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私たちは青春に飢えている ~茅ヶ崎ハッピーデイズ!~  作者: おじぃ
高校3年3月 最後の潮風登校
154/273

うつくしまももかチャンネル

「はぁ、はぁ、はぁ……」


 疲れた、疲れたぞい。


 自由電子くんが合流し、演劇とバンドの練習をすること2時間。


 しかし私たち五人には、まあそれなりにセンスありけり。武道を除き、音楽を聴けばメロディーくらいは奏でられる。武道も、つぐピヨの丁寧でやさしい指導によりリズム感を得て、ドラムを叩けるようになってきた。


 私はギター&ボーカル、まどかちゃんと自由電子くんはベース、つぐピヨはキーボード。


 マッチョの武道がドラム担当では意外性がないかもだけど、武道が練習すればできるようになりそうなのがドラムしかなかった。


 水やスポーツドリンクを飲みながら過ごす休憩時間。


「あ……」


 つぐピヨ、心の声を漏らす。


「つぐピヨどした?」


 私、心の声を拾う。


「うーんと、巡ちゃんのV動画がアップされてたから」


「ブイ、あ、V-tuberね。へぇ、巡ちゃん、Vの人やってるんだ」


 つぐピヨと巡ちゃんは趣味の合致で仲良し。二人とも人見知りだから距離の縮め方はゆっくりだけど、徐々に良き友になりそう。


 五人で小さなスマホを見るのは窮屈なので、私と武道はつぐピヨのスマホ、自由電子くんはまどかちゃんのスマホで見せてもらっている。武道と自由電子くんは中の人と会っておらず、ただ知らない人の動画を見ている。


『はいどうもー! うつくしまももかでーすっ! なんとなんとわたしー、来月から上京しちゃいまーすっ! そ、こ、で、今回は、私のふるさと、福島県会津の魅力を紹介しようと思いまーすっ! パチパチパチパチー』


 ミニマムなピンクヘアピーチヘッド、リアルで話すときとはまるで別人のハイトーンボイス。


 そうそう、うつくしま福島は桃が名産。みずみずしくてデリシャス!


 巡ちゃんもとい‘うつくしまももか’の配信は、普段はゲームやら好きなアニメなどに関する雑談、たまに歌ってみたりな感じらしい。


 今回はふるさとを去るため記念に地元を紹介するみたいだけど、ニンソク(?)やら地元住民たちに寄ってたかってオタク趣味を否定された件、オタクやるなら競馬とかパチンコでもやってろと説教された件、近しい人が毎月高いして年間60万円飛ぶ件、バスも電車も走ってない時間帯にタクシーにも乗らず、誰に送迎してもらうでもなく、自分一人で離れた場所までどうやって呑みに行って帰って来てるのかな? など、不満や田舎暮らしへの警告が続き、魅力紹介どころかディスりまくりで地元の人たちに怒られたり口封じされそうな話題だった。


『えー、こんな感じでこれだけは言っておかないと気が済まない、私自身が人生のモチベ下げられた事実を、あくまで事実、捏造ではない事実を列挙てきましたが、ここからは魅力を紹介しようと思いまーす』


『事実』の語気を強めたうつくしまももか。私にも打ち明けてくれたもんね。好きなものを否定されたらつらいし、ニンソクとやらの作業とか人付き合いで貴重な休日を奪われるのもつらい。お金が飛ぶのもつらい。ニンソクとか人付き合いが貴重な居場所っていう人もいるだろうけど。


 他者の好きなものを否定する人は茅ヶ崎にもいる。たぶんどこの区市町村にもいる。


 遠く福島にいる巡ちゃんに想いを巡らせながら、動画の視聴を続ける。

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