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第10話 戦神の矛

 ギルドマスターから共同依頼を受けた俺達『時の絆』と『戦神の矛』はフォレストロードの領域である深部を目指して歩いてる所だ。


「そういえば自己紹介がまだだったよな。 改めて、俺が『戦神の矛』のリーダーをやってるエヴァンズだ。そしてこっちが――」


「エヴァンズのお守りをやってるリアだよ。 いつもウチのリーダーが世話になってるね」


 この人はリアさん。 『戦神の矛』のサブリーダーを務めている。 どんどん決めて進んでいくエヴァンズのブレーキ役でもあるパーティーに欠かせない人だ。


「おいおい、お守りってなんだよ」


「うるさい! あんたは黙ってな!」


「んだとこの野郎!」


 ギャーギャーと痴話喧嘩を初めた二人。 ずっと前から思ってたのだが、付き合ってたり? それとも夫婦だったりするのかな。


 そんな事を考えていたら。


「ごめんね、うちのリーダーとリアさんが。 僕はカイエ。 『戦神の矛』では斥候とか偵察といったパーティーのサポートを担当してるよ。 よろしくね」


 俺が女だったらキュン! とくるような爽やかな笑顔を向けて声をかけてくれたこの人は獣人のカイエさん。 犬人族と言われていて、頭に犬の耳とふさふさの尻尾が生えている。 気さくで優しく、爽やかイケメンでありギルド内で密かにファンクラブが作られている。 しかし、本人はその事を知らない。


「本当にうちのリーダーとサブリーダーは仲が良いよね。 あっ私はルージュで珍しくか弱い魔法使いよ。 よろしくね」


 彼女は『戦神の矛』で後衛火力を担当している。 火も風も水も土も何でもござれで多くの敵をその力で薙ぎ払う。 ちなみにカイエファンクラブの第1号だ。


「出ましたね、ルージュの『か弱い魔法使い』発言。 私は『戦神の矛』で回復とカイエと同じくサポートを担当していますハーリィーです。 よろしくお願いします」


 彼女は『戦神の矛』で回復を担当している。 傷の回復に状態異常の回復やパーティーの補助が得意だ。 ちなみにカイエファンクラブの第2号さん。


「ハーリィーこそ何が『カイエと同じくサポートを担当しています』よ」


「ごめんね騒がしいパーティーで。 でもみんな本当に仲良いんだよ」


 『だよね』とニッコリ笑いながら同意を促すカイエの言葉に、笑顔で仲良く応じているルージュとハーリィー。 しかし、俺は知っているのだ。 二人がカイエに見えないようお互いの背中を抓っている姿が。


