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VTuberうつくしまももか、歌のレッスン

 大学で沙希ちゃんといっしょに講義を受けた後、茅ケ崎駅近くのカラオケ店で沙希ちゃんから歌のレッスンを受けている私、廻谷めぐりやめぐる。VTuber『うつくしまももか』の中の人。


 歌が上手くなって、うつくしまももかが注目されれば少しでも福島県の力になれるかもと思って私なりに頑張っているつもり。


「うーん、そうだなあ、そうやのう、なんと申しましょうか、歌唱っていうのはメロディーラインに沿って詩を読み上げる流れ作業ではなくてのう、メッセージを伝える行為なのだよVTuber のうつくしまももかくん」


 しかし道は険しい。最初に某ボカロ曲を歌ってみたらやはりダメ出しを喰らった。


「さっ、作業のつもりはないんだけど……」


「うーん、そうやなあ、この曲はつぐピヨの十八番おはこなんだけど、僭越ながら私がちょいとお手本を」


 同じ曲を今度は沙希ちゃんが歌った。陽キャのくせに陰気な病みっ子を可愛く演じながら歌っている。お前役者か? あ、役者だ。


「うっ! 違う! 私とはレベルが違う!」


 Official髭男dism みたいな乱高下はなく、テンポは速いけど比較的歌いやすいメロディーライン。歌いやすいはずなのに、沙希ちゃんが歌うとレベルが違う。いや、沙希ちゃんは歌上手いけど、それ以前に私が音程外さないだけで精一杯なのはわかってる。


「私は普段から鍛えてるからねぇ。うんと、とりあえず別のテンポが速い曲を歌ってみてくれるかい?」


「う、うぃ……」


 私が志願して受けたレッスンだけど、もはや醜態晒しの拷問。沙希ちゃんは私を気遣ってか言い淀みつつも、伝えなきゃいけないことは伝えようと、なるべく私を傷付けないよう気遣ってくれている。


 で、喉と胸をつかえさせたまま何曲か歌ってみたものの、やっぱり『うぬぅ』って表情かおをする沙希ちゃん。


「うーん、そうやのう、あれやな、矢継ぎ早に流れるメロディーを追うのに必死になっちゃってるかのう。アップテンポな曲でもな、1小節ごとにスパッと切ると聴こえが良くなるんよのう。あとはやな、小節とか文節のラストは『あ〜』とか『お〜』みたいに間延びさせるんじゃなくて、例えば『誰もが』だったら『誰もがぁっ』って感じで、『行こう』だったら『行こおぅっ』って感じに子音しいんをコンマ1秒にも満たないくらいに挟んで、語尾をスパッと切るっ。子音を挟まないと切れが良すぎて単調に聴こえちゃうところもあるからね」


「な、なるほど……」


 きっ、厳しい……。


 やさしく言ってくれてるけどメンタルやられる。指摘に弱い豆腐メンタル。


 私とは歌唱レベルが段違いの沙希ちゃんは普段飄々としてるけど、他人に見えないところでの努力が垣間見える。自分に厳しくて、他人を見る目も実はつぐみちゃんとかまどかちゃんより厳しい。


 高田のアパートに帰宅して、動画サイトで有名VTuberや歌手の動画を閲覧した。


 確かに、歌い方は語尾に子音を瞬時挟んでスパッと切り、尚且つ歌詞を追うだけの作業にはなっていなかった。

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