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私たちは青春に飢えている ~茅ヶ崎ハッピーデイズ!~  作者: おじぃ
卒業旅行!

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猪苗代湖畔!

 会津磐梯山をバックに右も左も見渡す限り田んぼが広がる、曇り空の畦道。澄んだ風を浴びながら歩くと、国道49号線に突き当たった。そこには押しボタン式の歩行者用信号機があり、自由電子くんが自動車の往来がなくなったタイミングでボタンを押すと、信号はすぐ青に変わった。自由電子くんは歩行者用信号機のボタンを押すとき、自動車がいなくなってから押す。この前、茅ヶ崎の若松町わかまつちょうにあるファミレスに行ったときもそうだった。信号機を設置している意味合いとしては疑問だが、彼は自動車の流れを止めるのに罪悪感があるという。


 横断歩道を渡ると、道沿いには民家が3軒ある。民家と民家の間の脇道の前にバス停を見つけた。


「おっ、バス停だ!」


 と、沙希が小さなまるいバス停のポールに駆け寄ると、すぐにずーんと表情が暗くなった。


「次のバスまで45分ある」


「そんなもんだろうね」


 駅でバスの時刻を確認したときは1時間以上の待ち時間が生じていたが、ここ、仁蔵にぞうバス停まで歩いて45分に縮まった。


 周囲に店舗や公園は見当たらず(自由電子くんによると少し先に小さなホームセンターがあるらしい)、私たちは自由電子くんの誘導により砂利の脇道に入り左折。民家の前を通るとすぐ静かに流れる川に突き当たり、道はそれに沿って右へ曲がっている。


 川の向こうには田んぼが広がっていて、私たちの右手にも田んぼがずっと続いている。果てが見えない田んぼは人生で初めて見たと思う。


 川の流れる方向に目を遣ると、湖が見えた。猪苗代湖、日本で3番目に大きいカルデラ湖だ。かつて会津磐梯山の噴火によって火山岩が降り、この湖ができたといつしか学校の授業で習った記憶がある。


「なかなか景色がきれいなところですなあ! 座るところはないけど、ここらでちょっと休憩してかない?」


 沙希が提案した。私、陸、武道はまだまだ歩けそうなきがするけど、自由電子くんとつぐみは疲労が溜まってきたところだろう。


 せっかくなので景色の良いところをと、私たちは自由電子くんに促されてコンクリートの橋を渡り、50メートルほど砂利道を湖寄りに進んだ。


「おお、湖が開けて見える!」


 沙希が言う通り、橋を渡る前の地点ではガマなどの背が高い草が生い茂り、湖はよく見えなかった。しかしこの地点は湖岸からずっと向こうの岸までを見渡せる。対岸も住宅地の背後にずっと背の低い山が連なっている。


 湖にはあまり馴染みがないけど、池や沼と違って面積が広く、海のようにざぶざぶと小さな波が立っている。加えてきょうは曇っているから、雲間から差す陽光はきっと、晴れている日より神秘的。


 私たちは沈黙して、曇天の湖水風を浴びていた。


 未だ謎の多い彼だけど、こういう景色を見て、まだまだ私の知らない場所に足を運んで、今日に至るんだ。そりゃ、そこらの人間には簡単に解き明かせないわけだ。


「ふーう」


 それにしても、空気がおいしい。


「ふーう」


 私に釣られて沙希も深呼吸した。続いてつぐみも、自由電子くんも、武道も、陸も。


「な、なんだよみんな真似して」


「そりゃ、こんな雄大な自然に身を置いたら深呼吸したくなるってもんでしょ!」


「いやあ、しかしすげえな、湖ってのもよお。なんだか血が騒ぐぞ」


「俺はここを走りたくなった」


 橋の前に突き当たったところで砂利道とアスファルトで舗装された道が並行していた。陸が言うように、私も走りたい気持ちがわかる。


「走っちゃう?」


 なので私も陸に乗った。


「どうぞどうぞどうぞ」


 すると沙希、自由電子くん、つぐみ、武道が某定番コントのくだりを真似て、右手を斜め下へ伸ばした。どうやら走りたくないようだ。


「マジか、走るかまどか?」


「走りたいけど、道がわかんない」


「道なりに5キロくらい行けば目的地周辺ですけど、4キロくらい先に見晴台があるので不安であればそこで待っていてもらえれば。そこなら道を逸れなければ迷う心配はありません」


 と自由電子くん。


「そっか、じゃあ、走っていい?」


 私は自由電子くんと、陸と交際している沙希に確認した。


「はい、楽しんできてください」


「行ってら! わたしゃ後からノコノコ行くよ」

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