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平和を願う少女

 お城の前、お城の周り。小田原城址には桜をはじめ、大きな木がいくつかある。中には樹齢5百年以上の木も。


 一人が生まれたばかりのころからこの世を去るまでを、きっと何度も見送っている。もしかしたら、生まれ変わってからの姿も。そういえば、前世を占ってもらったとある茅ヶ崎市民が、前世は小田原の人だったという。


 なるほど地元が気に入れば、来世も同じところか近所に生まれられるのかと思ったり。


 へりに咲き乱れる大樹を見上げ、引き返して隣接する報徳二宮ほうとくにのみや神社を参拝。今度は来た道を戻らず参道を抜けて、藤の花を見上げるなどしてお堀端の桜並木へ。


 鴨や鵜、鯉のいるお堀は桜の絨毯が敷かれている。


 穢れ無き花は心を洗って、やがて地に還る。


 花を見ていると、胸の奥に詰まった淀みが抜けてゆく。そんな気がする。足元の小さなタンポポでも。


 かつて命を散らした武士もののふたちも、全国で宴会をしている現代の戦士たちも、いつの時代も人々は、ふわり咲いては舞う花に、心を融かしている。


「世界って、どの時代も醜いけど、少しずつ進化してるんだよな」


 言って桜を仰ぐまどかちゃん。


「あ、それ、私もそう思ってた」


 と、つぐピヨ。


「同じ地域でも歴史ドラマでは戦をしていて、現代が舞台のアニメではアイドルをやったりキャンプをやったりしてる。そういうのを見ると、世界は少しずつ平和に向かってるのかなって思ったりするの」


 つぐピヨはどこか憂いを帯びた笑みに希望を織り交ぜていた。


 こんなん惚れるわ。


「なんてね、ごめんね、変なこと言って」


「ううん、変じゃないよつぐピヨ! 実は私も天守閣の展望デッキで同じようなこと考えてた!」


 まどかちゃんとつぐピヨに先に言われちゃったけど、考えてたのはほんとう。


「おや? あの建物は」


 桜並木の道路の向こうに、何やら近代的でお洒落な建物が。


「なんだろう、ちょっと見てみる?」


「見てみようよ」


 まどかちゃんとつぐピヨも興味を示したので横断歩道を渡り、木とガラス張りの建物に入ってみた。小田原市観光交流センターというらしい。なるほど市の施設か。


 中に入ってみると、左に広いカフェ。コーヒー、プリン、ジェラートといったスイーツやピザもある。


 右に小ぢんまりとした土産物コーナーと女性が二人座っているインフォメーションカウンターがある。土産物コーナーには、木、鋳物、ガラスの工芸品、小田原特産のオレンジマーマレードなどが並んでいる。


 本格的なやつやん。茅ヶ崎にもこういうの欲しい。駅近に欲しい。お洒落なものを入手したい、飲食したい願望はきっと多くの人にあって、でもそういうお店は敷居が高く感じて入りづらい側面もある。その点、公営施設だと物怖じしないで入りやすいよね、きっと。


 茅ヶ崎の新しい公営施設といえば……。


 ああ、あるね、あるある、いくつかある。市役所とか、駅から遠いけどつつみの茅ヶ崎市博物館とか。ああいうところにこういうお店があったらいいね。茅ヶ崎は元々お洒落なお店が多いから、そこから出張してもらってもいい。


 とりあえずいまは小田原を楽しむとして、日持ちしそうなマーマレードと、鯖のオイル漬けガーリック味を買った。


 そして〆は、つぐピヨの慎ましき要望によりすぐ桜並木を抜けてすぐ、駅へ向かう途中にあるアニメショップ! 藤沢にもあるね!


 コミックの新刊を入手してホックホクのつぐピヨは、大層幸せそうであった。めでたしめでたし。

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