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サッポロ軒1

 茅ヶ崎エンターテインメントフェスティバルが成功裏に終わり、一夜明けた。演劇や歌唱で塩分不足になってラーメンを食べたくなった私は、近所に住むまどかちゃん、つぐピヨを誘って茅ケ崎駅南口から海へと続く『雄三通り』にある札幌さっぽろラーメン専門店『サッポロ軒』に来た。店名の通り、札幌ラーメンの店。


 エイティーフォーポイントセブンのFMラジオが流れるこのサッポロ軒は、昭和の東京オリンピック開催や東海道新幹線開業と同じ1964年創業。白熱灯が淡く照らす店内は昔のまま、店主が代替わりしつつ現在に至る。


 14時、少しバランスを崩すと壁に背中を打つくらい狭い店内に詰め込まれた丸椅子のカウンター席はほぼ満席。名前は知らないけど見覚えのある人たちや、サザンの話で盛り上がる観光客っぽいオッサンオバサンがわいわいガヤガヤ。ということで私たちは奥の薄暗い座敷席に入れてもらった。座敷席は家族連れやメディアのロケなど、基本的には大人数限定。


 デカい寸胴や鍋など調理器具一式が所狭しと揃う厨房では、店主のおっちゃんとアルバイトのおばあちゃんが忙しなく動き回っている。


 メニューは味噌、醤油、塩のラーメンとつけ麺、トッピング類とビール、裏メニューの焼酎のみ。餃子やライスは無い。麺なしでビールとつまみの具材を頼む人もいる。


 私たちが卒業した中学校の先輩で国民的ミュージシャンのあの人も通った聖地だけど、建物が古く、この地からの退去は近いという。


 そんな去りゆく茅ヶ崎の景色も映像に収めてゆくフルーツの香りがする夢のような女子、白浜沙希。


「いやあ、切ないね、雄三通りは変わってくね」


 ラーメンを待つ間に雑談。


「ラチエン通りとサザン通りは10年前と比べてもそんなに変わってないけど、雄三通りは移住者メインのストリートに急速に変わった感じがする。サッポロ軒に関しては築年数の問題もあるから仕方ないっちゃ仕方ないけどね」


 サッポロ軒も含むいくつかの店舗は地の人が営んでいるけれど、ここのところ急速に移住者が営む店舗が増えた雄三通り。ときどき行く雄三通り中央交差点の一角にあるアイスクリーム屋さん、巡ちゃんの地元、福島県会津の蕎麦を使った創作そば屋さんとか、鳥取和牛を使った焼肉屋さんは私もお気に入り。とにかく変遷が速くて追いきれていないけれど、きっとほかにも名店があるぞい。


「リアリストだねまどかちゃん。確かに老朽化は由々しき問題」


「だからこそ、記録しておかなきゃね」


 つぐピヨはほかのお客さんが写り込まないように配慮しつつスマホで店内を撮影している。


「そうそう、私たちと一回りしか変わらないまみちゃんが子どものころの茅ヶ崎といまの茅ヶ崎ではだいぶ違うらしいし、辻堂なんかテラモができたりなんなりで私たちがおチビちゃんだったころとは全然違うし、街は変わりゆくものよの」


「はいお待ちどうさま~、まずは味噌のりメンマから」


 ジモトークをしていると、おっちゃんが私の頼んだ味噌ラーメン、のり、メンマ乗せを運んできた。


「はいどうもいっただっきまーす!」


 続いてまどかちゃんが頼んだ醤油ラーメン、つぐピヨが頼んだ塩ラーメン油少なめが着丼。いずれも千切りのネギがふわっと乗っている。ネギは緑の部分がけっこう多い。


 さて、いざ実食。

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