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幕間 夏と男の子?とかき氷

お久しぶりです!

エタってないよ!

 どうして俺はこんな事に……。


「なんでだぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 俺、天城 春斗は大勢の女性に追いかけられていた。


 いや、これは男にとって大変喜ばしい事だとおもう。


 女性の顔が鬼の様になっていなければなんだけど……。


 時は戻って今朝まで戻る。







 『インサニア』との戦いで長い入院をしていた俺は、退院して久々に自由な時間を満喫していた。


「おっカイエ! 久しぶりだな」


 彼はカイエ。 『戦神の矛』で斥候や偵察を得意としている獣人の男の子で女子に大変人気がある。


 そんなカイエが同じパーティーの『ルージュ』と『ハーリィ』がいないのが珍しい。


 カイエ行く所にその二人は必ず着いてくるのだが、今日はいないみたいだ。


「やぁハルト。 もう退院したんだって? 改めておめでとう!」


「サンキューカイエ。 そっちこそ1人なんて珍しいな。 ルージュとハーリィはどうしたんだ?」


 嫉妬深いあの二人がカイエを一人にするなんて一体何があったんだ?


「今日は会合があるとか何とか言って二人揃ってふらっと出かけたよ」


「会合? 何の会合なんだ?」


「さぁ……僕には教えてくれないんだ」


 会合? カイエに言えないという事は……まさかな……ははは。


「それよりもさ、カイエ暇か?」


「今日は何もないからね。 ハルトこそ暇なの?」


「あぁ、姉さんとエルは二人で買い物に出かけたよ」


「ついて行かなかったの?」


「女の買い物って長いからさ……」


「ははは、そうだね……」


 カイエも苦労してるんだな……。 モテるといっても良いことばかりじゃないか。


「どうせ暇だしさ、どこか二人でいかないか?」


「いいね。 そういえばハルトと二人きりで出かけたこと無かったから楽しみだな♪」


 トゥンク! なっ何だ……どうした俺の心臓よ。 相手はどんなに可愛く中性に見えてもカイエは男の娘……じゃなくて男の子だ。


 いけない……これ以上はいけないぞハルト……!


「どうしたの? ハルト」


「なっなんでもないぞカイエ。 それじゃ行こうか!」


 内心悟られないようにカイエを連れて適当に歩く。


「そういえば、俺この街に来てからずっと冒険したりしてあまり場所を知らないんだよな。 良かったらカイエがオススメのお店とかあったら教えてくれよ」


「そういえばまだハルトがこの街に来て1年も経ってないんだったね。 わかった着いてきてよ!」


 ニコッと眩しい笑顔で俺の手を握って走り出すカイエ。


 姿かたちは可愛いのに、少し強引な所もある……これがモテ男のチカラなのか。


 自然と相手の手を握って走りやがってコイツ……。


 俺じゃないと今頃胸を貫かれていたぜ……。


 そんな馬鹿な事を考えながらカイエに連れられてこられた所は、路地に入った所で隠れたようにある。


 大きな看板も出していないので、街に詳しい者じゃないとこの店を見つけるのは難しいだろう。


「カイエ、よくこんな隠れ家みたいな店見つけたな」


「そうでしょ。 ここ僕のお気に入りのお店なんだ」


 ニコリとしたその笑顔はドキっとさせられる。


 駄目だ駄目だ駄目だ、こいつは男だ。 俺は誤魔化す様に店内へ入るよう先を急かす。


「ほらっカイエ。 さっさと入ろうぜ!」


「待ってよハルト」


 店内に入ると優しそうなお爺さんが「いらっしゃい」と言いながらカウンターでカップを拭いている。


 あのお爺さんの孫なのか、それともアルバイトなのか、机を拭いていた娘もお爺さんの声に反応してこちらを見る。


「いらっしゃいカイエ♪ そちら……は?」


「こんにちはミーナ。 こっちはハルト、僕と同じ冒険者で1番の友人だよ」


「ふっふ~ん……1番ね……」


「改めて、カイエの友人のハルトだ。 よろしく」


 俺はミーナに挨拶をすると、ミーナが手を出してきた。


 あぁ、こっちにも挨拶で手を握る文化があるんだな。


 ミーナが差し出してきた手を握り返すと、ギュっと強く握ってくる。


 強く……強く……ちょっちょっと待って、握力が強すぎない?


