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第9話 エピローグ

 治療院に入るや否や可愛いくセクシーな女性に人生初めての愛の告白?をされたのだが、会った事……ないよね?


「何が『ずっとお慕い申しておりました』ですか。 今会ったばかりではありませんか」


 やっぱ会ったばかりだよね。


「そんな細かい事を気にしてるから、いつまで経っても貴方は結婚できないのですわ。 愛に時間は関係ありませんわ」


「何が『愛に時間は関係ありませんわ』ですか。 単に貴方が惚れやすいだけではありませんか。 結婚してないのは貴方もでしょう」


「わたくしは悪くありませんわ。 殿方の方が寄り付かないだけで……それよりも早くご紹介してもらえないかしら」


 寄り付かないのって、こういう行動が原因なのでは……? と真理を突き止めたような気がするが、これは言わないほうがいいだろう。


「この子はハルトと言って、今パーティーを組んでる私の『弟』よ」


「弟……? 貴方の弟って確か……」


 クレアさんはクレシュの事知ってるのか。 俺だけ知らないのでちょっと疎外感。


「クレア、今は『弟』がいる。 それでいいじゃないですか」


「ふふ。 そうですわね。 貴方がそう言うならそれで……」


 二人の間で何か納得した感があるのだが、俺としてはまだ踏み込めないので少しじれったい。


「それはそうと、ここ通してもらえない? 見ての通り私達傷だらけですから」


「まぁ! わたくしったらなんてこと。 ハルト様、こちらへ……」


 と案内されたのだが……。


「こら! 医療室はそっちじゃないでしょう!」


「んもうレティシアさんったら、本当に冗談も通じないんですから」


「貴方……先ほどのは絶対に冗談じゃないですよね?」


「……。 さぁこちらになりますわ」


 と姉さんとクレアさんは仲の良い姉妹の様な言葉の応酬を繰り広げている。


「本当に二人は仲がいいんだね」


「それは違いますよハルト。 昔一緒にいた時間が多いだけですよ」


「そうですわ。 レティシアさんとは一緒にいた時間が長かっただけで、それだけですわ」


 それを仲が良いと言うのだが、これは言わないほうがいいだろう。 それにしても本当に二人って仲が良いんだな。 こういう関係みてるとあいつ等を少し思い出してしまう。


「私と似たようなセリフを吐かないでいただけないですか?」


「それはこちらのセリフですわ。 レティシアさんがわたくしを真似てるんじゃありませんか」


「「……」」


 とお互いにらみ合いを続けていたが、通路を通り抜けると医療室だと思う部屋の前についた。


「入ってくださいまし。 先生は今ここを離れてらっしゃいますので、わたくしが傷を観ますわ」


 とクレアさんに部屋の中へ案内される。 部屋の中も外観と同じく白で統一されており、掃除も行き届いており清潔感がある。 窓から光が差し込み、植木鉢から生えている緑が生き生きとしている。


「お二人方、まずはこちらへお掛けになってくださいまし」


 二人仲良く椅子に腰かける俺達。


「まずは見た目傷の多いレティシアさんから」


 クレアさんはそう言うと姉さんの手を取って目を瞑る。

 

 神にで祈るようなその姿を少し神々しく感じた。


 ゆっくりと目を開けたクレアさんは。


「レティシアさん、貴方……魔力が空っぽじゃありませんか。 だから傷だらけのままこちらに来たんですね。 それにこれは……新しいソールが体を巡回している? 貴方は一体何と出くわしましたの?」


