔で言うてくんねん。そりゃ俺は飯めっちゃ食うし好きやけどさぁ、そういう事やないやん。食いもんに目がないとこは同じやのに、趣?ちゅうのが無いねんなぁ、アイツ。飯行こうて誘ったときだけ、ついてくんねん。右の口角上げて、あの薄気味悪いぎこちない笑い方でな。欲求が食うか動くかしか無いんやろうなぁ。ガキやで、ほんま。まぁ、そんなところがアイツの強さの要因やったのかもなぁ、きっと。
まぁでも、やっぱ乗り物の操縦がプロやったよなぁ。アイツの乗った戦車を先頭に戦場に突っ込んだ時は負けなしやで。というか、アイツが先頭を切るようになってから、劇的に勝つこと増えたもんなあ。アイツの操る戦闘機もやばかった。敵を一掃してたなぁ。全ミサイルぶちかました後、アクセル固定して戦闘機だけ突っ込ませてん。見事やで。あんな奴に勝てる奴おらへん。俺でさえできひんで。あと装甲車。アイツが運転で俺が狙いを定めてドン!呼吸がピッタリ合うてんねん。二人で組んどるときは気持ちええほど敵殺せんねん。上手くいったら「ナイス運転のおかげですね。」て、俺が撃っとんのに。冗談言うような顔ちゃうのにな。あんなええ相棒おらんでほんまに。精神的にもめっちゃ強いしなぁ。もったいないなぁ。
ああ、でも体術クソやったわ。素手のタイマンは訓練時でさえ、完敗しとったなぁ。足もめっちゃ遅いし。俺、一発も当ててへんのに受け身が下手というか、体の使い方が下手なんかな、終わった後ボロボロやったなあ。でもな、武器、木の棒でもなんでも、持たせたらな、めっちゃ強くなんねん。本人曰く脳筋戦法らしい。馬鹿力で目一杯殴ってるだけ。相手からの攻撃ももろに受け止めてん。あんなん絶対負担大きいで。流石、脳筋戦法言うだけあるわ。
ただなぁ。ちょっとムカつくとこもあってん。
アイツ、めっちゃ敗北主義やろ。最初は「死ぬ前に、あの飲み屋に行きたかった。」とか「もう一度だけ、M殿と茶会がしたかった。」とか少し鼻につくことばかりやったのに。最近、一年前くらいからな、「死体は医学の発展に役立ててくれ。」とか「愛車のケッテンクラートはバイク好きのS君に譲ろうか。」とか自分が死ぬこと前提で話すねん。酷い時は、使うたことない愛用のナイフを俺にくれるて言いおって。でな。お前の死後を考えるほど暇やないで、って言うたらな、また右の口角あげて笑って謝ってくんねん。嬉しそうにしおってなぁ。そないに強いくせして、何をって、思うてん。でもそれは、お前が死なないっちゅう前提があってこそのことやったのに。
俺、戦争の前日、あのこと知っててん。死ぬって。せやのに、俺──。
だってアイツ、ずるいねん。あのこと報告してきてん。前日やで?ずるいやろ?一年前に発覚したんやって。待機しろって言うたらな、「結末は同じです。それに今回の作戦に私は必要不可欠です。敗戦もしたいのですか。」って半ギレで。敗戦もって。ずるいやろ。俺の気持ち分かってて言うてんのやぞ。しかも、泣きながらやで。そっちだって、嫌やっちゅうことやろ。今までなかったのに。俺、なんて言えばええの?いっそ殺して俺も死のう思ったわ。
ほんま婚約した時に言うてほしかったで──。




