アキバハラアキハバラ
「あーきはーばらー!」
沙希、どこ行ってもバカみたいにバンザイするのな。
江ノ島周辺散策を思い出した。
茅ケ崎駅出発から1時間弱、東京駅で東海道線を降り、歩行者の往来妨害にならぬようホームの柱に寄ってどこに行こうかと話し合った結果、巡の要望でまずは秋葉原に到着。オタクの街だからつぐみは行き慣れていると思ったがそうでもなく、前回いつ来たか覚えていないほど久しぶりらしい。
一般的に『アキバ』と略すこの土地、これは元々『秋葉原』という地名だからだそう。諸説あるが『秋葉原』は当時の鉄道事業者が発音しやすいからとか、間違えて付けたなどと言われている。
駅を出て視線の先には高層ビル『UDX』が聳える広場。ここからどこへ行くかは決めていない。
「はて巡殿、どこか行きたいところはありますかの?」
沙希が要望を訊いてとりあえず大型アニメショップを見て回り、巡とつぐみは本やグッズを買い、私と沙希はアニソンなどがずらりと並んだCDコーナーを眺めていた。新譜は平積み、旧譜は棚にみっちり収納されている。
「まどかちゃん普段アニソン聴く?」
私の隣で前屈みになりCDを眺める沙希が言った。
「fripSide とか I've sound はよく聴く。沙希は?」
「the peggies とか、あと YouTube でおすすめに上がってくる曲とかハトの EDM とか」
「ハトはアニソンじゃないだろ」
「まどかちゃんハトの知ってるんだ」
「おすすめに出てきた」
こんな感じでアニオタではない私と沙希もアニソンやサブカル系の知識はそれなりにある。
巡の気が済んだところでアニメショップを出て、行く当てもなく歩き始めた。
古びた建物、ゲーセン、電器屋、ガチャガチャ専門店、汗などの不潔感に満ちた臭気、アングラ感が支配する雑多な街を歩く。行き交う人はキャラクターのシャツなどを着た見るからにオタク、上下黒でまとめた衣類にジャラジャラしたアクセサリー類を身に付けた、オブラートに包まず言うなら地方やディープな街でよく見るような若者が多く、全体的に落ち着きがない感じ。巡も後者と近しい雰囲気。
しばらく歩いたもののこれといって行きたいところもなく、なんとなくゲーセンに入った。