192/273

むしろざまあ♪

「ねえねえ見て見て、あの人超イケメン！」

「ほんとだ、彼女も可愛い」

「彼女は陰キャの成り上がりみたいでなんかウザい」

　３階のテラスから館内に入り、エスカレーターで映画館のある４階に上がって、映画館のフロアに入った。出入口付近には券売機がずらりと並び、右側にチケットカウンターが二つある。奥には飲食物の売店、その正面、私たちの背後はグッズコーナー。

　私たちから５メートルほど離れた出入口前のチラシ置き場付近にいる女子二人が私たちを見て無駄話をしている。

「私、やっぱ男に見えるかな」

　男っぽいとはよく言われる。川崎では野郎相手に喧嘩して勝った。

「まどかちゃんは、女の子だよ？　それとも男の子になりたい？」

「さあな、生物学的には女に生まれたし、それで特に不満はないからいいんじゃない？　それよりつぐみをあんなふうに言いやがって、一発シメてやろうか」

「いいの、あれは嫋《たお》やかに振る舞えないけど深層心理で憧れていて、そのくせ品位を高めようと努力もしない醜い女の嫉妬だから。むしろざまあ♪」

　こういうときのつぐみはほんとに無邪気を装って、ピュアなヤツには裏を読ませない笑顔をするんだよな。女って怖い。