第16話 フードの男
作中最高最低のクソキャラが登場します。
胸糞あるかもしれないので、ご了承ください。
『フォレストクイーン』を倒した俺達はフードの男を追って洞窟の中へと進んでいく。
冷静では無い姉さんを説得し、気持ちを改めて洞窟の奥へとドンドン進んでいった。
奥へ進む度に俺達を待ち迎えるように魔物達が襲ってくるが、これを斬り伏せつつ進んでいくと、光が差し込む広い空洞を見つける。
広い空洞の中へ足を踏み入れた俺達を待ち構えていたのは、あのフードの男だった。
「やぁ、遅かったじゃないか。 あまりにも暇で暇で待ちくたびれたよ」
「お前……」
「ようこそ! 待っていたよスティグマの持ち主よ」
「追い詰めましたよ!」
俺も姉さんもエルも武器を構えて相対する。 決して油断は出来ない。 何故ならばこの男は不意を突いた姉さんの神速の剣を片手で止めたのだから。
「追い詰めた? クハハハハ! 面白い冗談だ。 それはそうと……楽しめたか?」
「楽しめた……?」
一体こいつは何を言ってるんだ?
「お前達に王を気取った犬や軍隊の真似事をした雑種に大きな雌犬の事だよ。 楽しかっただろ?」
『フォレストクイーン』に編隊を組んだ魔物の群れ、それに『フォレストロード』その全てがこいつの仕組んだ事かよ……。
「楽しかっただって? てめぇふざけんなよ!」
「お気に召さなかったか?」
一体こいつは真顔で何を驚いた顔をしているんだ?
「お気に召さなかったってお前……何のつもりでこんな事をした?」
「何のつもり? 特に理由は無いぞ」
「――は?」
特に理由が無くてこんな事をしたって?
「まぁ強いて言うなら……そうだな。 2回目の実験だよ」
「実験……? 2回目?」
「そうだ。 魔物を完全に制御する方法の実験だよ」
「魔物を制御するだって……?」
「あぁ、そうだ。 ――!? 思い出したぞ! そうだそうだ!」
「急に何を……」
「1回目の実験だったか。 全員死んだと思っていたのだが、スティグマの持ち主以外にも生き残っていたとはな。 『レティシア・ヴァレンシュタイン』お前はあの時の生き残りか」
「思い出してくれましたか……!」
姉さんの手を見ると強く握りすぎたのか、紅い血が手から滴っている。
「お前……姉さんに何をした……」
「何をしたってそりゃ実験だよ。 町一つを使ってね」
「……まさか!」
「魔物を制御するのはいいが、きちんと命令通りに動くか試してみないと実験にならないだろ? あの町にスティグマの持ち主が居ると分かってね。 実験するには丁度いいと思ったのだよ」
「お前……人の命をなんだと思ってるんだ!」
「人の命? まさか人の命が尊い物であるとか思ってるのなら図々しいにも程があるぞ」
「何が言いたいんだよ」
「人の命もお前達が先程まで倒した魔物の命も同じではないか?」
「それは……」
「私からすれば同じだよ。 人も魔物もお前達も俺も皆同じだ。 ――ずっと疑問に思っていたよ。 ヒトという種族は……いや冒険者と呼ばれる連中や過去に実在した『英雄』と呼ばれるお前みたいなスティグマの持ち主は一方的に魔物の命を狩り続ける。 それは少々不公平だと思わないか?」
「そうしないとヒトは生きていけないから。 仕方ないじゃないか!」
「仕方ない? 仕方ないで済まされては魔物が可愛そうだと思わないか?」
「……」
「だからこそ俺は魔物の側に立とうと思ったのさ! 一方的に魔物を狩り続ける敵対者になろうと!――というのはちょっとした建前であり冗談だ」
「――は?」
「キミと会話をするのが楽しくてツイね。 ちょっとしたジョークだよジョーク。 あぁでも勘違いしないでくれ。 魔物もお前達ヒトも皆同じ生命だと思ってるさ。 まぁそれに価値があるとは思わないけどね」
「てんめぇ……」
「お詫びに私の目的を教えるよ。 魔物を制御してまでの目的とは……ただのゲームだよ」
「ゲーム……?」
「あぁ、この世界はゲームみたいなものさ。 ゲームは対等であるから楽しめる。 つまり相手が一方的だとツマラナイだろ? ヒトが一方的に魔物を狩るだけの世界なんてツマラナイじゃないか。 変化は必要であり楽しむためには均衡が必要だと思うんだよ。 一方的な殺しなんて退屈で退屈で楽しくないからね」
「俺達に『フォレストロード』を差し向けたのもゲームだって?」
「あぁ。 丁度実験しようと適当な冒険者でも襲わせようと思ったのさ。 そしたら私がつい殺してしまったスティグマの持ち主だったんだ。 私は運命に感謝したよ」
「お前に殺された事なんて一度たりともねぇよ」
「あぁ! あぁ! その通りさ! こうしてキミが生きてくれていて本当に嬉しいよ。 あのままキミが死んでたらと思うと本当に気が狂いそうだった」
ただの狂人じゃないか。 そのまま気が狂って死んでくれればよかった。
「――なんでこのタイミングで現れた?」
「勿論キミに逢いたかったからさ!」
「魔物を駒のように俺達に差し向けたのは?」
「ゲームの開始にはとりあえず適当な駒を差し向けるだろ? キミなら私を見つけてくれると思ってね!」
この男の声色は喜色を帯びており、フードで隠れた表情は分からなくても、こいつが心の底から楽しそうにしているのだけは声で分かった。
「お前は本当に生命を何とも思ってないのか?」
「キミは道端で踏み潰してしまった虫を可愛そうに思うか? 私はそうは思わない。虫は所詮虫だ。 つまりはそういう事……外で戦ってる冒険者も、そこにいるエルフもキミの姉も、世界中の人間全ては私からすれば道端の虫程度の価値しかない。 その中でもキミだけは……スティグマの持ち主であるキミだけは私の特別だよ」
「――あ~分かった。 お前の気持ちはよ~く分かったよ」
「分かってくれたかい?」
本当に心の底からこいつの気持ちが分かった。
「お前がただのクソ野郎だって事はよ~く分かった。 もう死んどけよ」
――『アクセル』
最初から全力全開。 こいつは生きていては駄目な奴だ。 あまりの糞加減に頭が凄い冴えてくる。
異世界に来て、俺がこんなに殺意が芽生える相手に出会えるなんて思いもしなかったよクソッタレ。
こんなクソキャラ創ってごめんなさい!
本当にね、こいつクソでね、次話がもっとクソかもしれないです(事前予告)。
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