「ハルトとレティシアさんは知ってるけど、そっちのエルフの娘は初めてだよね」


「はじめましてエルネスト・ハルヴィよ。 『時の絆』で斥候や偵察を担当しているわ。 弓が得意で今の所パーティー唯一の遠距離攻撃を担当しているわ」


「わぁ~! 僕と同じ斥候と偵察担当なんだね! よろしくね!」


「えっえぇ……よろしく……」


 エルが言葉を少し詰まらせるのも仕方ないのだ。 なんだってルージュとハーリィーがすごい形相で睨んでいるのだから。


「ほらっカイエいこ!」


「カイエ、行きますよ」


「わっ! ちょっと押さないで!」


 ルージュとハーリィーに押されながら前へ進んでいくカイエを見て俺は思うのだ。 こいつ、どう見てもハーレムラノベ主人公なんだよな……と。


 くっそ羨ましい……。


「ほらっ行きますよハルト」


「ハル、さっさと歩きなさいよ。 置いていくわよ」


「待ってよ二人共!」


 俺とカイエの扱いの違いは一体……。







 森の中は相も変わらず魔物に出会うことは無い。 未だに一戦も交えてないのだ。


 年の為にエルに索敵をしてもらいつつ、カイエに斥候として先行してもらっていたりするのだが状況は変わらず芳しくない。


 エルフであるエルは目と耳がヒトよりも非常に高く、カイエもエルと同じく耳が非常にいい。


 違いは何と言っても嗅覚。


 カイエは獣人かつその中で犬人族と呼ばれている種族らしい。 一番の特徴は鼻が非常にいい。 ほんの些細な違いも嗅ぎ分ける事ができるのだ。


 なので目・耳・鼻この三つを備えている俺達が索敵をして何も出てこないというのは異常すぎる。


「戻ったか、カイエ。 何かあったか?」


「いや、何も無いよ。 それどころか……魔物特有の臭いもしないよ」


「そうか……」


 エヴァンズもカイエからの報告を聞いて顔を顰めている。


「エルも索敵結果は……芳しくないようですね」


「はい……お役に立てずごめんなさい、お姉さま」


「エルのせいではありませんよ。 現在のこの森が異常なだけなのですから」


「――にしても、こんなに何も無いと警戒するのもバカバカしくなってくるな」


 一応俺も『気配察知』を使っているのだが特にこれといった反応は見られない。


「そう言うなハルト。 お前はまだ見たこと無いと思うが、中には隠れるのに特化した魔物だって居るんだ。 用心するに越したことはない」


「この森にそんなやつ出るのか?」


「出るわけ無いだろ。 ここには基本ゴブリンとオークとフォレストウルフしか出ねぇよ。 だが、現在のこの森は……」


「異常?」


「そうだ。 だからこそいつもより警戒を強めにした方がいいのさ。 命なんて簡単に失うんだからよ」


「エヴァンズ……」


エヴァンズのその瞳は少し悲しい目をしているような気がした。


「うっし! カイエが先行した所まで一気に進むぞ」


 エヴァンズの声と共に俺達は少し進行速度を上げて進むことにした。


 その後もカイエとエルに索敵と斥候をやってもらいつつ進むこと数刻、ついにフォレストロードの領域である中域に足を踏み入れた。


 カイエが耳をピクピクと動かして鼻をクンクンと何かを探るように嗅いでいる。


「どうした。 何か気配が見つかったか?」


「うん……こっちから少し魔物の気配がする」


 カイエが何か見つけたのだろうか。俺の鼻では相も変わらず何も臭わない。


「――エル、先行して少し見てきてもらっていいですか」


「分かりましたお姉さま。 カイエ、臭いのある方向へ連れて行ってくれない?」


「分かったよ。 こっちだ」


 カイエとエルの二人は臭いがするらしい方向へ先行して進んでいった。 残った俺達は警戒を強めて待機していると、カイエとエルが険しい顔をして戻ってきた。


「居たわ、魔物が」


「何体いるか分かるか?」


「エルフを舐めないでよね。 20体、しかもゴブリンだけじゃないわ」


「ゴブリンだけじゃないって……まさかフォレストウルフか?」


「えぇ、そのまさかよ。 しかもオークまでいるわ」


「――は?」


 まてまて、魔物って多種族で群れない所か、こいつら争ってるんじゃなかったのかよ。 しかもゴブリンとフォレストウルフだけじゃなくてオークまで……。


「何間抜け面してるのよ……まぁ気持ちは分かるわ」


 俺が呆気にとられているとエヴァンズが真剣な顔をして口を開く。


「カイエ、確かだな?」


「うん。 ゴブリンにオーク・フォレストウルフの臭いもしたよ。 間違いないよ」


「前代未聞だぜ全く……エルネスト。 それぞれの数は分かるか?」


「えぇ。 ゴブリンが3体・オークとフォレストウルフが1体の構成で編隊を組んで歩いていて、それが4つ」


「合計20っていうわけか……」


「魔物が編隊を組むってマジか……それってお前達『時の絆』が出会った奴らに――」


「えぇ、似ていますね。 あの時はゴブリンのみでしたが、編隊を組んでいましたし……」


「あっあと……私とカイエには気づいていない様子だったのですが、まっすぐこちらに向かって歩いてきています」


「エルとカイエじゃなくこちらにですか?」


「はい……そうなんですお姉さま」


「――何だかそれって()()()()()()()()()()()()()()()だよな」


 俺の発言を聞いたエヴァンズがニヤリと不気味な笑顔をして口を開く。


「なるほど、俺達の事をずっと見ていたって事か……舐めてくれた事をしてくれるじゃねぇか。 どこの誰かわかんねぇが遊んでるつもりならその顔をぶん殴ってやる」


「そうですね、エヴァンズ。 どこの誰かは分かりませんが、たかが20体程度で私達を倒せると思っているのなら、その考えを改めてもらいましょう」


「行くぞおめぇら。 仕事の開始だ」

カイエ君のラノベ主人公力高すぎ(´・ω・`)


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