第7話 買い物と言う名のデート
そんなこんなで一緒に旅をすることになった俺達だが、今後の方針を固める事にした。
「それじゃ今後の旅はどうするの?」
「そうだね……。 日本に戻る――というのはもし見つかればという程度でいいかな。 まずは強くなりたいしこの世界の事を知りたいかな」
「そこまで重要視してないように思えるけど?」
「正直検討が全くつかないという所かな。 色んな所を見て回って、もし見つかればいいなという程度かな。 無いならないでその――姉さんと一緒だし……」
俺の想いよ姉さんに届け!
「そうね。 見つからなくてもこれからは姉さんが一緒ですよ」
「ソッソウデスネ……」
俺の想いは純真なその笑顔に届いていないようだった。
「まずは道具屋と武具屋に行って身の回りの物を整えないとね」
「えっと……。 もしかしなくてもご存知だと思いますが、お金が……」
「フフ。 お金の事は気にしなくていいのよ、その……家族なんだから」
異世界生活二日目にしてヒモ生活が確定した。 早く脱出しないと……。
「その後は冒険者ギルドに行って冒険者になりましょう」
「冒険者にならないといけないのは理由が?」
「そうですね、まずは身分書の代わりになります。 冒険者ギルドはどの国のどの街にもありますから。 身分書が無ければ場所にもよりますが、街に入る度に大体1銀貨程度取られてしまいます。 ちなみにですが貴方の分は私が払っていますよ」
「本当に何から何までありがとう姉さん。 ちなみにだけど、他にも銅貨だったり金貨とかあるの?」
「当然でしょう。 大体になりますけど1000銅貨で1銀貨、1000銀貨で1金貨ですね。 それ以上の硬貨もありますけど、私達が目にすることは無いと思いますので今はいいでしょう」
「ちなみに、この宿って一晩いくらぐらいするの?」
「この宿は1晩食事付きで3銀と200銅とこの辺りでは少し相場より高いわ。 でも食事はこの辺のどの宿よりも美味しいし部屋も清潔ですから」
「へ~。 じゃあ一番安い宿でいくらぐらい?」
「そうですね……。 確か冒険者ギルド近くにある宿が一番安かったはずですよ。 一晩で確か300銅だったかと」
「ってことはこの宿はそこより10倍ぐらい高いじゃん! ってこと考えると街に入るのに1銀は結構初心者冒険者とかだと払えない人とか結構出るんじゃない?」
「そうですね。 ですが、冒険者ギルドに加入して依頼等をこなして素材も売ればすぐに貯まりますよ。 最悪払えなければ街から追い出されるだけですから」
「そこら辺結構厳しいんだね……。 姉さんには借りっぱなしだから早く返せるようにならないと」
「フフ。 無理しなくてもいいのですよ。 それじゃそろそろ行きましょうか。 まずは商業区ですね」
「商業区?」
「えぇ、この街には3つの区に分けられています。 居住区や行政区があるわ。 そのうちお店が並んでるのが商業区よ。酒場や商店に冒険者ギルドもここにあるわ。 ここでハルトに必要な物を買いにいきましょ」
『ほら行きますよ』と俺の手を握り笑顔で宿を出る。
商業区は活気のある通りで、大通りでは露店が所構わず並んでおり、人も多く活気がある。
ここでは人間以外の種族が当たり前の様に暮らしいるみたいで、人間以外にも獣の耳や尻尾が付いてる獣人と呼ばれる種族。 耳が長く絵本から出て来たような顔が整ったエルフと呼ばれる種族。 背丈が小さいホビット族に毛むくじゃらのドワーフ族など、色んな種族が日常を送っていると姉さんから常識を学んでいると、『あぁ、俺は異世界に来たんだな』と実感した。
まずは冒険に出る為の道具をそろえるということで道具やに行くことに。
道具屋の店内では現実世界じゃ見たことない物が沢山揃えてあり、どれもこれも新鮮で楽しい。 小さいフラスコの形をした瓶には青や赤に緑といったカラフルな液体が入ってるこれがポーションらしい。
ポーションにも下級中級上級とランク分けされており、一般市民が手に入るのはせいぜい中級まで。 上級は高すぎて買い手が中々付かず、精々貴族や王族といった偉い人たちばかりらしい。
ポーション以外の道具は何かの革でできた鞄にベルトや小さいナイフ等の小道具。他にも色々と見た事も無く、どう使うかも分からない道具が並んでいて、見ていると見知らぬ海外へ旅行に来た気分になる。
ここでは最低限必須である収納鞄に小さいナイフと研石。 小道具やポーションをセットできるベルトといった初心者冒険者御用達と呼ばれるらしい道具の数々を買って貰った。
申し訳ない気持ちを抱いたままの俺と気にした素振りも見せない姉さんご一行は武具屋に移動した。
武具屋に入っていく俺たち。
いや、正確に言えば俺は物々しい店の雰囲気に当てられて俺だけ少し躊躇してしまった。 姉さんは既に慣れているのか躊躇する事も無く店内に入っていったのだ。
そんな店内で待ち受けていたのは厳つく不愛想な爺さんが「ふん」と鼻鳴らす。
武具屋では様々な武器や防具類が並んでおり、武器は剣からレイピアに槍や斧まで様々な種類が置いてある。
防具はこれまた何かの革で出来た胸当てっぽいものから足の脛や膝を守る為の足具にダークなソールみたいなゲームのパッケージで見たことあるフルフェイスと呼ばれる兜や鎧も置いてあった。
俺は初心者ということもあり、動き重視で軽く動ける革の防具類と1本のロングソードにバックラーと呼ばれる少し小さい丸い盾を買った。 いや、正確には『買って貰った」になるんだが、今さらツッコミは藪である。
店内にある全身鎧のフルアーマーも試しに着てみたのだが、所重すぎて動けないので諦めた。 姉さんにも爺さんにも笑われたし二度と着ないと心に決めた。
本当はバックラーじゃなくてロングソード2本使ってみたいと考えたが、姉さんが真顔で『死にたいのですか?』と言われてはどうしようもない。 試しに振ってみたのだが、『剣筋がぶれすぎ』『素人以下』という判定を有難くも爺さんに有り難くいただいた。
くそ……。 絶対に諦めない!
「さて、それでは準備もできましたし冒険者ギルドに行きますよ」
完全にデートだと思います。
こういう人生を歩みたかった。




