アナルキラーショッカー!
「よーう姉ちゃんたち、良かったらいっしょに遊ばない?」
パラソルを立てたビーチベッドを三人分並べて私、まどかちゃん、つぐみちゃんがそれぞれ寝転んでいると、なにやらナンパされた。美女がゴロゴロしてるもんね、そりゃナンパしたくなるわ。
でも三人ともサングラスをかけている(つぐみちゃんには私のを貸した)からかナンパ主に関心がないからか、彼奴の姿が視界に入らない。
ビーチベッドに寝るという行為自体が落ち着かないつぐみちゃんは、ナンパされる前からずっとオドオド。
「あ、あの、その……」
「お、清純そうな可愛い姉ちゃんじゃねぇの。それに引き替えなんだそこのシカトこいてるいかにも湘南なクソメスビッチは」
「ああ!? あ、なんだ……」
クソメスビッチと言われ気に障ったまどかちゃんが食ってかかろうとしたけど、なぜか安堵したよう。何に安堵したのか気になった私はサングラスを額に上げて正面に立つナンパ主を見上げた。
「なんだ、まみちゃんか。ほんとにアナルキラーショッカー来たかと思ったじゃん」
私たちの前に現れたのは、まどかちゃんと同じく黒いビキニに白い麻のシャツ(リネンシャツ)を羽織った担任のまみちゃん。地元の人間がわざわざ水着姿で海水浴場をうろつくなんて、男漁りにでも来たのかな。私たちも地元の人間だけど。
「アナルキラーショッカー? イイイイイイッ! ってヤツか?」
急に「イイイイイイッ!」と、甲高い声を上げたまみちゃん。
「ん?」
何言ってんのこの人。
「バイクに乗ったバッタのヒーローの敵だろ?」
まみちゃんのネタをわかりかねた私をまどかちゃんがフォロー。
「あ、なるほど」
合点承知。バッタの仮面を被ったライダーさんの敵か。
「あ、なるほど、って、駄洒落か? オヤジギャグか?」
「まみちゃんだってオヤジ世代のネタ振ってきたじゃん」
「うるさいなぁ。バッタはいまでも日曜朝に放送してるぞ。それにあんま下品なこと言うな。教育者として対応に困るだろ」
「教育者がクソメスビッチとか言うなし」
「私は教育者である前に人間だ。そして減給されまくっている。相応の処分を受けているから安心しろ」
「へいへい」
こういう人でも生きていける世の中なら、私も将来なんとかなりそうな気がしてくる。
「それで、あれか? ツインテールの姉ちゃんは、沙希の世話役か? 私は沙希の担任をやってる門沢まみ子っていうんだ。いつもフルーツの香りがする夢のような女子がお世話になってます」
まみちゃんは太ももに手を添えて、つぐみちゃんに深々とお辞儀をした。
「あ、いえいえそんなっ、小日向つぐみと申します。私のほうこそ沙希ちゃんにはいつも良くしてもらっているので……」
あぁ、つぐみちゃんいい子。もううちのお嫁に来ちゃいなよ。




