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私たちは青春に飢えている ~茅ヶ崎ハッピーデイズ!~  作者: おじぃ
なつやすみ

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田舎の昼のサイレン

 ウゥーーーーーーーーーーーー。


「お、これが噂の田舎の昼のサイレン。初めて聴いたかも」


 食堂を出て、ホテルジュラクを横目に閑静な住宅地とも商店街ともいえる花岡町はなおかちょうの道路を駅方面へのんびり歩いていると、辺り一帯にいつしかテレビで聴いた空襲警報のようなサイレンが鳴り響いた。反射的に空を見上げた私は、街の向こうに広がる森を認識した。


「時計を持たないで農作業してる人もいるし、あると便利なんだろうね」


「ふむふむなるほど。茅ヶ崎でも夕方の音楽は健在だしね」


 茅ヶ崎市では夏季は『海、その愛』、それ以外は『赤とんぼ』が流れる。いずれも地元ゆかりの楽曲。


 あまり遅くなるとラッシュアワーに直撃するため、今回は早めに茅ヶ崎へ帰ることにした。いまから帰っても東京駅到着はラッシュアワーギリギリの16時ころになる見立て。首都圏では電車の混雑が徐々に激しくなる時間帯。東京駅からの乗車でも、始発駅ではないためグリーン車でさえ二人並んでの着席は困難になる。


 飯坂電車のドアブザーは今回もなぜか切なくて、飯坂の地にまた来たいと思わせる。


 ノスタルジックなロングシートの通勤電車に揺られ、河川や住宅地を眺めながらぼんやり過ごす。


「そういえば沙希ちゃん」


「ん? 何か思い出したね巡ちゃん」


「海水浴、してなくない?」


「してないね」


「しないの?」


「予定になかった」


「え。湘南の夏といえば海水浴と海の家でかき氷とかラーメンでしょ」


「ふむふむ。とすると、猪苗代の人は毎年湖水浴したり、海の家的な建物に入ってソースカツ丼を食べたりするのかい?」


「私はしない。ほかの人は知らんけど」


「そんな感じで私にも海水浴の予定はなかった」


「そう言われると納得せざるを得ないですな」


「巡ちゃん、水着ある?」


「スク水なら。いや、あれだよ!? サイズ合うかわからないから、テラモとかブリックスとかで選ぶという楽しみがあってねもごもご」


 口ごもる巡ちゃん。主に自身のプロポーションと特殊性癖に関して私から疑義を抱かれる懸念が混在したのだろう。


「ブリックスはまだオープンしてないけど、テラモ行きますか」

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