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第7話 初日の調査って何も結果が出ないのがお約束だと思うんだけど

 木々生い茂っているこの森に俺達『時の絆』はまた足を踏み入れた。


 この森の名は『ロータスの森』。 まだ俺と姉さんの二人だけのパーティーだった時に足を踏み入れ、そしてフォレストロードと戦った場所でもある。


 快晴の空の元、木々の間から光が差し込むこの風景は幻想的だが、周囲一体には魔物と呼ばれる殺戮者が多数生息している危険地帯だ。


 俺達はエルを先頭に立たせて前方の警戒と索敵を、姉さんが真ん中に陣取る事で不意の中もサポートする。 俺は最後尾で後方を警戒する陣形で俺達『時の絆』は森の中を進んでいる。


 エルは風の精霊と相性が良いらしく、種族の特性なのか目と耳がヒトよりも良い。 さらに精霊術という精霊を使った術で索敵を補助したり、攻撃や補助に転用したりと様々な事ができる。


 それ故に森の中はエルフの独壇場と言われている。 実際俺の『気配察知』よりも数倍は優れている。 エルが入った途端にお払い箱になってしまったがこれから成長していくと思う……するよね?


 森の中を歩いて数刻、相変わらず静かなものだ。


「……静かすぎる」


 静かに警告を発したこのペチャパイ美少女は『エルネスト・ハルヴィ』と呼ばれる元ソロ冒険者であり『時の絆』の新人で俺と姉さんからはエルと呼ばれている。


 新人であるのだが先輩である俺には酷く厳しく、姉さんには甘々……どころか自分から甘えていく百合少女だ。


 エルは俺の方へ振り向いて。


「……なんだよ」


「また馬鹿な事考えてるよね?」


「カンガエテナイヨ」


「はぁ……緊張感無いんだから」


 何故こうも俺が馬鹿な事を考えてるのがわかるのだろうか。 姉さん、ため息つかないで弟をフォローしてくれてもいいんだよ。


「っで何が静かすぎるんだ? この森はこんなもんじゃないのか?」


「いいえハルト。 確かにこの森は異常に静かですね」


 エルの意見に思う事があったのか、姉さんも少し警戒を強めたようだ。


「そうですねお姉さま。 確かに森は静だけどこんなに生物の気配が無いのはありえないわ」


「そうなのか?」


 まぁ確かに前回来た時はあちこちみかけたし、動物なんかも見かけたな。 まだ森に入って数刻しか経ってないけど、今の所生物は見当たらないのだ。


「前回俺達がフォレストロードに出会ったし、ゴブリンとかオーク含めて、他の動物もみんな警戒して奥に逃げてるんじゃないか?」


「確かにね。 でもよく周囲の地面を見てほしいの。 奥地に逃げてるなら足跡ぐらいは残っていてもおかしくないわ。 でもそんな形跡が一つも見当たらないのよ」


 確かによくよく周囲の地面を観察しても、足跡の形跡は見つからない。


「確かにそう考えると異常だな。 ここが人工的に造られてるならまだしも……」


「自然にできた森でこんな事あるわけないわ」


「闇雲に歩いても仕方ないな……」


「以前私とハルトがフォレストロードと戦った所まで行ってみますか?」


「そうだね、行ってみようか」


「はい、お姉さま」


 さらに奥地へと進んでいき、フォレストロードと戦った所に出た俺達。


 周囲は戦場の様に荒れており、フォレストロードが我が物顔で周囲を陵辱されていたのが垣間見える。


「なんかこう改めて見るとすごい荒れていて、なんか戦場みたいだな」


「本当によく倒せたわね。 『スティグマ』ってやつのお陰なんでしょ?」


「あぁ、こいつ(スティグマ)のお陰でなんとか倒せる事ができたし、何か一つでも足りなかったら俺も姉さんも今この場にいないと思う」


「……本当に生きててよかった」


「おっ心配してくれるんだ?」


「ちっ違うわよ! ハルじゃなくてお姉さまの事よ!」


「ほらっ二人共サボらないで仕事しなさい」


「は~い」


「ごめんなさい、お姉さま」


無駄話もやめて、何か異変がないか調査を進めるのだがこれといって進展もないまま時が過ぎていく。


「姉さん、もう少し奥へ進まない?」


「それ以上踏み入れるとフォレストロードの生息地に入ってしまいますよ?」


「今ならエルもいる事だし、慎重に行けばヤバくなる前に撤退できると思うんだけど、どうかな?」


「ハルの言う通りですよ。 お姉さま、私に任せてください!」


 フンス! と鼻息も出しており、エルもやる気になってるようだ。


