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第9話 調査結果と先輩冒険者

 ロータスの森の調査をしてから二日目、特にこれといって進展もないまま時間だけが過ぎていき、ギルド側の調査結果を待つばかりだった。


 そして調査を始めてから三日目、ついに事態は動き出しす。


 ギルドから呼び出しの連絡を受けたのだ。


 俺達『時の絆』の一行は冒険者ギルドへ向かうと、執務室のある二階に通される。


 部屋の中には俺達以外にも別のパーティーがいた。


「ようハルト」


「エヴァンズ!」


 こいつはエヴァンズと言って『戦神の矛』というパーティーを組んでいる気さくな男だ。 歳は離れてるけど、この世界での友人だと俺は勝手に思ってる。


 そんなエヴァンズが一人ではなく、他のパーティーメンバーと一緒にいるという事は……。


「まさかギルドマスターが言っていた別のパーティーってエヴァンズ達の事か?」


「おうよ! この街に危機となるかもしれない案件だぜ。 俺達が動かないでどうするよ」


 このエヴァンズの自信満々な発言は慢心しているわけでも自惚れているわけでもない。 文字通りカリスの街に危機が迫る案件が発生しった時、この街唯一のCランクパーティーである『戦神の矛』が動くのだ。


 メンバーは全員Dランクで構成されているベテランだ。 本当ならこの街にいるパーティーではないのだが、駆け出し冒険者の支援をしたりギルド自体の底上げをしている尊敬できる男で、このカリスの冒険者ギルドの兄貴分として尊敬されている。


 中堅冒険者であるエヴァンズ達が、何故こんな所で活動しているのか気になった俺は、何故もっと稼げる所や強くなれる場所に行かないのか聞いた事があるのだが、その時の会話が確か……。







『確かに冒険者は金と強さを求める奴ばっかだ。 そこは否定しねぇ。 だからこそ慢心したり人を見下す下らない連中が多い。 知ってるか?』


『あぁ、冒険者の仕事をメインにする奴は荒くれ者ばかりだって』


『そうだ。 もちろん分かってくれる人もいるが、素行の悪い奴は目立つ。 そうなると全体が悪く言われて冒険者全体のイメージ下がるし舐められる。 そうなると……』


『依頼内容も……』


『あぁ、依頼者からも舐められて報酬が下がる。 俺のパーティーみたいなそこそこの奴らは依頼を選び好みできるが、成り立ての新米みたいな奴らは無理だ。 だから俺は……俺達『戦神の矛』はそんな奴らを助けてやりてぇし、イメージを良くしたい』


『だからここで冒険者をやってると?』


『ああ! まっチヤホヤされてぇってのもあるけどな……へへ。 幻滅したか?』


『そんな事ねぇよ。 誰だって欲ぐらいあるさ。 エヴァンズは冒険者のイメージを良くしたり、新米冒険者をサポートしてくれるじゃん。 あの時……俺が初めて冒険者ギルドへ来た時に声かけられて嬉しかったんだぜ? 俺含めて新米冒険者はみんなあんたを尊敬してるさ』


『ハルト……』


『だからこれからも俺達冒険者の見本になってくれよ』


『お前……俺に惚れてんのかよ。 そういうのは女に言えよ。 ――なんだ? お前まさかそっち系……』


『ふざけんなよテメェ!』


『ふははははは!』







 まぁそんなわけで、エヴァンズはいい奴である。 だが俺をホモ扱いした事は許さん。


「さて、お前達に集まってもらったのは調査の進展があったからだ」


「ほぼ確実だろうと思うのだが、フォレストウルフの領域がかなり怪しい。 ヴァレンシュタイン、お前達『時の絆』が調査に言った時はフォレストウルフを見かけたか?」


「いえ、見かけてないですね」


「では『戦神の矛』はどうだ?」


「いや、我々も見てないですね……なるほど」


「ギルドと衛兵の方ではゴブリンとオークの領域を調査したのだが、通常時と然程変わらなかった。 いや、少し数が減ったか? といった所だ。 もちろんフォレストウルフは見かけてない。 さすがにこれは異常だ」


「えぇ、確かに……」


「もしフォレストウルフがいないとなると、縄張り争いをしてるゴブリンとオークが黙っていないだろう。 しかし、フォレストウルフの領域に近付こうとすらしない」


「しかし、私達は連携のとれているゴブリンの群れに出会いましたが……」


「そのゴブリンの群れだがな……ゴブリンの縄張りにもオークの縄張りにも出会う事は無かった。 もう少し時間をかければ、もしかしたら出会うかもしれないが……フォレストウルフの所出現したのは偶然か?」


「それは……」


「しかもだ。 お前達『時の絆』が持ち帰った黒い水晶。 未だこれの正体がわからないが、確実に分かる事は、アレが()()()であり、人の手で造られたものだ。 決して自然物ではない」


「――という事は、今回の一連の騒動は何者かによる仕業って事で?」


「あぁ、その可能性が高い。 フォレストロードが森の浅い所に出てきた所まで繋がるかどうかは分からんが、ここまで状況的に怪しいのだ。 フォレストウルフの縄張り、いやフォレストロードの領域に何かしらあるだろうと睨んでいる。 そこで……」


「俺達って事ですか?」


「あぁ、お前達『戦神の矛』は勿論フォレストロードを打ち倒した『時の絆』と協力してフォレストロードの住処まで調査に行ってほしい。 相手の戦力が多すぎて難しい場合は勿論一度引き返してもらって構わない。 後日改めて編成した上で討伐隊を編成する」


「了解した。 『戦神の矛』はフォレストロードの領域へ向かうとしよう」


「はい、私達『時の絆』も『戦神の矛』と協力して調査に向かいましょう」


「こちらは引き続きゴブリンとオークの縄張りの調査と黒水晶を調べていく。 頼んだぞ、お前達」


 こうして俺達『時の絆』は初めてとなる『戦神の矛』との共同依頼を受ける事になった。

エヴァンズみたいな男性キャラ好きなんだよなぁ……。


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