ひとり暮らしのプレゼント
「この時間でも明るくなりましたな」
暮れなずむ茅ヶ崎の街。紅に染まるアスファルトやビル、中央公園の木の葉。
分庁舎を出て中央公園前の横断歩道手前で右折。チャリがスピードを落とさずバンバン行き交い、歩行者は歩道の外側、自転車マークが表記された部分を平然と歩いている。茅ヶ崎を盛り上げたくて町興し活動をしてるけど、カスだらけのクソみてえな街って、よく思う。
分野は違えど、地元に不満を持つ巡ちゃんの気持ちもけっこうわかったりする。メディアで称賛されるうちの街にも汚点はある。
マンションや大病院が建つ市街地。地下道を抜けて国道1号線の歩道を辻堂方面へ。一里塚交差点の横断歩道を渡り、松の木連なる歩道を少し進むと、改装されて話題になっている大型商業施設がある。
「本日はここを、キャンプ地とする!」
高らかに宣言! この商業施設、キャンプ用品のお店もある。
「来るらしいね、あの人たち」
「前回はサザンビーチだったけど、こんどは中央公園だよね」
まどかちゃんとつぐピヨが言った。
そう、あの人たちが再び、茅ヶ崎にやってくる___。
サザンが来るのは茅ヶ崎公園野球場。中央公園に来るのは北海道出身の俳優とその一味。
鎌倉殿。
一先ず私たちはエントランス近くの通路に面したオープンカフェで一旦休憩。みんな揃ってアイス抹茶ラテを頼んだ。
「あ~、疲れたからだに染み渡る甘みと苦み……」
「食レポ乙~」
「おいし~」
まどかちゃんとつぐピヨもぐでぐで脱力気味。
演劇の練習で消耗した身に染みる抹茶ラテ。中学のときから部活上がりの帰宅直後によく飲んでた。家では牛乳に抹茶粉末を溶かして飲む。
飲み終えてカフェを出たら、こんどは同じフロアにあるホームセンターへ。ここで真空パック入りのお米10個入りとスプレータイプの消火器を購入。これは巡ちゃんへのささやかなプレゼント。家電一式などに気を取られ、一人暮らしの盲点になりやすい防災用品や非常食。もし巡ちゃんが用意していても、備えがある分には構わないと思う。
特に非常食は賞味期限切れを防ぐため、日ごろから少しずつ食べて新しいものを買い足すローリングストック方式が推奨されている。
あんまり考えたくないけど、災害やら何やらで街が機能しなくなったり壊滅する可能性はある。
そんなことを考えながら買い物をして、時間が余った私たちは有名アニメ監督の映画を観た。いちばん広いシアターが割り当てられていたけど、夜のため座席は半分も埋まっておらず、ゆったり鑑賞できて良かった。