飯坂温泉14!
ほりえや旅館に戻って、温泉に浸かって黄色い浴衣を着て、全国各地の女の子のキャラクターで彩られたサブカルルームに戻った。
この所謂オタク部屋にも慣れて、愛着さえ湧いてきた。なんというか、ここにいるキャラクターたちはいやらしさがなくて、素朴で愛嬌のある子ばかりだから、私みたいにオタクじゃなくても馴染めるのだと思う。
内側ベッドに横たわるつぐピヨは、もうすっかり我が家のようにくつろいでいる。つぐピヨの家のお部屋はオタク部屋ではないらしいけど、なんだか落ち着くみたい。窓側のベッドにはまどかちゃんが横たわっている。
私はベッドの横に引いた布団に横たわった。ベッド2台、布団1枚で川の字になって天井を仰いでいる。
「あー、なんかいいね、のんびりしてて、福島」
「茅ヶ崎もだいぶのんびりしてるけどな」
「きっと福島でも茅ヶ崎でも、暮らしていると忙しく感じるんだろうね」
「それだつぐピヨ。暮らすと忙しい。旅だとのんびり」
「あと、メンバーな。私らの中にはせっかちなヤツがいないから、あちこちのスポットを一つひとつじっくり見て回って、猪苗代湖畔の風を感じて、飯坂の風流を魂に刻んだ。この6人だからできた旅だろう」
「まどかちゃん、詩人だね」
「まあね」
「でも、ほんとだね。修学旅行で団体行動をしてると、早く次行こうって急かされたり、あと、夜はスマホで動画とか音楽とか流す人がいてなかなか眠れなかったり、正直、あんまりいい思い出がないなあ」
「わかりみが深いよつぐピヨ」
「私は中学の修学旅行で大いびきかいてるヤツの口にメン○スコーラやってやったぜ」
「見てたけど、あれは殺人未遂だからね」
「私もやってやれば良かった……」
つぐピヨがドスの効いた声で何かをボソッと言ったけど、聞こえなかった。聞こえなかったよ。




