磐越西線の車窓から
主に私とばあちゃんがおしゃべりをしながら食事をし、ゆったりした時間が流れていった。
店の人とすぐ仲良くなれるこの感じは、茅ヶ崎とよく似ていて温かい。こういう人とのふれあいも、旅の楽しみだね。
店を出た私たちは、モダンで小綺麗な野口英世記念館で野口英世や黄熱病などについて学び、世界のガラス館でガラスのコップを買って茅ヶ崎の家に送り、地ビール館でお菓子類を買って夕方、野口英世記念館の前からバスで猪苗代駅に戻り、16時51分発の磐越西線に乗った。
終点の郡山駅で新幹線に、一駅北海道寄りの福島駅で飯坂線に乗り継ぎ2時間かけて飯坂温泉に戻る。
野口英世も、ガラス職人も、打ち込むことがある人生なんだよなぁ。
ボックス席の窓側からすっかり日が落ちて暗くなった車窓を、左手で頬杖をついてぼんやり眺めているフルーツの香りがする夢のような女子。街明かりはなく、都会の電車と見劣りしない小綺麗で比較的新しい電車は、田園風景やアップダウンのある山岳地帯を閃光となって駆けてゆく。
ガラス館ではガラス張りの窓越しに、ガラス製品をつくるところを見学できる。吹管に息を吹き込んで、熱せられオレンジになったガラスを膨らませ、形状を整えてゆく。それは正に、職人芸だった。鍛練を重ね、技を磨かなければできない芸当。
私には、何ができるのか。
長距離走を極める陸、長距離走に打ち込んで挫折を味わったまどかちゃん、博識な自由電子くん、文章を書いたり読んだりするのが好きだけど、将来作家になるのを見据えて体力もつけようと陸上競技に挑んだつぐピヨ、武道は、まあいいや。
それで私は、何かに挑戦したかな。何か目指すものは見つかってないな。ただなんとなく、日々を生きてるな。これはこれで楽しいけど、このままでいいのかな。人によってはいいかもしれないし、人によっては良くないかもしれない。
私はどっちだ。
電車は山を下り、市街地に出て終点、郡山駅の一駅手前、郡山冨田駅に停まった。高校生がわんさか乗り込んできて、電車は混雑。この辺りはホームセンターや住宅があり、そこそこ明るい。
私と同じくらいのこの学生たちは、何か目指すものがあるのかな、なんて思いもしたけど、誰かと比べても仕方ない。この学生の群れの中に総理大臣になりたい人がいたり、会社に入って早く出世したい人がいたとしても、私はそういう人生は望んでいない。
自分はどうしたいのか、どんな人生を送りたいのか。
たぶん、好きなことに夢中になって、目指すものがあって、高みへと挑む人生を送りたい。
だから、研究者としての人生を送った野口英世や、ガラス製品を綺麗に形成する職人の姿を見て、コンプレックスを感じたんだ。
それと同時に、スローでリラックスした人生も送りたい。どっちも手にしたいんだ、私は。




