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私たちは青春に飢えている ~茅ヶ崎ハッピーデイズ!~  作者: おじぃ
高校3年3月 最後の潮風登校
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茅ヶ崎の潜在的需要

「そういえば陸とここに来るのは初めてだね」


「だな。知ってるか? ここのオニオンフライ超うまいんだぜ」


「オフコース、アイノウマイマイアイノウ」


「私知ってる私の私の私知ってる? なに言ってんだ」


「バラエティー番組の英会話で覚えた。私、頭悪そうに見えるかもだけど、外国人に道案内しちゃうグローバルフルーティーガールだからね」


「Oh,global fruity girl.Its so crazy」


「クレイジーだけど法は守るぞい! リーガルフルーティーガールでもあるからね」


 エンターテインメントフェスティバルの準備とか、大学進学の準備みたいな近況報告は普段の通話でしているから、ただ雑談。このしょうもない会話に笑があふれてくる。


「そういや、町興しのほうはどうなってるんだ? 演劇とか音楽はやってるけど、なんつーか、その、茅ヶ崎の知名度を上げるためのいろいろ」


「茅ヶ崎は、関東ではそこそこ知名度があると思うんだよ。でも、江ノ島とか鎌倉には及ばない」


「湘南っていえば、他所の人ならだいたいあの辺を思い浮かべるだろうからな」


「そうそう、他所の人がつくった湘南を舞台にしたお話はだいたいあの辺が出る。それで、SNSで湘南をエゴサしてみたら、興味深い投稿が散見されましてな。その人たちは、江ノ島とか鎌倉の写真をアップして、『穏やか』とか『時がゆっくり流れてる』とか言ってるんですよ陸くん」


「まあ、わからんでもないが」


「うん、私もわからんでもない。だがしかし、茅ヶ崎に慣れている私にとって江ノ島とか鎌倉はむしろアクティブなアトラクションタウンで、人がわんさかいて、わっふー! ひゃっほーい! っていう感じで、心を落ち着かせに行くのとはむしろ逆で、気分をアゲるために遊びに行くのさ」


「それもそうだな。茅ヶ崎のほうがのんびり感はある」


「そこですよ陸くん。私はね、茅ヶ崎の知名度を上げたいとは思ってるけど、江ノ島とか鎌倉ほどメジャーになる必要はない。例えば高砂たかすな通りなんかはパリピじゃなくて、どちらかといえばつぐピヨとか自由電子くんみたいな感じの人にこそ需要がある気がするんだ。美術館とか、かの有名な映画監督の定宿じょうやどとか、施設じゃなくても高砂とか南湖なんご辺りの雰囲気自体は、実は文化系の人にフィットするものがそこかしこにある街なんだと思う」


「だがその潜在的需要を掘り起こせていなくて、つぐみとか自由電子みたいな人たちも江ノ島で引き返して茅ヶ崎には足を運んでいないのが現状って言いたいんだな?」


「イエスザッツライト。茅ヶ崎を知らない人たちとか、テレビによく出るインスタ映え系の雰囲気だけじゃなくて、新緑さらめく気品のある街だっていうのを、今後の活動でアピールしたいな」


「沙希……」


「ん? どした? そんな真っ直ぐ見つめて。キスしたい?」


「勉強、頑張ったんだな」


「はい?」


「沙希の口から『潜在的需要』なんて言葉が出るとはな。ほんと、よく頑張った」


「そんくらい勉強頑張る前から知ってるっつうの」

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