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私たちは青春に飢えている ~茅ヶ崎ハッピーデイズ!~  作者: おじぃ
卒業旅行!

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やってきました猪苗代2!

 いつも最後部にいる自由電子くんが先頭を歩く珍しい隊列で、私たちは道のり推定7キロのドライブインを目指す。その後ろに私と沙希、つぐみ、のトライアングル、最後部に陸と武道。


 駅前ロータリから左の道を進み、空き地を横目に最初の交差点を左折。しばらく直進して、また左折。保育園を左手に線路に向かって進む。砂利道でないのが意外と言っては失礼だけど、道路はずいぶん前に舗装されたようで、アスファルトがくたびれている。


 休耕田きゅうこうでんの中に立つ踏切道の警報器と、まっすぐ伸びるローカル単線。


「これ、なんて読むの? ひゃくめぬき?」


 沙希が警報器の支柱の前に立つ踏切の名が記された看板を見て言った。


百目貫どうめき踏切ですね」


「ほんとだ」


 私は支柱の上に掲げられたボードを見て言った。『ここは、ばんえつさい線 45番 どうめき踏切 です』と記されている。敢えてひらがなで表記しているのは、子どもや沙希みたいな人のためだろう。ここは起点の郡山こおりやま駅から37.005キロメートル地点で、目の前には37キロ地点を示すキロポストが立っている。


「この線路って、茅ヶ崎に続いてるのかな」


 好奇心旺盛な沙希からは疑問が次々と湧き上がってくる。


「続いてますよ。起点の郡山駅は茅ヶ崎の延長線上にあります」


 茅ヶ崎を通る東海道本線と、郡山を通る東北本線は東京駅で接続している。


「郡山って、さっき新幹線から乗り換えたところだよね。じゃあ、あれは東北本線だから、福島駅を通って飯坂温泉にもつなかってるんだ」


「はい、飯坂線は鉄道会社が違うので線路は移りますが」


 自由電子くんはこんな調子で淡々と沙希の疑問を解消してゆく。


「ほへえ、線路はどこまでも続いてるんだね!」


「そう思うと、なんだかロマンチックだね。海辺の茅ヶ崎から東京のビル群を抜けて、高原の湖畔の町まで続いてるなんて」


「おお、つぐピヨロマンチスト! いやあ、この線路、いいですなあ、茅ヶ崎はすぐ電車来るし人通り多いから踏切で立ち止まったらだめだけど、ここは電車も人もあんまり来ない!」


 沙希は踏切の中央部に立って線路や周囲の田園風景をスマホで撮影している。


「茅ヶ崎の線路は駅ビルの屋上から富士山を背景に撮ると映えるよね」


「つぐピヨわかってる! あそこいいよね! 南国情緒漂うガーデンから臨む富士山! 茅ヶ崎も良くて、福島もいい!」


「それぞれの土地の良さだな。俺の住んでるところは茅ヶ崎の南側よりはここに近い景色だが」


「武道は萩園はぎぞのだっけ?」


「おう、ここまで広くはないが、田畑が広がってて景色がいいぞ」


 私たちの背後で武道と陸がしゃべっている。通う学校の異なる二人は、そろそろ打ち解けただろうか。


 踏切を渡って目の前の高速道路のガードをくぐると、再び田園風景になった。線路も高速道路もないから、とにかく広い。前方に見える住宅までは少なくとも5百メートルはある。右前方には小さな墓地が見える。


「自由電子くんは、ここをひとりで歩いたの?」


 前を歩く彼に訊いた。


「はい。いつか皆さんに見せたかった景色の一つなので、今回は良かったです」


「そっか、見せたかったんだ、私たちに。いい景色だよね。連れてきてもらえて良かったよ」


 私にだけ見せたいんじゃなくて、みんなにも見せたいというのが、自由電子くんの好きなところのひとつ。私にだけやさしいんじゃなくて、みんなにやさしい彼が好き。なかなか口には出せないけど。

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