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そうだ、小田原、行こう

 そうだ、小田原、行こう。


 もうすぐ大学入学。束の間の休息もあと少し。いや、エンタメフェスの準備でずっと忙しいけど。


 ということで、私、まどかちゃん、つぐピヨ三人で茅ケ崎駅南口前にある幸町さいわいちょうの自転車駐車場の屋上に駐輪。マイチャリたちには海岸地区や江ノ島を一望してもらう。桜もちらほら見える。


 平日の昼間でもまあまあ人が乗っている特別快速の先頭1号車。山側のボックス席がまるごと空いていたのでそこに座った。つぐピヨが進行方向窓側、まどかちゃんが反対、私はつぐピヨの隣の通路側。


『希望の轍』サビバージョンの発車メロディーが流れ、ティトーンティトーンティトーンガチャンとドアが閉まって出発進行。


 後ろのほうからグオオオオンと駆動音が響き、電車は加速してゆく。


 普段電車に乗るときは横浜、東京方面が多い私。逆方向はちょっと特別な気分。


 みるみる加速して、ビュービュー風を突き、ドアがガタガタ震える。


 そっか、先頭だから空気抵抗をもろに喰らうんだ。


 景色はみるみる移ろい、よく自転車で通った浜見平、小出川、中島あたりをビュンビュン通過。ジョイント音を轟かせて宇宙からも見えるという相模川に架かる橋梁きょうりょうを渡ると、まもなく平塚駅に到着。すぐに『たなばたさま』が流れて発車。平塚は七夕祭りで有名。


 ここからは、一気にのどかな風景になる。海が垣間見え、山側は地元民ならだいたい知ってる標高180メートルくらいの山、湘南平しょうなんだいらや畑、なんかのスポーツのフィールドなどが見える。


 芸能人御用達のリゾートホテルがある大磯おおいそ、菜の花が綺麗な東山あずまやま公園のある二宮にのみやを通過して、これといったものが思いつかない国府津こうづに停車。


 調べたところによると、東海道線の東京から沼津間で、いちばん知名度が低くて他所の人、特に直通運転している宇都宮線とか高崎線のユーザーが『どこ?』ってなりやすい終着駅が国府津らしい。


 目の前に海があるけど住宅であんまり見えない。御殿場ごてんば線の始発駅。昔、国府津から沼津ぬまづまでの海沿いの線路がなかった時代は御殿場線が東海道線だったらしい。めっちゃ遠回り。


 自由電子くんによると、特別快速が国府津に停まるのは、御殿場線の乗り換え駅なのと、東海道線と相模線の車両を管理する車両センターがあるからとかいくつか理由があるらしい。何かあったときに国府津で運転を打ち切って車両センターに引っ込められるとかなんとか。


 約百年前、1923年に発生した関東大震災の震源は、この辺りと言われている。国府津は小田原おだわら市の東端で、地形がジグザグしているから自転車とかクルマで道路を通ると東隣の二宮にのみや町との境界を出たり入ったりする。


 国府津を出ると新幹線発祥の地、鴨宮かものみやを通過。酒匂川さかわがわの鉄橋に差し掛かると、新幹線と箱根の山の向こうに富士山の上のほうが見える。


 茅ケ崎駅を出てからここまでの間、私たちはほとんど会話をしていない。なぜなら私たちは落ち着きのあるホモサピエンスだから、電車の中で騒がしくしないのだ。


 静かに、静かに、旅情感に浸りながら、流れゆく車窓を眺める。


「やっほーい! ひっさしぶり小田原あ!」


「うるさい駅で騒ぐな」


 茅ケ崎駅から僅か19分。小田原駅に着いて電車を降りたら、まどかちゃんに怒られた。でも周囲の視線は集まらなかった。この程度の痛いヤツは山ほどいるから、ほとんど気にされない。というか「ああいうのは見ちゃいけません」っていう感じ。


 電車降りた瞬間終わったヤツだと思われるフルーツの香りがする夢のような女子、小田原に上陸。

 

 数時間だけど、小田原散策楽しむぞい!

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