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私たちは青春に飢えている ~茅ヶ崎ハッピーデイズ!~  作者: おじぃ
大学1年の日常2

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著作権70

「誰に追われてるの?」


警察官マッポーじゃ」


「だと思った。また駅のペデストリアンデッキで路上ライブ?」


「いかにも。この前はな、『チューチュー ラブリー ムニムニ ムラムラ プリンプリン ボロン ヌルル レロレロ』を歌っていたらしょっ引かれた。だから今回はそれは歌わんかった。なのに何者かが通報しおったんじゃ」


「そうか、河童は前回『チューチュー ラブリー ムニムニ ムラムラ プリンプリン ボロン ヌルル レロレロ』を歌っていたからしょっ引かれたと思ったのか」


「そうじゃ。だからワシは考えた。するとある結論に辿り着いたわけよ」


 どうせ大したことは言わないだろうと、冷めた目で結論とやらを話し始めるのを待つ。


「『チューチュー ラブリー ムニムニ ムラムラ プリンプリン ボロン ヌルル レロレロ』はこの辺りに住む者の縄張りの外、八王子はちおうじのバンドなのじゃ。だから今回は茅ヶ崎らしく『マンピーのG★SPOT』を歌ってみた。最近流行っておるじゃろ? 歌ってみた動画というやつが。バーチャルユーチューバーデビューしようと思ったわけよ。だが今回も警察官マッポーが来た。だからここに瞬間移動してきたってわけよ」


 ここにもいたかVTuber。だがそれより、


「いやいや待った色々違う。まず八王子とか茅ヶ崎とか、ミュージシャンの出身地とか関係ない。まずほかの誰かの曲を披露したり流したいときは、権利者に許可を得ねばならんのよ。JASRACとかな。八王子のホルモンでも茅ヶ崎のサザンでも、個人的に楽しむ範囲外で、まして駅みたいに多くの人が通るところでみんなに聞こえるように流したら著作権法違反なのさ」


 公の場で声を大にして言っていいのはタイトルまで。


 河童は霊体で人間じゃないから著作権法は適用されないだろうけど、接触可能なからだを伴って人間と同じように暮らしていたら警察は動かざるを得ない。河童は住所不定無職でどこの国にも籍がないけどね。命すらないから殺処分もできない。


 裏を返せば、無敵の河童は警察のお世話になると関係各所に迷惑がかかるから逃げてきたということになる。せめてもの良心、なのか?


「だがおヌシ、この前隅田川で大声で歌っておったではないか」


「うわ、付いてきてたの? ストーカー?」


「何がストーカーじゃ。全国の妖怪仲間と酒盛りしてたらお主らが通りかかったんじゃ」


「ふむふむ、だがあの曲の場合、著作者の没後70年以上経過しているから良いのじゃよ」


 ここで注釈。以前、著作物などの保護期間は50年だったけど、TPP、えーと、あれだ、環太平洋戦略的経済連携協定を機に法改正されて、2018年12月30日から70年に伸びたぞい。


「なんじゃ、そうなのか。なら今度は自前の曲を引っ提げるぞ」


「そうしたまえ。次にな、前回も警察に注意されたけど、ストリートライブをするときは事前に警察署に行って『道路使用許可申請』をしなきゃいけない。そして何より、全身グリーンでふんどし一丁はどう見ても不審者や」


「ワシが不審者だと! そんなことあるか!」


「あるよ、むしろ不審者でしかない」


「なんだとキサマ、容姿をディスりおったな。侮辱罪だぞ!」


「容姿じゃない。私みたいなピチピチギャルでも筋肉ムキムキマッチョマンでも、ふんどし一丁で駅前にいたら捕まる。緑の顔はメイクしないとどうしようもないから、とりあえず服を着ろ、ズボンを履け」


 なかなか成り立たない会話をしながら、こういう面倒なヤツの相手をしなきゃいけない接客業は大変だと思った。

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