「ちょっちょっとミーナさん……」


「ん? 何? どうしたのハルトくん。 あっ私の事はミーナと呼んで」


「あっミーナ……その……手を……」


「ごっごめんね、私ったらはしたない……」


 何を恥ずかしがっているのだ。 はしたない……と言いながらもこっちを見てる目は怖い。


 顔と言動が完全に不一致じゃないか。


「それじゃ2名様ご案内するね」


 何事もなかったかのように俺とカイエを案内するミーナ。


 カイエはそんなミーナの異常には気がつかない。


 俺、本当にここへ入ってよかったのか?


 案内されたのはカウンターに左端の席。 ここがいつもカイエが座っている固定席らしい。


「雰囲気いい店だな。 落ち着いてゆっくりできそうだな」


「でしょ? ここは僕のお気に入りのお店なんだ」


「それで、この店は何があるんだ?」


 この世界のお店はメニュー表がない。


 文字があっても読めない人が多いからだ。


 そのため紙の普及率は全然伸びないし、そもそもその紙自体が高い。


 つまりはあまり需要が無いのだろう。


「今日も暑いしさ、この時期に食べられるここの名物があるんだ」


「お爺ちゃんアレを2つ!」


 カップを拭いているこのお店の店主に元気よく注文するカイエ。


 そんなカイエを孫の様に見てる店主は黙って頷くと、調理を開始した。


「なぁカイエ、何を注文したんだ?」


「へへへ。 来てからのお楽しみだよ」


 おま……その顔を止めろよ……と思いつつもカイエと雑談をしながら待っていること数分。


 俺とカイエの前に綺麗なグラスが置かれた。


 グラスには粉々に砕かれた氷の上に果実のソースがたっぷりとかけられている。


 俺のグラスには紅いソース、カイエの方には黄色いソースだ。


「これは……かき氷か!」


「かき……氷?」


「あぁ、これと似たようなのが俺の住んでた国にはあったんだよ」


「へ~。 このお店以外でこの氷菓子がある国があるんだね。 僕もいつか行ってみたいな~」


「凄く遠くにあるから、いつか帰れたらな……」


「うん! その時は今度はハルトが僕を案内してよ」


 その時が本当に来たらいいな……と感傷に浸るのを隠すように氷菓子を食べるように促した。


「ほらっそれよりも溶けるからさっさと食べようぜ!」


 白いソースがかけられている氷菓子の味はミルク味のソースだった。


 よくある練乳のかき氷ではなく、新鮮なミルクを甘くトロトロに煮詰められたソースは冷たく砕かれた氷と混ざって口の中を幸せに包み込む。


「くぅー! 美味しい! この暑い時期にこの氷菓子は最高だな!」


「でしょ? ここの氷菓子は最高なんだ」


 氷菓子を食べて幸せを噛みしめるカイエ。 尻尾は横に全力で振られている。


「ねぇハルト」


「なんだ? カイエ」


「その……ハルトのも美味しそうだね」


「カイエの方も美味そうじゃん。 ちょっとくれよ」


「うん! ほらっハルト。 あ~ん」


「……は?」


 カイエ、こいつは一体何をやっているんだ。 俺たちは男同士だぞ?


「どうしたの? ハルト。 ほらっ早く食べてよ」


 あぁ、こいつは素でやってるんだなって俺は思った。 素でやってるなら仕方がない。


 俺は空気を読める男だ。


 おと……男の娘……じゃない。 友人の頼みは叶えないとな、うん。


 無理やり納得した俺はカイエに差し出された氷菓子を口に入れる。


 カイエの氷菓子は濃厚な果実がソースになった事でより甘さが強まっているがしつこくなく、いくらでも口に入れたいと思えた。


「どう?」


「美味いな、ほらっこっちのも食べろよ」


「あ~ん……」


 カイエは小さい口を空けて雛の様に待っている。


 あっこれは俺に食べさせろという事なんだな。


 大丈夫だ、こいつは男……こいつは男……こいつは男……。


 心で念仏を唱えながら、カイエの口に白いソースのかかった氷菓子を口に入れる。


 俺の誘導が下手クソで、カイエの口の横から白いソースが垂れていく。


 くっ……静まれハルト。 こいつは男だ。


 そんな気持ちで大丈夫なのか?


 大丈夫だ、問題ない。


 ふと殺気を感じた俺は、顔を向けると、ミーナが鬼の様な相貌になって俺を睨んでいる。


 持っている箒はミシリと音と立てて、今にも握りつぶそうとしていた。


 俺はそんなミーナを見ないフリしてカイエに声をかける。


「どうだ? カイエ」


「うん! ハルトのも白くて甘く美味しいね!」


 言葉ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! と内心叫ばずにはいられないが、黙っておくことにした。


 だってさっきからミーナが殺気を飛ばしてくるからだ。


 あっミーナさん。 これはシャレでもなんでもないです。


「美味しかったなカイエ」


「ほんとだね。 やっぱ1人で食べるよりも、こうしてハルトと2人で食べると美味しいね」


 『誰かと一緒に食べると美味しいね』と言えばいいだろぉぉぉぉぉぉ!