「フォレストロードと出会いまして」


「えっ!? 貴方よく生きてますわね。 どこまで奥地に行かれましたの?」


「それが……」


 とあの森での出来事を話す俺達。


「――そんなことが。 でも変ですわね、フォレストロードとあろう存在が人の領域に近い所にいるだなんて」


「えぇ、私も変だと思ってまして……」


「――まぁ私達が考えても仕方ないですわね」


「そうね」


「では傷を塞ぎますわ」


 クレアさんは目を瞑ると姉さんを包み込むように魔法陣が現れた。


「ヒール!」


 ヒールを唱える終わると、姉さんの体には最初から無かったように傷がみるみる塞がっていった。


「終わりましたわ。 分かってるとは思いますが、流れた血までは戻っておりませんから今日はもう安静にするといいですわ」


「えぇ、助かったわクレア」


「それじゃあハルト様、お召し物を脱いでいただけますか?」


「えっ脱がないといけないの?」


「そんなわけないでしょう、クレアも冗談を言ってないでさっさと治療してもらえますか?」


「はいはい、ちょっとした冗談じゃないですか。 小言が多い小姑は嫌われますわよ」


「誰が小姑ですか。 斬られたいのですか?」


 殺気を出す姉さんに当てられ、クレアさんは両の手の平を上にして降参をした。


「それではハルト様、失礼します」


 と言って俺の手を握って目を瞑るクレアさん。 少し険しい顔をしたまま姉さんに向かって。


「レティシアさん、貴方ハルト様になんて無茶をさせたのですか? 両手両足の中がズタボロじゃありませんか。 よくここまで動けましたね。 一体何をしたらここまで……」


「それは……」


「違うんだクレアさん。 俺が弱かったから……だから俺……」


「……はぁ。 フォレストロードとの戦いで何があったかは聞きませんが、これ以上は無茶をしすぎないようにしてくださいまし。 そうでないと身も心も擦り減って無くなってしまいますわ」


「どっ努力します」


「えぇ、努力してくださいまし。 貴方が居なくなってしまったら、今度こそレティシアさんも、そしてわたくしも……」


「クレア」


「――えぇ、分かっていますわ。 ただこれだけは言わせてくださいまし。 レティシアさんも、そしてわたくしも貴方をすごく心配しておりますのよ」


「クレアさんも?」


「えぇ、それに言ったではないですか。 『ずっとお慕い申しておりました』と」


 クレアさんは片目を瞑り、こちらに笑顔を向けてくれたその顔を見た時、俺の心の蔵が今までに無いぐらいドクンドクンと音が鳴り響いてる。 顔も絶対に紅いと思うしうわっ!滅茶苦茶は恥ずかしい。


「あぁ! なんて顔をされますの! そんな顔をされては……んぅ♡ んはぁ……」


 この人は本当に自分の欲望に忠実だな。 ドキドキした俺の純粋な気持ちを返してほしい。 これは本当に気のせいかもしれない。


「クレア!」


「えぇ、えぇわかっておりますわレティシアさん」


 そう言いながらクレアさんは魔法を詠唱する。


「《 癒したるは我が風よ、清らかな水となりて彼ノ者を癒したまえ 》 ヒール!」


 現れた魔法陣は俺の体を包み込み、俺の体を癒していく。 さっきからずっと痛かった両腕と両足は、痛みが消えたどころか、まるで新品に入れ替えた様に軽い。


「ありがとうございますクレアさん! まるで新品に入れ替えた様に軽いです」


「ふふ。 どういたしまして。 わたくしは仕事をしただけですわ」


「それでも本当にありがとうございますクレアさん!」


「……本当にそういう所……ゴニョゴニョ」


「えっ?」


「いえ、何でもありませんわ。 ハルト様も腕や足の中の傷を治しただけですので、今日はご自愛くださいませ」


「わかりました。 一つ聞きたいんですけど」


「何かしら?」


「俺と姉さんとではヒールを使った時の……ええと詠唱? と言えば良いんでしょうか。 それがあったりなかったりしたので気になって」


「魔法には詠唱魔法と無詠唱魔法がありますわ。 無詠唱は使う魔法名を言うだけで発動できますが、人にもよりますが効果は詠唱魔法の大体三分の一から半分までしか効力を発揮しません。 逆に詠唱魔法は魔法名以外にも詠唱句を付ける事で本来の威力を発揮します。 といっても本来の威力も本人次第なんですけど」


「へ~。 勉強になります! 丁寧にありがとうございます」


「いえいえ、どういたしまして。 あっ話は変わりますが、ハルト様の体内に大量のソールが巡回しています。 多分明日は色々と厳しくなると思いますのでご注意くださいまし」


「? 何のことかよくわからないですけど心配してくれてありがとうございます」


「ふふっ。 明日が楽しみですわね」


「えぇ、そうですね」


 二人して明日一体何があるんだろう。 結局クレアさんは話してくれず、姉さんも宿に帰っても話してくれなかった。


 この時の俺は知る由も無かった。


「うぎゃーーー! 痛い痛い!」


 こんな事が起きるなら、姉さんもクレアさんも言ってくれたらよかったのに。


 そう、極端に多くのソールを一度に取ると、非常に重い全身筋肉痛のような痛みが全身に走る事になると。


 ベッドから動けない俺を見ながらニコニコと笑顔で甲斐甲斐しく世話を焼く姉さんとクレアさんが俺の部屋にいるのは言うまでもない。

これで第2章完結です。

第3章はしばしお待ち下さいませ。

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