古戦場の春風
「大きい桜と松を見上げると、その向こうに聳える小田原城。15世紀くらいにお偉いさんの命により現場作業員たちが汗水垂らして一生懸命建てたお城! 北条とか徳川とか、東海道沿いの人たちが関わってるぞい!」
さくら餅ソフトをぺろぺろして、露店で売ってるいちご大福をお土産に買って自然薯の練り物を食べたら小田原城について軽く動画で紹介。
「周りにはリーズナブルなお食事処、ソフトクリームとか甘酒とかビールとかいろいろ売ってる売店、和菓子屋さんとジェラート屋さんと小田原名物のおでんとか自然薯棒とかの出張販売店。中でもジェラート屋さんは長蛇の列。前に食べたけどうんまいよ。私たちは今回、売店のほうのさくら餅ソフトを食べたけど、こっちもモチモチした何かが入ってて美味! それじゃさっそく、お城の中に入ってみましょう!」
普通の建物の3階分くらいの石段と、中の階段を上がって、モダンに改装された城内を巡る。城内は客で賑わい、各々が展示物や解説を見て回っている。それらを一通り見た私たちは天守閣の展望デッキに出て、相模を臨む。
「わお、高いところは風が強い!」
「江ノ島が遠くにちっちゃく見えるね」
「逆に伊豆はすぐそばに見えるね」
私、まどかちゃん、つぐピヨの順で言った。
東南角に立ち、目の前には茅ヶ崎でもお馴染みの相模湾。
東に国府津、二宮、大磯、平塚、茅ヶ崎、藤沢、鎌倉、葉山、逗子、横須賀、三浦など。その向こうに房総半島。
北東は秦野、伊勢原、厚木、海老名、座間方面。そっち側は山があって見えづらい。
西側には言わずと知れた観光地、箱根の山や真鶴半島がある。
「あ~、風が気持ちいいわ」
「現実の風に吹かれてると、潮風と山風が混ざった自然の風が気持ちいいね」
「穏やかな時間だねぇ」
小田原城で直接的な戦はなかったらしいけど、豊臣秀吉率いる約22万人の軍勢により海を含む四方を目鼻先まで攻め込まれ落城。実質的には戦場だったここで、三人揃ってのほほんと春風を浴びる。まどかちゃんの言う通り、小田原は海と山の風がぶつかり合う場所。自然豊かで、川にはオダワラメダカという固有種もいる。
お城と桜を見に来た私たちだけど、街を眺望しながら自然を感じるのも楽しみの一つ。
お城から出たらラストスパート。満開の桜を楽しむぞい!