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第15話 洞窟の奥地へ

 『フォレストクイーン』との死闘。


 姉さんに足止めを頼まれた俺とエルは協力して『フォレストクイーン』を足止めする事に成功する。


 あの姿は姉さんの切り札だったのか、詠唱を終えた途端に剣から光の柱が伸びていく。 そんな光景を見ていた俺は姉さんが……いや、『レティシア・ヴァレンシュタイン』という女性が神話の戦乙女の様に魅えた。


 光の柱を燈した剣を振り下ろし、『フォレストクイーン』を飲み込むその光景を見た俺は。


「綺麗だ……」


 この状況で言うセリフでは無いと分かっていても、そう呟かざるを得なかった。


 凛々しく、格好よく頼もしいこの光景を見るのは一度目ではない。 そう、俺がこの世界に降り立ち、ゴブリンに殺られかけた時と同じだと思った。


 『あぁ……俺はやっぱりこの人に惚れているんだ』と心の中でいつの間にか自然と叫んでいた。


 光の奔流が飲み込み終えたその先には木々は勿論、『フォレストクイーン』は斬り飛ばされた腕だけを残し消滅していた。


 ふとエルの方へ顔を向けると、頬を赤らめて悦楽に浸っていた。


「おっおいエル……?」


 少し心配になって声をかけてみたのだが。


「……///」


 だめだこいつはもう手遅れのようだ。


 姉さんの方を見ると、剣を鞘に収めてこちらに顔を向けて。


「行きますよ、ハルト・エル」


 そう一言だけ声をかけた姉さんは先を急ぐように洞窟の中へと入っていく。 その顔は妄執に囚われているかの様子をしており、一体姉さんとあの男(フードの男)の間に何があったのか気が気でならなかった。







 場面は移り変わり、俺達は洞窟の中へどんどん進んでいく。


 その先を急ぐ姉さんが何時もと違う雰囲気をしていたので声をかけた。


「姉さん、先走りすぎだよ。 ここは敵の中なんだ。 もう少し慎重に動かないと……」


「そっそうですお姉さま! どんな罠が仕掛けられているか……」


「――逃がすわけには行かないのです。 何があっても……」


「そりゃ分かってるけどさ……」


 こんなに焦る姉さんは見た事無い。


「焦っても仕方ないじゃん。 一体姉さんとあの男の間に何があったのか分からないし聞くつもりもないけど……こんな姉さんは姉さんらしくないよ」


 この時姉さんは何を思ったのか俺は知る由もないけど、それでも俺の言葉で足を止めてくれた。


「――そうですね……すみません、ハルト・エル。 少し焦りすぎたようです」


「姉さん……」


「お姉さま……」


「二人共……その……手伝ってくれませんか?」


「「……」」


 姉さんの縋るような顔を見て俺は思わず。


「……ップハハ! ――あ~ごめん姉さん、急に笑って。 何で()()()()()()()()()聞くんだよ。 俺とエル……そして姉さんで『時の絆』だろ?」


「フフッ。 そうですよお姉さま。 ハルトの言う通り私達パーティーじゃないですか。 手伝うも何も当たり前の事ですよ」


「ハルト……エル……」


「あいつを止めよう、俺達『時の絆』で」


「ハルト! エル!」


「ちょ! 姉さん!」


「ひゃ! おっお姉さま!」


 なんと姉さんは両手で俺とエルの首に手を回してギュっと抱きついてきた。 姉さんからこう……無茶苦茶いい匂いがする。 っていうか待って顔が近い近い! すごい近い! まつげなっっっっっっが! 頬がプニプニする! いや、何考えてるんだ俺……うわ~駄目だ! ちょっとこれ以上考えられない。 っていうか俺今絶対に汗かいてるだろ。 臭うか? いや、臭うだろう。 うわ~姉さんに臭いとか言われたら俺は死んでしまいます。 心臓もバクバクしてるし、絶対気づかれてるよね? これうわ~駄目だ駄目だ駄目だ! 恥ずかしくてもう一度YOU DIEDしてしまいます!


 もうこの時間よ……永遠に……と考えたのも束の間、姉さんは目に溜まっていた雫を人差し指で拭い取り離れていった。


 ちらって横のエルを見ると。


「はわ……はわはわ……」


 『はわはわ』としか話さない人形に変わり果てていたのを見て、俺は少し冷静さを取り戻せた。


「それじゃあ行きましょうか、ハルト・エル」


 少し気持ちの整理がついたのかは分からないけど、いつもの笑顔をしてる姉さんを見て俺は少し安心した。


「うん、行こう!」


「はわ……はわはわ……」


 今だ『はわはわ』としか喋ってないけど、ちゃんと二足歩行出来てるみたいだしその内元に戻るだろう。


 気を取り直して俺と姉さんとはわわ星人(エル)は洞窟の中を進んでいく。 やっぱり早めに姉さんを説得できてよかった。 道中こちらを待ち構えるようにゴブリンやオークにフォレストウルフが襲ってくる。


「敵の数が多くなってきたね」


「そうね……でも数が多くなってきたという事は……」


「あのフード男が近くにいるって事ですね」


「みんな、急ごう!」


 向かってくる魔物を斬り伏せて走り抜けていく俺達は前方に光が差し込んでいるのが見えた。


「姉さんあそこ!」


「行きましょう」


 光が差し込んでいる場所へ行くと、広い空洞になっている。 円のように丸い形になっており、上を見上げると真上の天井には穴が空いており、そこから光が差し込んでいる。 他に通路もなさそうで行き止まりのようだ。


「ここは……」


「フォレストロードの寝屋かしら……?」


「ハル・お姉さま! 見てあそこ!」


 エルが指を指した方を見ると、丁度段差のあるところにフードの男が腰掛けているのを見つける。 手には一冊の本を持っており、時間を潰しているのが伺える。


 男はパタンと本を閉じて立ち上がりこちらへ向いて話しかけてきた。


「やぁ、遅かったじゃないか。 あまりにも暇で暇で待ちくたびれたよ」


「お前……」


「ようこそ! 待っていたよスティグマの持ち主よ」

焦りは禁物!


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