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私たちは青春に飢えている ~茅ヶ崎ハッピーデイズ!~  作者: おじぃ
茅ヶ崎の道の駅

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247/277

道の駅混沌劇場

「あー、えー、あー……」


 駅舎内に入り、左、右、左と交互に見遣る巡ちゃん。


「どしたん?」


「左はお野菜の陳列、右は欧米っぽいアイスクリーム屋さん」


「それが?」


「日本、欧米、日本」


 1秒ごとに出国と帰国を繰り返している。


「右のアイスクリーム屋さん、欧米っぽい雰囲気だけど甘沼あまぬまの牧場で生産された牛乳100パーセント使用だよ」


 甘沼。かつてラーメン店の登夢道とむどうがあった赤羽根あかばねに隣接する茅ヶ崎市北東部の湘北しょうほく地区に位置する、住宅街や田畑が広がる風光明媚な街区。しかし残念ながら、その牧場は近いうちに閉鎖予定。


「なるほど地場産。猪苗代の道の駅はスーパーのフードコートみたいな雰囲気のところでソフトクリームを売ってて、欧米っぽさは全然ないから、全然違うんだなあって」


 茅ヶ崎市は先日出かけた豊橋市に近い愛知県岡崎(おかざき)市と、ハワイ州ホノルル市の姉妹都市。ハワイアンを中心に欧米っぽい雰囲気が東海道線より海側の地域、特に私たちが住む東海岸地区で多く見られる。


 ということで、欧米っぽいアイスクリーム屋さんの前に形成された行列に並ぶこと30分、アイスをゲット。アイスクリームなのかアイスミルクなのかラクトアイスなのかはわからない。とりあえず2階のフードコートに移動してテーブル席に座りぺろぺろした。今回はみんな揃って湘南ゴールドのアイスをチョイス。


「うんま」


「さっぱりしてて、舌に残らないね」


 抽象的と具体的、同じものを食べても巡ちゃんとつぐピヨでは感想が異なる。


 食べ慣れているお店の初めてのフレーバーを私とまどかちゃんもペロペロ。このさらさらした食感ははジェラートかな。うん、柑橘の酸味もあってさっぱりしててうまい!


「なんでこう、神奈川っておしゃれなの?」


 巡ちゃんから唐突な質問。


「加山雄三? パシフィックホテル? それとも南湖院なんこいん?」


 正直わからん。親子代々茅ヶ崎に住んでる人はおしゃれでもなくダサくもなくな感じだから、そういうのは移住者の影響では? 加山雄三も横浜からの移住者だし。あ、横浜も神奈川だ。


 なんてことをコンマ数秒で考えた。


「おしゃれかどうかはともかく、前向きに生きてる人が多いから、自ずと凛とした雰囲気が醸成されてるんじゃない?」


 と、まどかちゃん。


「おっ、新視点」


「あとミーハー根性な。おしゃれな人が多いと、そうじゃない人も浮くのを恐れておしゃれとまでは行かなくてもダサくはない格好をする。そういうのに囚われない人はおしゃれじゃない街の人と同じでそれぞれのカラーが出てる、と思う」


 なんとなく漂っている空気を読んで、最低限ダサくはない格好をする市民たちといったところか。


「まどかちゃん洞察力すごい!」


「まあ、推測でしかないけど」


 まんざらでもないとき、彼女は視線を斜め下へ逸らす。


「でも、派手な人も少ないよね。全身を生肉で覆うまでの奇抜さはなくても、すごく華美に着飾った人というか、「おしゃれしています」を全身で体現している人は、都内の雑多な街とか、ほかの地方都市と比べると少ないかも」


「グサッ……」


 巡ちゃん、なぜかつぐピヨの考察にグサッと来たようだ。フォロー待ちの巡ちゃんに私が「どうした?」と白々しく声をかけると


「こ、郡山こおりやまを、思い出した……」


「おう、そうか」


 茅ヶ崎のことなら躊躇なくディスるけど、よく知らない街に関して軽率なことは言えない。


「た、確かにそうなんだ……田舎民は装飾華美になりがちなんだ……美味しい料理をつくろうと思って材料をたくさん入れるけど、引き算の美学を知らない。同じ東北でも仙台せんだいは茅ヶ崎に近いライトでまとまったファッションの人が多い……」


 闇堕ちしてゆく巡ちゃんと、リアクションに困る私。気まずそうなつぐピヨと、どうでも良さげなまどかちゃん。


「あー、そうだーあ、そろそろご飯にしよー」


 道の駅をリポートしに来ただけなのに無関係なことで混沌とする私たちの平常運転。とりあえず2階のフードコートで気を取り直そう、そうしよう。

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