品位
コンセッションスタンドでポップコーンのペアセットを購入。塩とキャラメルのハーフ&ハーフ、ドリンクは二人ともアイスティー。
チケットのQRコードを劇場入口の読取機かざして入場、係員から特典のミニ色紙を受け取った。今回はつぐみがリピートしたがっているアニメ映画を観る。
劇場は当館最大のシアター2。定員429名。スクリーンから遠くなるが後ろから座席を蹴られたくないし、私は蹴られたらソイツの肉体を蹴るからトラブル防止のために座席は最後列。発券機でチケット購入時、スクリーンに向かって左側の列が7人分丸ごと空いていたのでその通路側と隣を選択した。
本編上映前のスクリーンは公開予定作品の予告を流している。私たちはこの段階から会話をしない質で、黙って本編開始を待つ。
『あれは嫋やかに振る舞えないけど深層心理で憧れていて、そのくせ品位を高めようと努力もしない醜い女の嫉妬だから』
予告を流し見しながらさっきのつぐみの余裕の続きを想像する。
いまでこそ少し垢抜けているつぐみだが、中学時代は芋っ子に近い雰囲気だった。それは内面に関しても。あんなことを言われたらしばらく落ち込むくらいには、自分や周囲の人間のポテンシャルを理解していなかった。
品位を高めようと努力もしない。
そこにつぐみの言いたいことすべてが詰まっている気がする。私個人としては所謂ぶりっ子が疎まれる理由として『清廉潔白の偽装』も挙げたいところだが、いまは置いておく。
中学から数年であれ、自分が実は他者を蔑み嗤う彼奴らより上位の人間であると、つぐみはどこかで気付いた。上位とは、誰かの評価に左右される学校や職場などの組織内でのことではなく、誰もが一度は意識しているであろう『神』を基準にしたものだ。
品位というのは無論外見だけでなく、内面も含む。
一挙手一投足、生活習慣、その他色々、ありとあらゆる事柄が品位を築く。品位とは、人間そのもの。
いまのところ知らないヤツとしょっちゅう喧嘩してる私に品位なんてあったものじゃないけど。
つぐみにとっては私も、取るに足らない相手かもしれない。