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私たちは青春に飢えている ~茅ヶ崎ハッピーデイズ!~  作者: おじぃ
茅ヶ崎エンターテインメントフェスティバル2
187/273

祭りのあと

「きょうはみんなありがとー!! ほんとうに、ありがとうございます!! 気を付けて帰って、また茅ヶ崎来てねー!! 青い鳥のSNSできょうの感想とか帰ったこととか教えてねー!!」


「うおおおおお!!」


 野太い声が響く大ホール。そういやお客さん、ほとんど男だったな。


 すべての演奏が終わり、一部そそくさと出てゆく観客を視界に入れつつ、私が深くこうべを垂れると、ほかのメンバーもそれに続いた。


 いやあ終わった終わった! 無事に終わってすっきり!


 ステージに立つって、気持ちいい!


 最後はステージ上に出演者全員とまみちゃん、巡ちゃんの全員集合で記念撮影。


 と、余韻に浸っていられるのも束の間。後片付けが忙しい。演劇の舞台装置は既にまみちゃんが確保した湘南海岸学院の倉庫へ撤収済み。残りはアンプやドラム、楽屋に散らかしたあれこれ。それを今回出演した3組のバンドメンバーで片付け、まみちゃんはストゼロを飲み始もうとロング缶を手に取ったのでまどかちゃんがゲンコツを喰らわせた。乗ってきたマイカーは私たちの誰かに運転させるつもりだったらしい。

 

 片付けが終わるとまみちゃんが自然な流れでストゼロを飲んだので、まみちゃんのピンクの軽は常時携帯している若葉マークを付けて私が運転するハメになった。


 文化会館の裏口に出た。道路を挟んで正面には大型スーパー通称ジャスコ。


 乗用車、バス、トラック、軽ワゴンなどが行き交ういつもの静かな喧騒。空を仰いでもそんなに星は見えない、霞んだ春の夜。右を向いて数十メートル先の交差点の向こうは新緑の桜並木。余韻どっぷり騒がしい祭りの後の静けさに包まれて、少しずつ日常へ還ってゆく。


 屋内の駐車場からまみちゃんのクルマに乗った。助手席につぐピヨ、左後部座席に巡ちゃん、中央にまどかちゃん、右後部座席に泥酔したまみちゃん。


 まずは葉桜並木を右手に相模さがみ線に突き当たり右折、すぐ左折で踏切を渡ってホームセンターや神奈中かなちゅうバスの営業所脇を通過して巡ちゃんを高田たかだのアパートに送った。クルマは5人乗りで定員オーバーのため、武道は市民文化会館前から小谷こやと行のバス、自由電子くんは駅南口から何らかの交通機関または徒歩で帰った。


 左後部座席にまどかちゃんが移動、私たちが住む海岸地区へ向かう。


 カメラのキタ◯ラ前を通過、国道1号線と交わる上り坂に停車。坂道発進不安。平坦な道ではシフトレバーをNにするところを1にして、更にサイドブレーキをかけた。このクルマは昔ながらのレバータイプ。


「ねぇ、まどかちゃんは、まみちゃんの住所、知ってる?」


 まみちゃんは酔い潰れて後部座席で大いびきをかいている。


「知らない」


 ということで、東海岸地区のコインパーキングに駐車。最大料金ありで良かったね。起きないまみちゃんは車内に放置。暑い季節じゃないし、子どもじゃないから自力で出てね。窓は5ミリくらい開けておいた。とはいっても昼になると車内は暑くなるから起きてね。


 アナログキーを取り外したリモコンキーをまみちゃんに握らせ、外から鍵をかけた。アナログキーを穴に挿して回したら盗難防止のクラクションがビービー鳴って焦ったけど無事ロックできた。自転車屋さんとか工務店さんとか近所の皆さんごめんなさい。


 余韻に浸って眠れない夜を過ごし、ようやく眠ったのは4時半。それから5時間くらい経った朝10時過ぎ、せっかく気持ち良く眠っていたのに鬼電に起こされた。相手はまみちゃん。カーテンを広げた部屋は薄暗いので縮めて採光してからスマホを手に取った。


「はいはいもしもし生きてるかい?」


「おいテメエこのクソフルーツコインパに停めやがってカネがねえんだよ!!」


「まみちゃんの家知らんし路駐はアカンからね。カネないならカ◯カウファイナンス(10日で5割の闇金)でも行ってください。あと酒抜けるまで運転しないでね」


 面倒だから通話を切った。どうしようもない日常が戻ってきた。


 さてさて、きのう思いっきり動き回ったり歌ったりして塩分が足りんな。ちょっとのんびりしたらサッポロ軒でも行くか。

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