新曲『ふるさと茅ヶ崎』
パチパチパチパチパチ負けたー♪
栄一百枚飛ばしたる
そんな未来がすぐそこに
ヘイッ！
◇◇◇
百万円飛ばす未来なんて来んでええわ！
最後部の客席でツッコミを入れながら聴く『MAMIKO』。ステージ近くの席は小気味良いアップテンポなナンバーに歓声や奇声が飛び交っている。
「はーい皆さんこーんにちはー！」
こーんにちはー！！
前のほうの席にいるハイテンションな連中が沙希ちゃんにレスポンスした。これぞライブ。音が拡散される野外ライブに対して、ホールだと反響して四方八方から五臓六腑に染み渡る。どちらにも良さがある。
「いいねー、元気でいいねー、もう夕方だけどまだ盛り上がれる？ 演劇からずっと居てくれてるお客さんも大丈夫？」
だーいじょーぶ！！
「あーりがとーう！！ 大丈夫じゃない人は帰ったり座ったりしていいからね？ と言っても座りにくいなぁって人もいるかもなので、次は座ってまったり聴いてほしい曲にしたよ」
なーあにー？
「なーあにー？ って訊かれても新曲だからね、私らみたいなまだインディーズデビューもしてないようなローカルバンドのマニアでさえ知らない、正にいまこれから世に出す、私たちのふるさと、茅ヶ崎の曲です！ それじゃあさっそく聴いてちょんまげ。『ふるさと茅ヶ崎』。One two sun Let's go！」
沙希ちゃんの合図で演奏開始。ギター、ベース、ドラム、キーボードが心地よく織り交ざった１０秒の前奏の後、ボーカルが入った。
BPMは110くらいかな。
電車を降りて一歩二歩～この身を包む潮のか～おりっ
ぶつかり合う無数の足音～
どんなときも変わらず降り注ぐ
発車のメロディーは、希望のうた～
明日は休みだし、散歩でーもしようか～
砂をかぶ～ったビーチの自販機で、サイダーでも買ってさ～～～
大きなＣとSeaの向こうに烏帽子岩
プールの跡地に華やぐ浜昼顔っ
松の木漏れ日に手のひら透かして
深呼吸しながらのんび～り歩こ～う
ここが私のふるさと、茅ヶ崎～
ふるさと茅ヶ崎～
引っ越してきて間もない私でも、プールの跡地以外は概ねどこのことを唄っているのかわかる、わかりやすい詩と心地良いメロディー。
大きなＣからのサビで変調して畳み掛けてくる沙希ちゃんの声は地元愛をやさしく歌い上げ、聴く者を魅了する。
演奏のほうは正直よくわからないけど、学校の軽音楽部みたいな‘演奏にさえなっていない’レベルではなく、違和感がない。ちゃんと演奏になっている。ライブだから重低音もキーボードの奏でるメロディーも鮮明に聴こえる。
私は観客として胸を焦がされると同時に、VTuber『うつくしまももか』として、もっと歌唱力を鍛えなきゃと発破をかけられた。
やっばいわ、こんなん見せられたらやっばいわ。
◇◇◇
『ふるさと茅ヶ崎』
作詞、作曲：白浜沙希
電車を降りて一歩二歩
この身を包む潮の薫り
ぶつかり合う無数の足音
どんなときも変わらず降り注ぐ
発車のメロディーは希望の唄
明日は休みだし散歩でもしようか
砂を被ったビーチの自販機でサイダーでも買ってさ
大きなＣとSeaの向こうに烏帽子岩
プールの跡地に華やぐ浜昼顔
松の木漏れ日に手のひら透かして
深呼吸しながらのんびり歩こう
ここが私のふるさと茅ヶ崎
ふるさと茅ヶ崎
クルマを降りて見下ろせば
広がる畑の向こうに稜線
夏を彩るセミたちの叫びが
ジリジリシュワシュワ降り注ぐ
未来への希望を唱って
今日は緑の風を浴びに行こうか
土埃被った小路の自販機でコーヒーでも買ってさ
広い広い空と緑の向こうに富士の山
黄金の穂が垂れる頃咲き連なる曼珠沙華
やがて来る季節に胸を焦がして
深呼吸しながらのんびり歩こう
ここが私のふるさと茅ヶ崎
ふるさと茅ヶ崎
イヤになっちゃうこともちょいちょいあるけど
やっぱりこの街が好きなんだ
ここが私のふるさと茅ヶ崎
ふるさと茅ヶ崎
