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嗅覚は割と役に立つ

作者: 須原綺奈子

 今日の晩ご飯なんだろう。そうやって家の裏に自転車を停め、意識を嗅覚に集中させる。

「今日はコロッケかな」

 家に入る前に匂いだけで晩ご飯の予想をするのが日課になっていたおかげで、的中率はほぼ100%だった。匂いのわかりづらいものでも、2、3回匂いを嗅いだだけでわかるようになった。でもたまには間違えることもある。


「うーん、わかりづらいなぁ。適当にそうめんとかでいいや。麺類なのは合ってるでしょ」

 いつものように予想をして家に入る。玄関を開けると匂いが強くなり少し分かりやすくなる。ただ、そうめんとかの明らかに匂いがないようなものは完全に願望。今日のはそうめんであって欲しいからそうめんの予想をした。

「おかえり、今日はなんの料理だと思ったの?」

 ここで本当の予想を言ってしまうと、ダイニングテーブルに準備されたそばとは違う回答になる。それは変なプライドが許さないので咄嗟にそばと答えた。

「絶対嘘やろ」

 違う答えを言ったことは見抜かれるからプライドは守れないんだけどな。


 昨日がそばだったなら今日は麺類はないな。その割には麺類の匂いがえげつないんだけど。連続で麺類とかどんな家庭だよ。

「うどん寄りだな。冷凍の」

 これは合ってると思う。謎の自信に満ち溢れたままテーブルを見ると、ざるうどんが用意されていた。「うどん」というざっくりとした予想をしていた自分のせいでもあるけど、ざるはずるい。明らかに冷凍されてませんよ感が溢れてる。


 2日連続で外したのはさすがに萎えるな。今日は当てる。幸いにも割と匂いがはっきりしてて予想しやすい。それにしてもなんだこれ。嗅いだことないな。肉なのは確かだ。それと血も匂うな。たまにあるのが、匂いはわかりやすいのに自分が知ってる料理の種類が少なすぎるこの現象。

「手羽先だな」

 自信はないけどこれくらいしか思いつかない。家の裏から玄関に向かう途中、家の電気が付いてないことに気がついた。ついでには窓の鍵部分が半円上に切られている。

「料理してないのか?」

 不信感を抱きながら玄関を開ける。強くなった匂いで家の中の状況を察した。暗闇でも匂いだけでまだ人がいるのが分かり静かに家をあとにした。

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