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第14話 森の女王と光の奔流の先

いつもよりちょっと長いです。

 俺達を待ち受けていたフードの男は姉さんと因縁がある様子だった。 姉さんは男に攻撃仕掛けるも、いとも簡単にあしらわれる。


 俺とエルも武器を構えて一緒に仕掛けようとしたその時、頭上から『フォレストクイーン』が降り立ってきた。


 フードの男は俺達に『フォレストクイーン』をけしかけて洞窟の奥へと去っていった。


『グルルルルルルルルル』


「こいつを倒さないと先へは進めそうにないよな……」


「ハル、あんたロードを倒した事あるんだから、弱点とか知らない?」


「んなもん知ってるわけねぇじゃん。 あの時は必死だったし、姉さんの機転のお陰ってのもあったからな」


「そんな……」


 エルは悲観な顔をするが、仕方がないじゃないか。 正直今でもこうして五体満足で生きてるのが奇跡だって思うし、もう一度同じ事をやれって言われてもできる気がしない。


 まぁそれでも……負ける気なんてないけどな。


 そんな俺と同じ気持ちなのか姉さんはエルに声をかける。


「でも私達『時の絆』は獣程度に敗れる程、その絆は柔じゃありませんよ。 そうでしょ? エル」


「お姉さま……」


「そうだぜ、それに俺もあの時より強くなってるし、今回はエルもいるんだ。この三人だったら誰にだって負ける気はしないさ」


「ハル……そうね……そうよね! 今回はこの私エルネスト・ハルヴィ様がいるんだから!」


「その調子だ。 んじゃ獣退治へと赴きますか」


 エルも姉さんも……そして俺も怯えた顔はしていない。 各々は武器を構えて戦闘準備は万全だ。


「行くぞ!」


 俺と姉さんは『フォレストクイーン』に向かって走り出す。 一人で戦っているわけではないのだ。 俺はアクセルは使わずに姉さんと歩調を合わせる。


 俺は姉さんと目を合わせるとお互いにうなずく。 これは姉さんが先に仕掛ける合図だ。


 姉さんは走りながら詠唱を開始する。


「『光の守護者よ、自愛の光で我が子らを包みたまえ』エンハンス・プロテクト!」


 姉さんの魔法が発動して、光が姉さんを包み込む。 そのまま走る速度を上げて『フォレストクイーン』の元へ駆け込む。


「はぁぁぁぁぁ!」


 剣を冗談に構えて袈裟斬りを仕掛ける。 顔を狙ったその斬撃を防ぐように『フォレストクイーン』は前足を持ち上げて庇おうとする。


 きれいな純白の体毛に覆われている前足が斬れ、その傷跡から赤い血が少し吹き出して白い体毛を染め上げる。


 『フォレストクイーン』は鬱陶しく思っているのか、そのまま傷をものともせずに前足を姉さんに振り下ろす。


 姉さんがその前足を盾で受け止めるのを見て俺はアクセルを使い『フォレストクイーン』にへ横から詰め寄る。


 その隙きだらけの横っ腹へ上段から真っ直ぐに振り下ろして斬りつけた。


 斬りつけた横っ腹の傷が少し深かったのか血が勢いよく吹き出して周囲を紅く染めていく。


『ギャウウウウウン』


 痛みに悶絶するがそこはクイーンと呼ばれている程の魔物なのか、横には倒れず踏ん張っている。


 俺の方に顔を向けてこちらに意識が向いたその時、そこに一本の矢が風を纏って『フォレストクイーン』の右目を貫こうと真っ直ぐ進んでいく。


 『フォレストクイーン』は俺に意識を向けていた為、飛翔物の存在に気づく事ができずに矢を受けてしまう。 その痛みにはさすがのクイーンも耐える事が出来なかったのか、巨体を横に倒して暴れている。


 俺と姉さんはそのまま畳み掛けようとしたのだが、『フォレストクイーン』は大きな雄叫びを上げてそれを阻もうとする。


 あまりにも大きい声量に俺と姉さんは近づけずに耳を塞いでしまう。 その間に『フォレストクイーン』は四肢に力を入れて女王に相応しい佇まいを整える。


 『フォレストクイーン』はそのまま魔法を唱えようとするのか、全身から魔力を放出して魔法陣を展開させる。


「これは……ロードと同じやつか!」


 俺は背中に纏っているマントを見るとグスタフの爺さんの言葉を思い出す。


『柔軟性があり、刃は通しにくい。 風の性質もある故に風魔法の耐性も備えておる』


 俺は背中を向けてマントで体を覆いエルに直ぐ様声をかける。


「エル! その背中のマントで体を守れ!」


 エルはその言葉でグスタフの爺さんの言葉を思い出したのか、俺と同じ様にマントで体を守るように体制を変える。


『クォォォォォォォォン!』


 大きな雄叫びと共に『フォレストクイーン』は展開した魔法を発動させる。


 発動された魔法は『フォレストロード』と違った物なのか『フォレストクイーン』の周囲から爆風と共に風の刃が周囲を吹き飛ばす。


「ぐぅっ……」


 『フォレストロード』のマントでなんとか耐えたのだが、このマントが無かったら絶対に危なかった。 本当にグスタフの爺さんに感謝だ。


 エルは後方にいた事とマントで防いでいたのもあり無事のようだ。 姉さんも事前に察知していたのか、盾で体を守っていた。


「さすがにクイーンといった所ですね……ですがロードと違って使う魔法は別のようで助かりました」


「そうだね、ロードが単体魔法ならクイーンは全体魔法って感じかな?」


「そうみたいですね。 しかし、このまま時間をかけるわけにはいきませんね……仕方ありません」


「何か策でもあるの?」


「えぇ、少し足止めしてもらえますか?」


「分かった。 足止め所か倒してしまってもいいだろ?」


「ふふっ任せましたよ」


「任せて!」


 後方にいるエルの方を見ると、会話を聴いていたのか顔を縦振って同意している。


「さて……いくか」


 ――アクセル!


