2番のりば
「うおおお、疲れたよお……」
教えるって、大変。文字通り、師が子に鞭を打つわけで。
北口2番乗り場から鶴が台団地行きのバスに乗った巡ちゃんを見送ったところで肩の力が抜け、独り言が漏れたみずほ銀行の前。
バス待ち列が形成され、人通りが多い自転車押し歩き区間だけどフルシカトでチャリが走ってくる危険なエリアの一つ。
「ねえねえママ、あの人独り言言ってるー」
「気持ち悪いねー、変なお姉さんだねー」
性格悪いねー、人の痛みがわからないまま親になりたくないねー。
写真店の前にある信号のない小さな横断歩道を渡り、駅ビルに沿って3階コンコース直通のエスカレーターに乗り、人混みをくぐり抜け南口に下りて2番乗り場でバスを待つ。
すっかり日が暮れて、発車10分前の乗り場には既に十人以上が並んでいた。南口は先に並んでいた人のうち何名かはベンチに座って待つようになっている。北口は全員立って並ぶ。
何台かいるバスの中に見慣れぬカラーリングのバスがいる。いつしかタウンニュースに取り上げられた新カラーリングのバスだ。従来のバスが横縞模様だったのに対し、新車は縦縞。両サイドから赤、オレンジ、センターがベージュ。
待っているとそれが2番乗り場に着車した。辻堂13系統、平和町、浜竹経由、辻堂駅南口行き。
乗り込むと新車独特の匂いがプンプン。発生源はゴムや接着剤などの有機化合物らしい。従来車の最前客席が左側に対し、新車は右側。左側が空いている分、通路に人が立っていなければ左折するときに運転席からの見通しは少し良さそう。
私は空いていた後ろから3番目、左側の2人掛けのバケットシートに座った。タイヤの上だから少し目線が高い。神奈中バスの座席は硬いバケットシートの車両と、少しふかふかしたバケットじゃないシートの車両がある。
隣に人が来ないといいな〜なんて思いながら窓側に座って発車を待つ。見渡すと、窓側に荷物を置いて通路側に座っている人、その逆の人が大半。ほかに私と同じく窓側に座って通路側を空けている人は一人しかいない。
結局隣に人は来ず、東海岸北五丁目バス停までの5分間をスマホは見ず、車窓や車内をぼんやり見渡しながら過ごした。
なんにもしない、この時間がけっこう大事。