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私たちは青春に飢えている ~茅ヶ崎ハッピーデイズ!~  作者: おじぃ
高校3年4月

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茅ヶ崎を今よりいい街に(一部加筆エピソード)

「訊く前に少しは考えてほしいが、沙希は歩きスマホとか、マナーの悪いヤツとは付き合いたくないんだろ?」


「うん」


「ていうことはだ、沙希が求めてるのは見ず知らずの他人にも気配りができるヤツってことだ」


「うん、そうだね。身内にだけ優しい人はいっぱいいるけど、そういう人って見ていて気持ち悪い。列に一人だけで並んで、後から仲間を割り込ませたり、あの独特の内輪感っていうのかな、なんかすごくやだ」


「あぁ、よくあるな。私なんか目の前でやられたら普通に摘まみ出すけどな。そいつらとよく喧嘩になる」


「学校の先生とは思えない行動だね」


 まどかちゃんの突っかかる癖と同じくこれはこれで問題とも思うけど、気持ちはよくわかる。手を出さず、逆上を恐れて注意もせず我慢している私はこうして日々ストレスを溜め込んでいる。


 溜め込ませる側は、それを都合よく利用している。


「まぁな。だが、世の中には暴力的なヤツも腐るほどいるから、マナーを守らないと酷い目に遭う覚悟もしなきゃいけない。逮捕なんざ怖くないヤツも腐るほどいるからな」


「そうだね、世の中の不条理に報復するために無差別殺人とか、犯罪に走る人もいる」


「そうさ。だから沙希みたいにちゃんとルールとかマナーを守るヤツは、正義感が災いして取り返しのつかないことに及ぼうとしてるヤツを知らぬ間に救ってるんだよ。他人に不快感を与えないってのは、それだけで犯罪抑止力になる」


「さすが私だね。夢のような世の中に近付ける模範的JK」


「ちょっとイカレた節も見受けられるが、まぁそうだな。沙希みたいなヤツが相手に妥協せず、子どもを産んで、思いやりのある子に育てる、子どもを産まなくてもそういう仲間とつるむ。マナーを守るだけじゃなくて、弱ってるヤツに手を差し伸べられるくらいになれば、この茅ヶ崎くらいなら、今よりずっといい街にできるんじゃないか?」


「茅ヶ崎を今よりいい街に、か」


「そうだ。茅ヶ崎では長年自転車の交通違反が大問題になってて、それを改善しようと雄三通りでは店に交通安全を呼びかけるイラストを描いたりしてるだろ?」


 雄三通り。茅ヶ崎駅から海岸を結ぶ通り。沿道にミュージシャン、加山かやま雄三ゆうぞうの家があったことに由来。


 駅前で人通りが多いうえに、自動車も引っ切り無しに行き交う雄三通り。なのに歩道と車道の間に隔たりがなく、路側帯が狭い。そのせいかなんなのか歩行者や自転車の飛び出しが多く、ドライバーは常にヒヤヒヤ。いつも乗っている神奈中バスはすごく慎重に走行している。


 雄三通りに描かれているイラストには、その危険な道を安全で彩り豊かにしたいという街の人たちの願いか込められている。描いているのはプロのイラストレーター。まみちゃんとカメの同級生らしい。


「やってるね。茅ヶ崎は絵とか音楽とかエンターテインメントと結び付けた取り組みが盛んだよね」


「あぁ、色んな取り組みがあるが、あれは全部市民がハッピーに暮らすためのもんだ。住んでてハッピーだろ?」


「イエス、ベリベリハッピー!」


「そうさ、だから沙希の思ってることも、最終的にはハッピーにつながるんだよ。だから間違ってない。むしろいいことだ。いいことだから、悪いヤツがそれを潰そうとする。人生とはすなわち、悪に抗う能力を身に付けるステージなのさ」


 ドラマとか漫画でも、主人公が良いことをして、それを抵抗勢力に阻まれ、苦労の果てに栄光を手にする展開は鉄板。


「言われてみればそうかもね、うん、そうだ、ハッピーになりたいんだよ。なのにたくさんの人がどんどん不幸に引きずり込もうとするからモヤモヤしてるんだよ!」


「自信持てた?」


「うん、さすが先生だね」


「まぁな」


 まみちゃんは「フッ」と渋く笑って見せた。なにこの人イケメン。胸が熱いわ。


 信念を持っていることでも、それに自信を持てなくなるときがある。そんなとき、誰かに同意してもらえると、とりわけ先生や先輩、親など目上の人に同意してもらえると、それだけで気持ちが楽になる。自信を持って生きられる。それをいま、実感した。

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