「――わかりました。 もう少し奥へ進みましょうか。 ですがこの先はフォレストロードの生息地です。 危険になりましたらすぐ撤退しますよ」


「わかったよ」


「はい、お姉さま」


 更に森の奥地へと慎重に進んでいく。 相変わらず俺の『危険察知』も、エルの索敵にも相変わらず何も引っかからないのが逆に異様だった。


「さすがにここまで何も来ないと俺でも異常事態だとわかるよ」


「そうですね、森に入ってから一度も戦闘が始まっていませんし……エル、まだ何も索敵に引っかかりませんよね?」


「はい、そうで――ん?」


「どうした?」


「静かに」


 エルは目を瞑り、精神を集中させている。


「一つ……二つ……三つ……ゴブリンがこちらに真っ直ぐ向かってきています」


「数は?」


「六体……でも本当に真っ直ぐ向かってきてる。 ゴブリンじゃあこの距離だとこっちにいると分からないはずなのに……」


「たまたま俺達がいると分かったとか?」


「馬鹿、こっちはなるべく音を立てないように歩いているし距離もあるのよ。 それなのに六体ものゴブリンが真っ直ぐこちらに走ってくるって異常だわ」


「二人共、ただのゴブリンだと思って油断しないように」


 姉さんの声に警戒を強め、エルは弓を取り出して構えており、俺も剣を鞘から引き抜いて構える。


 草木の陰に隠れながら、ゴブリンが視野に入るまで静かに待つ。


「エル、成功するとは思いませんが奇襲をしてもらってもいいですか」


「はい、お姉さまお任せください」


 ゴブリンが俺達の視野に入ったその時、少し離れた木の上に昇っているエルは弓を大きく引き、矢を放った。


 放った矢は真っ直ぐ飛んでいき、一体の額に突き刺さりそのまま崩れ落ちた。


 ゴブリン達は意外な方向から矢が飛んてきたのに驚くが、すぐに落ち着き矢の飛んできた方向へと走っていく。


「こちらに俺達がいると分かっても、誰が何処にいるかまでは分からなかった……?」


「それでもゴブリンはゴブリンです。 ハルト行きますよ」


 俺と姉さんはエルの方向へと走っているゴブリンの群れへと走っていき横から突き崩す。


 ゴブリンは驚いたような顔をしたままこちらの行動を止める術は無かった。 レクスシーヴァを一閃してゴブリン1体の首を跳ねる。


 残り四体。


 姉さんはゴブリンの首を剣で突き刺した。 突き刺されたゴブリンは鼻と口から緑の血を吹き出し、ゴポゴポと血に飲まれて堕ちていった。


 これで残り三体。


 このままいけるか? と思ったのだが、リーダー格なのだろうか、一体のゴブリンが『ゴブッ!』と叫んで後方に下がり距離をとる。


「やっぱりこのゴブリンは普通じゃない!」


 確実に連携が取れている動きだった。


 しかし。


 後方に飛んだ所で一体にゴブリンのこめかみに矢が深く突き刺さり崩れていく。


 その隙をついて俺と姉さんは残り二体のゴブリンを攻撃する。


 姉さんは左のゴブリンを、俺は中央にいたリーダー格のゴブリンへと向かう。


 リーダー格のゴブリンは腕を振り上げてこちらにその刃を振り下ろしてくる。


 ゴブリンにしては早い。 早いが……見てからでも避けれるスピードだ。 戦闘ってこんなんだっけ?


 俺は体を横に向けて相手の攻撃を避けると、すぐさまレクスシーヴァを振り上げて相手の頭に振り下ろした。 振り下ろされたレクスシーヴァはそのまま下へ下へと突き進み、ゴブリンの体を真っ二つにする。


「終わったかな」


 エルは木から飛び降りてこちらに駆けてくる。


「もういないみたい」


「そっか……にしてもここってフォレストウルフの生息地だよな?」


「えぇ、確かにここはフォレストウルフの生息地であり縄張りのはずです。 そんな所にゴブリンの群れが徘徊すると、すぐにフォレストウルフが見つけて食い殺していますよ」


「しかも今回のゴブリン……」


「私が矢で撃った後、慌てる素振りもせずにすぐにこっちへ向かってきた」


「しかもリーダー格っぽいゴブリンがいて、統率がとれてるしな……」


「もうすぐ日暮れになりますね。 今日の所は一旦街へ戻りましょう」


 姉さんの一言で武器を収めて戻ろうとするが、真っ二つにしたゴブリンの方を見ると心の臓付近に真っ二つに裂けた黒い水晶の様な物があった。


「なんだこれ?」


「行きますよ、ハルト」


「うん、わかった」


 俺はその水晶を懐に仕舞い込んでこの場を後にした。

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