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私たちは青春に飢えている ~茅ヶ崎ハッピーデイズ!~  作者: おじぃ
卒業旅行!

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やってきました猪苗代!

「やってきました千円札の町、猪苗代いなわしろ!」


野口のぐち英世ひでよ故郷ふるさとね」


 12時半、きょうは飯坂温泉から電車を乗り継いで会津あいづ地方の猪苗代まで遊びに来た。福島県は海側から順に浜通り、仲通り、会津の3つの地方に分かれている。駅舎を出ると目の前はロータリーになっていて、右側にタクシーが2台停まっている。路線バスも出ているようで、ポールが3つ立っている。老若男女の観光客数組は宿泊施設の送迎バスに乗り込むか、路線バスの時刻を調べていて、タクシーに乗る人の姿は見られない。


 閉じていると思われる店舗が並び、左奥には会津磐梯山あいづばんだいさんが威風堂々とそびえている。スキー場として開発されているため、山肌の大部分は剥げている。


 飯坂温泉より少し肌寒い、晴れ時々くもりの微妙な天気の中でも沙希はハイテンション。私もこのくらいハイになれたら、たまにシャウトしなくても気分が晴れるだろうか。


 もちろん、沙希にも空元気のときがあるのは承知だけど。


「おやおやおやおや、次のバスまで1時間以上ありますぞ」


 沙希が駅舎を出て右側のバス停ポールに掲示された時刻表を見て言った。これから向かう観光施設や食事処がある場所に行くバスは、2時間に1本しかないようだ。


「あそこまでなら、歩いたほうが早いですね」


 自由電子くんがボソリと言った。この子、ほんと茅ヶ崎以外の地理にも詳しい。私の頼れる相棒だ。


「ど、どのくらい、あるのかな」


 距離が長そうな予感がしているの丸わかりなつぐみが不安げに言った。


「7キロくらいですね」


「7キロだと、東海岸から江ノ島くらいだね」


 武道を除く私たち5人が住む茅ヶ崎の東海岸地区から江ノ島までは約7キロ。同じ地区にある学校から江ノ島を往復ジョグしてきた私たちなら走っても行ける距離だが、つぐみは他校なうえに長距離走が苦手。


「そ、そうなんだ、うん、私、頑張ってみようかな」


「疲れたら俺が肩車するから大丈夫だ!」


「ほんと? ありがとう、ふふっ」


 つぐみと武道のペアは知性の差から相性は大丈夫か心配していたが、武道は人柄が良く、つぐみは(例外はあるが)基本朗らかで互いを補い合っているから、案外無理なくやって行けるのかもしれない。


「陸は歩ける?」


 沙希がニヤつきながら訊いた。


「歩けないわけないだろ。走っても行ける」


「そっか、私は走れないから陸が先に行っていろいろ下見しといてよ」


「道がわからん」


「あ、そっか、じゃあ自由電子くんといっしょに……って、あれ?」


 自由電子くんがあからさまに沙希から視線を逸らし、斜め下の地を凝視している。


「沙希、ゆっくり歩くからこそ見える景色もあるよ」


 私は自由電子くんを庇うつもりでキザなことを言った。


「おお! さすがまどかちゃん! そうだね! みんなでゆっくり歩こう!」


 沙希は納得したものの、猪苗代を知らない私はこの先にどんな景色が待ち受けているのかを知らない。だからちょっと、子どものころに茅ヶ崎市内だけど知らない路地に入ってみたときのような冒険心が湧き出てきて楽しみだ。当時以来のワクワク感がある。

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