行列のできる店、自家製麺屋登夢道2(完全新作エピソード)
うん、美味しい。
レンゲでスープをすくって、一口飲んだ。
朱色のスープの中に浮かぶ、つやつやした一口サイズの絹ごし豆腐。なめらかなのどごしで食べやすい。みずみずしく茹でられた定番のもやしとキャベツも健在。
では、いよいよ麺に。
うわ、改めて見ても、やっぱり真っ赤だ。鷹の爪、山椒、辛味噌。
恐るおそる、スープが絡んだ自家製太麺を口に運ぶ。
つるっ、つるつるっ。
あ、意外と大丈夫だ。
いや、めっちゃ辛いんだけど、大丈夫な味。
もっちもちの太麺に絡む、辛味噌スープ。コクがあって深みのある味わいなのに、山椒の効果で辛味はさっぱり。額から汗が噴き出すけど、これならずるずるいける。レンゲでちびちびスープをすすりながら、順調に食が進んでゆく。
ここで大将に百円玉を手渡し、ライスを追加。これがまたよく合う。つるつるずっしりした麺とは対照的に、パラパラしたライスにスープがよく混ざり、後を引く。
さすが、辛いもの好きな大将だ。美味しい辛味を熟知している。
なお、食べ始めてからここまで、水を3杯おかわりしている。浄水器を通した水は、適度に冷えてのど越しなめらか。
隣では自由電子くんが特製らーめんをすすりながら、ほんわかしている。
「美味しい?」
幸せそうなので、つい話しかけた。
「はい」
二人同時に、麺をすする。
さて、そろそろ箸休めのチャーシュー。
厚めにカットされた炙りチャーシューは、適度に硬く、適度にやわらかい。
噛むほどに旨味が滲み出てきて、自ずと箸を置いて噛み締めている自分がいる。
あぁ、私、ラーメン食べてるなぁ。
チャーシューの幅は10センチほどと一般的なサイズだけど、これだけで2分くらいは味わっていられる。
次はメンマに箸を伸ばした。
美味い。大人の味。
長めにカットされた艶やかなメンマ。みりんとダシ醤油に浸け込んだほんのわずかな苦味と、しっかり染みたダシの旨味。さっぱりした風味なのにしっかり主張して、尚且つスープと喧嘩しない。飽きのこない味だ。
「ふぅ、ごちそうさまでした」
食べ終わった。スープまで飲み干した。鷹の爪ひとつ残さず食べ切った。
山椒辛味噌らーめん。普段はあまり辛いものを食べない私だけど、食べて良かった。そう思える一杯だ。




