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私たちは青春に飢えている ~茅ヶ崎ハッピーデイズ!~  作者: おじぃ
高校3年3月 最後の潮風登校
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鶴嶺八幡宮

「街の中なのに、ここからは静かな雰囲気だね」


「喧騒と静寂の境界線だね」


「さすがまどかちゃん、詩人だね」


 私が誉めると、まどかちゃんは鼻を掻いて照れ臭そうにした。


 塗装されていない、飾り気のない鳥居。狛犬さんがお出迎え。


 松並木の参道の脇に建つマンションがちょっぴりシュール。近くに小学校があり、校庭では子どもたちがはしゃいでいる。


 道路あり学校あり、物理的には騒がしい場所だけど、なぜかこの参道は静けさが支配している。何かの気配がするのは、きっと気のせいではない。ずっとこの地を見守っている誰かが、私たちを見ている。


 脳ミソ筋肉で頭悪そうな野郎が美女を三人も連れてるぜとか思ってるかもしれない。


「なんだ? 沙希」


 私たちを先導する武道が急に振り返った。


「ううん、なんでもないよ」


 この男、動物的な勘は鋭いな。


 ゆっくり歩いて3分ほどで参道を抜けると、裏道を挟んで開けた参道、左に社務所、大きなイチョウの木が何本か繁っている奥に小さな社殿が見えた。


 ここ、鶴嶺八幡宮つるみねはちまんぐうは西暦1030年創建、ここ茅ヶ崎の浜之郷はまのごうには1085年に建てられたという、源氏、そう、あのみなもとの頼朝よりともたちゆかりの神社。


 源頼朝関連の場所は市内にいくつかあり、この近くだと国道1号線のお値段以上の家具を売ってるあのお店のそばに旧相模川橋脚がある。


 茅ヶ崎は、歴史めぐりも面白き。


 はてはて、まずは社殿の前に上がって参拝。二礼二拍手一礼。四人一斉に賽銭箱に気持ちばかりの小銭を投げ入れた。


 神様こんにちは、茅ヶ崎の非公認ナビゲーター、フルーツの香りがする夢のような女子、白浜沙希です。茅ヶ崎に生まれ育ち18年、おかげさま無事高校を卒業できました。これからも茅ヶ崎を盛り上げるために頑張ってゆきますので、よろしくお願いいたしまする。


 神様に挨拶をして、左にたくさん置かれている崎陽軒の醤油差しくらいの鳩の置き物を覗き込む。視界に入ったときから気になっていた、鳩みくじなるもの。


 すると背後からバサバサと音がしたので振り返ると、3メートルほど離れた地面に二羽のキジバトがいた。その後ろには絵馬掛け兼おみくじの結び処がある。上に絵馬、下におみくじ。


「これは、やれってことだね」


「だな」


 武道が同意。


「神様に直視されてるよお」


 つぐピヨが言う神様とは、たぶん背後にいるキジバトのこと。


「なんか、ちょっとかわいいね、この鳩」


 まとがちゃんが鳩みくじの群れを見て言った。おみくじは鳩の下腹部に挟んである。一つ5百円で、お金は賽銭箱に入れてとのこと。


 鳩みくじの置かれた台には細いマジックペンがあり、鳩の置き物に願い事と名前を書いて、左すぐそばの台に奉納すると、努力次第で叶えてくれるらしい。


 さてさて、それでは5百円を投入。最初から5百円入れて挨拶とおみくじをセットにしておけば良かったと思わなくもないけど、別々にしたほうが良い気もする。


 二礼二拍手一礼。


 神様再びこんにちは。おみくじいただきます。


 一言告げて、私は群れの中から右手前にいる鳩さんをちょんと摘まんだ。

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