 カイエは狙ってやってるんじゃないか? と思わなくもないが、彼はこういう男なのだ。


「そっそうだな……。 ほらっそろそろ次行こうぜ!」


 これ以上ここで話しているとミーナの堪忍袋は爆発すると思ったのだ。


 こいつもカイエファンクラブの会員なのだろう。


 間違いないと俺の感が告げている。


 俺はカイエを連れてさっさと店を出ることにした。


 大通りの商店区を歩いてふらっと行ったこと無い道具屋に入ったり、露天で食べ歩いたりするとあっという間に時間が過ぎる。


 俺とカイエは冒険者ギルド前に着く頃にはもう夕方だ。


 これからどうする? と話そうと思っていたらルージュとハーリィーに出会った。


「よっ2人とも」


「やぁルージュとハーリィー」


 俺とカイエが声をかけると、探し人を見つけたような顔をしている。


「カイエにハルト! ついに見つけたわ!」


「なっなんだ?」


 俺達は何かしたのか? 記憶にないんだが……。


「どうしたの? 2人ともそんなに慌てて」


「カイエ、リアさんが呼んでいたわよ」


「えぇ今すぐと言っていましたよ」


「そうなんだ。 2人ともありがとう! ごめんねハルト。 ちょっとリアさんが呼んでるみたいだから行くよ。 今日はありがとう!」


「こっちこそな。 またなカイエ!」


「うん、またねハルト!」


 去っていくカイエの背を見る俺とルージュとハーリィー。


 カイエの姿が見えなくなると、ルージュとハーリィーが俺の方を見てくる。


「さて、罪人ハルト……覚悟はできてるでしょうね……」


「あぁ……レティシア様やエルネストさんといった美人がいながらなんて罪深い……」


「は? ……は?」


 一体ルージュとハーリィーは何を言ってるんだ? と思っていたら、周囲に女性達が集まってきた。


 なんだなんだ? 俺にモテ期が来た……わけじゃないよな。


 いや、俺は分かってるぞ。


 これはアレだろ。


「会員No.113番から聞いたわ……」


 ほら当たった……。


「ひゃく……じゅうさん?」


 どれだけ会員がいるんだよ……とツッコミや野暮だなと思ったので口には出さない。


「ハルト……貴方はカイエとイチャイチャしていたようですね……」


「イチャ……イチャ……? はっまさか113番って……」


 俺が気がついたその時、群衆の中から1人の少女が出てきた。


 彼女はあの喫茶店で箒を握りつぶそうとした店員だったのだ。


 これで終わる訳ないよなと分かっていたよ、うん。


「そうよ! カイエファンクラブ会員No.113番とはこの私ミーナ! 貴方の罪を告発させてもらったわ!」


 鬼の様な顔をしてこちらを睨みつけるミーナ。


「ハルト……貴方はカイエ君と仲良く一緒に歩くならまだしも、お互いの氷菓子を『あ~ん』と食べさせ合い、更には……『ハルトのも白くて甘く美味しいね』だなんて……皆さん判決は!」


「ギルティ! ギルティ! ギルティ! あっ私はちょっと見てみたいけど……」


 最後の方だけちょっと違ってたような気がするんだけど……。


「覚悟してください……ハルトさん……」


「覚悟しなさい、ハルト。 私の魔法でキチンと丸焼きにしてあげるわ!」


「「「ギルティー!!」」」


 群衆達(カイエファンクラブ)は鬼の様な形相をして襲いかかってきた。


「うわぁぁぁぁぁぁ! なんでこうなったぁぁぁぁぁぁぁ!」


 この日、日が沈むまで俺は群衆達(カイエファンクラブ)に追いかけられるのであった。

以外とカイエ君のキャラ好きなんですよね。

もっと書かないといけない幕間あるんだけど、ちょっと久しぶりだから楽しい話し書きたくて……。




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感想・評価をいただけると作者は大変喜びます。


また、新作始めました。


『くぁwせdrftgyふじこlp』え? ちょっと待って。 俺のスキルが文字化けしてるんだけど!?

https://ncode.syosetu.com/n1746fr/


シリアスの無いコメディ?っぽい感じの異世界転生作品です。

良ければこちらもぜひ読んでください。

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