 スティグマの能力を発動させて『フォレストクイーン』に詰め寄る。 剣を横に薙ぎ払い一閃させるが、クイーンは後方に下がって俺の攻撃を避ける。


 しかし横っ腹の傷があって動きが少し鈍っているようだ。 ここは勝負時だし前に詰めて攻撃を仕掛けてみるか。


 縦に斜めにと剣で斬りつけているのだが、前足の鋭い爪を器用に操ってこちらの斬撃を防いでくる。 さすがに鬱陶しいと思ったのか、それともクイーンの意地なのか、前足を振り下ろして反撃をしてきた。


 俺は左腕の小盾で『フォレストクイーン』の攻撃を防ぐ。 かなり重いのだが、『フォレストロード』と戦った時より強くなっているのか、それとも相手が傷を負っているからなのか、あいつと戦った時の攻撃程じゃない。 もちろんこの周辺の雑魚よりは強烈なのだが。


 俺が『フォレストクイーン』と攻防を繰り広げている間にエルが反対方向へと回り込んで複数の矢を撃っていく。


 さすがに二度目の不意を喰らう程落ちぶれていないのか、体を回転させて長い尾を使ってエルごと矢を吹き飛ばす。


「エル!」


「大丈夫よ、これぐらい!」


 姉さんの方をチラッと見ると剣を両手で上に持ち、目を瞑り集中しているようだ。 さすがの『フォレストクイーン』も放出される魔力に気づいたのか、姉さんに向かおうとするがそうはさせるわけにはいかない。


「行かせるわけないだろ!」


 直ぐ様アクセルで詰め寄って斬撃を繰り出す。 エルの奴も負けじと矢を撃っているのか幾つかの矢が体に刺さって悲鳴の声を上げる。


 俺よりも複数の矢を放つエルの方が鬱陶しく思ったのか、俺に背を向けてエルへ駆けようとする。


「余所見をする程余裕があるってわけか? ならその余裕を無くしてやる!”」


 背を向けると同時に俺に尾を振って吹き飛ばそうとしてきたが。


「それはもう見た!」


 ムチのように打ちつけようとする『フォレストクイーン』の尾に向けて全力で剣を振り上げる。 振り上げられたレクスシーヴァは俺に呼応したのか『フォレストクイーン』の皮も肉も骨も全てを断ち長い尾を斬り飛ばす。


 さすがの『フォレストクイーン』も体の一部を斬り飛ばされてしまい、大きな悲鳴を上げた。


『ギャウウウウウン』


 尾がなくなりバランスが崩れてしまったのか、ついにその巨体は動きを止めて横たえた。


 『フォレストクイーン』は俺を無視できなくなったのか、フラフラと立ち上がると同時に俺に向かって走り出した。


 避けようと考えたのだが、その巨体の大きさに厳しいと判断した俺は吹き飛ぶ覚悟で小盾を構える。


「ぐあっ!」


 さすがにあの巨体の突進による衝撃で体が宙へと浮き上がる。


 宙に浮いてると攻撃出来ないと思ったのか『フォレストクイーン』は追撃を試みようとするのだが……。


「そう来ると思ったよ!」


 空中で体制を整えた俺は頭の中に『フォレストロード』が使った風の刃を思い出す。


 剣の柄を強く握りしめてとある能力の名前を思い出す。 スティグマは呼応して光輝き、俺の中から魔力を吸い出していく。


 吸い出された魔力は剣の刃に集まり風を纏いて大きく唸りを上げた。


 両足で地に降り立った俺は一つの名を口にする。


「――エアリアルブレード!」


 振り上げた風の刃は暴風と為りて地面を削りながら一直線へと『フォレストクイーン』に向かっていく。


 前へと詰め寄り追撃を試みようとした『フォレストクイーン』は避ける事が叶わず、振り上げていた前足に直撃して爪先から肘の方まで縦に一直線に両断される。


『グギャアアアアアアアアアアアアア!』


 片腕を縦に両断された『フォレストクイーン』は、勢いよく横に転げ落ちてあまりの痛みに暴れ狂う。


 どうにか体制を立て直そうと試みようとも、片腕は両断され使えなくなり、長い尾も根本から斬り落とされてバランスが取れずに立つ事もままならない。


「姉さん!」


 動きが止まった事で姉さんへ声を掛けると、丁度準備が整ったのか瞑っていた目を開けて『フォレストクイーン』を見定める。


 天高く上げられた両腕に握られた剣からは、強い光りを放ち空を突き抜けんとする光の柱を伸ばしていく。


「『レティシア・ヴァレンシュタインの名において彼ノ者に終焉の輝きを燈さん! アウラ(新たなる)ノヴァ(終焉の)フィーニス(輝き)』!」


 詠唱を終えると共にその両腕を振り下ろす。 振り下ろされた剣は轟音を鳴らして光の奔流と共に『フォレストクイーン』へと向かい、木々諸共その巨体を飲み込んだ。


 光の奔流が通った先は一直線に地面が抉れ、木々は根本から薙ぎ払われおり、『フォレストクイーン』は斬り飛ばされた腕だけを残し消滅していた。

ようやく姉である『レティシア・ヴァレンシュタイン』を強いキャラとして書けたかなって思います。

さて、みんな大好きラテン語の登場です。

※ルビを11文字以上打てない関係で、本来の単語の和訳が違ってます。



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