第13話 来襲『森の女王』
森の奥地へと去っていったフードの人物を追って俺達『時の絆』はエヴァンズ達が作ってくれた道を走り抜けていく。
道中は何故か魔物の群れが現れないどころか、こちらを奥へ誘い込むように時折フードの人物が待っている。
「舐めやがって……」
「私達を誘っている……?」
「でもお姉さま、なんで私達なんでしょう?」
「さぁ……一つ分かる事はハルトを見ていた事ですね」
「ハル、あんた何かしたんじゃない?」
「こんな事件起こすような奴に知り合いもいないし余計な事する程暇じゃなかったよ」
にしても何であいつは俺を見ていたんだ?
考えても一向に答えは出ず、フードの人物を追うと開けた所に出た。
「ここは……フォレストロードの領域か?」
「見て、お姉さまにハルト!」
エルの指を指した方向へ向くと、洞窟らしき入り口にフードの人物は立っていた。
「あいつ……!」
俺達はフードの人物の元へ駆けると、今度は奥へ行かずに俺達を待ち迎えていた。
「追いついたぞ!」
ずっと黙ったままなのだろうか? 声をかけてみると、フードの人物はついにその口を開いた。
「――待っていたよ」
その声はとても低く、そして冷たい男の声をしていた。
「君を待っていたよスティグマの持ち主よ」
「――は?」
なんであいつは俺がスティグマを持っていると知っている? これを知っているのは姉さんとエルの二人だけだ。
確かに戦闘時に能力を使っているが、『戦神の矛』であるエヴァンズ達にも話した事はない。
「……スティグマ? 何の事だ?」
「ふふっ。 惚けなくてもいいさ。 私はよぉ~く君の事を知ってるのだから」
「こっちはお前みたいな怪しい奴知らねぇよ」
「おや? 記憶でも無くしたのかい? それともあの時の事を思い出したくないだけかな?」
「あの時……?」
「あぁ……その様子だと本当に無くしたようだね。 それとも本当に知らないのかな? 私がキミを殺した事だよ」
「――は? お前何言って……」
俺はこんな奴に殺された記憶なんて無い。 ていうかそもそも俺はこの世界の住人じゃない異世界人だ。
怪訝に思っていると、姉さんが突然一歩前に出る。
「姉さん?」
姉さんは身体を震えさせており、手には既に剣は鞘から抜けていて剣先はフードの男に向いていた。
「ようやく……ようやく見つけましたよ……」
「おや、キミみたいな可憐な人物に心当たりは無いのだが……」
「レティシア・ヴァレンシュタイン……その名を知りませんか?」
男は顎に手をやり考えてるようだ。
「ふ~む。 こんなに恨まれるとは……何かやったかな? 心当たりが……ハハハ! ありすぎてどれか分からないな」
笑いながら話すフードの男を見て姉さんは。
「貴方だけは……貴方だけは!」
地を蹴り上げてフードの男に向かっていく。
姉さんから溢れ出るその殺気を剣に込めているのだろうか。 その速度は今まで見た事が無い速度でまさしく神速と呼んでも可笑しくない速度だった。
明らかにフードの男は油断をしており、不意をついたその剣は確実に相手を捉えるだろうと思っていた。
しかし、その剣はフードの男を捉える前にピタリと止まる。
「姿に劣らず野蛮だな」
笑いながらも、右手の指だけでその剣を止めていた。
「は?」
その腕にどんな力があるのか、剣を受け止めたまま腕を乱暴に振るい剣ごと姉さんを投げ飛ばした。
「姉さん!」
俺とエルは姉さんに駆け寄って声をかける。
「姉さん、大丈夫か!?」
「お姉さま!」
「ぐっ……大丈夫です。 それよりも……それよりも!」
俺達はフードの男を睨みつける。 神速と言ってもいい姉さんのあの剣を受け止める所か指だけで止めるとか只者じゃない。
俺とエルも武器を構えていつでも迎撃できるように体制を整える。
「ははは! そう慌てる事は無い。 楽しみはまだもうちょっと待ってほしい」
「は? 何言ってんだてめぇ……逃げられると思うなよ」
誰だか知らないが、姉さんが余程恨んでる人物なんだろう。 こんな所で逃がすわけにはいかない。
男は逃げる素振りを見せず、俺達に再度声をかけてくる。
「私より先に君達と遊びたい者がいるようなんだ」
「は? 何を突然……」
すると突然日差しが暗くなり、上を見上げると何かが落ちてきた。
「きゃっ!」
地面が大きく揺れて地鳴りを起こす。 土煙が周囲に吹き荒れて俺達の前を防いでいく。
目や口に土が入らないように防いでいた小盾を顔から下げて、上から落ちてきた何かに目線を向ける。
落ちてきたその獣は白い毛に覆われており、その太い両足・両腕から鋭い爪が伸びており、口からは四本の太い牙が姿を現していて、二本の尾が左右に揺れて風を起こしている。
「なんだこいつ……」
「そんな……」
「何でこのタイミングで……」
フードの男はその獣の横に立ち並び声をかけてくる
「紹介しよう、彼女は『フォレストクイーン』。 フォレストロードの番にしてこの森の女王だ」
『フォレストクイーン』がその声に応えるように大きい雄叫びを上げる
『クォォォォォォォォォォン!』
「さて、私は日差しが暑いから洞窟の奥で涼んでいるようにするよ。 ここは任せたよ、『フォレストクイーン』」
『グルルルルルルルルル』
俺達の前を遮るように『フォレストクイーン』が立ち塞がってきた。
唐突のBOSS戦闘!
既視感がすごい!(二章ぶり)
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