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私たちは青春に飢えている ~茅ヶ崎ハッピーデイズ!~  作者: おじぃ
卒業旅行!

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来てみて良かった飯坂温泉!

 だいたい毎日ハッピーな沙希ちゃんと、オフトゥン(しばしば)けんか祭りのまどかちゃんが寝静まって、静寂が訪れた。


 まどかちゃんに面と向かってこんなこと言ったら怒られそう……。


 灯りを落とした部屋は、障子戸から淡い街あかりが透過して、勝ち気な女の子のキャラクターパネルの影が浮かんでいる。


 静かで小京都の情緒が織り成す飯坂温泉とも、明日でお別れ。次はいつ来れるかな?


 遥か神奈川県、茅ヶ崎育ちの私にとって、飯坂温泉は縁もゆかりもなかった土地。だけど、どこかふるさとのような安心感がある。


 街に人通りが少なくて、生活に必要なコンビニや商店、銀行も一通り揃っていて、地元の人々が和気藹々としていて、このお部屋はオタクの私にはマイルームのような居心地で。


 地元住民の人柄が良い、人通りが少なくごちゃごちゃしていない、駅が近くにあり生活に必要なお店が揃っていて便利、こういう諸条件が揃って、安心感が生まれる。それがこの土地、飯坂なんじゃないかなと、私は感じた。


 そして、窓際に立つパネル、壁に張られたタオル、そして、私が抱いている抱き枕に描かれている全国各地のキャラクター。これは、私にとって夢のかたちだったりする。


 漫画家になるか、イラストレーターになるか、小説家になるか。まだ決めかねているけれど、自分が手がけた作品を世に流通させて、お客さまに喜んでもらうのが、私の夢。

 

 今の私も、このオタク部屋で喜んでいる客。


 そういうものを、提供する側になりたい。


 さて、私もゆっくり眠りたいところだけど、すっかり目が覚めちゃった。


 深夜0時、まだちょっとだけなら、お風呂に入ってもいいかな。ほりえや旅館のチェックアウトは10時半だから、朝はのんびりできる。


 タオルを持って、そっと戸をスライドさせ、部屋を出た。突き当たって左へ一歩。回れ右で階段を数段下ればそこがお風呂場。このオタク部屋は、お風呂にいちばん近いお部屋みたい。


 さっきは3人で大風呂に入ったので、今度は小風呂にしよう。


 脱衣所に鍵をかけ、黄色い浴衣をふぁさっと脱いで、浴室に入った。床も浴槽もちょこんとしたかわいいお風呂だけど、ふたりまでならゆったり入れると思う。


「熱い……」


 熱いぜ飯坂の湯。さっき入ったときより熱い気がする。熱くて肩まで浸かれないので、ふくらはぎだけ浸かってちゃぽちゃぽする。


 物音がしない、静かな時間。貸し切りお風呂。


 茅ヶ崎だと夜中でもコトンコトンと遠くで貨物列車が走る音が聞こえてくるけど、ここでは列車の音も車の音もしない、ちょろちょろとかけ流しのお湯が浴槽に落ちてゆく音だけが聞こえる。


 美肌効果があるアルカリ単純泉の湯を、とろりとろりと肩や腕、顔にかける。


「は~あ……」


 幸せ……。


 全身に溜まった淀みが、脳天から抜けてゆく……。


 飯坂の人たちは、これを毎日味わってるんだ。


 飯坂の古いお家にはお風呂がなく、入浴は旅館の日帰り入浴や、ほりえや旅館のお隣のほかにもそこかしこにある共同浴場で行うのだそう。


 来てみて良かった、温泉暮らしの飯坂温泉。


 疲れたらまた、ここに来よう。

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